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第13話:暗殺者? の襲撃! 引っ越して1週間も経ってないのに家が大変なことになっちゃった。

 ギルド内にある食堂。その中にある1つのテーブル席を皆で円形に囲っている。

 その中心のテーブルで、冒険者2人が腕相撲をしていた。


「がんばれ~、がんばれ~。ディックさんがんばれ~」

 

 私は片方の冒険者さんにエールをしてたんだけど……。その応援してたディックさんが簡単に負けちゃった。


「お前な。サクヤちゃんの応援で何デレ~っとして力抜いてんだ! スキルの検証にならね~だろ~が!」

「わざとじゃね~よ。何かこう……デレッっちゃうんだよ!」

「じゃ~今度は俺を応援してくれ。本気でいくからな!」


 2人がまた腕相撲の体勢を取って。


「ゲランさんがんばれ~」

「うお!」


 応援した瞬間、ゲランさんが簡単に負けて……。


「お前もデレ~とした顔になってるじゃね~か!」

「まぁ……これはあれだ。弱体化効果だ!」

「あなた達のは単にサクヤちゃんの声でデレってるだけでしょ!」


 セシールさんが2人の頭を叩き、周りから笑いが起こった。

 

 この結果からも分かるとおり、エールは発動しなかった。

 検証した結果は、発動条件は、仲間が窮地におちいったとき、らしい。

 効果は、瞬間完全治癒。体力、魔力回復。身体能力、魔力、魔法威力アップ。

 副作用もあって、強力なスキル使用後のクールタイムとして、しばらく声が出なくなる。声が出なくなる時間は今のところ不明。時間は効果対象の人数によって変わってくるんじゃないか、っていうのが、みんなの見解だった。


 補足として、普段、危機でも窮地でもないときに、私が応援すると男の人達はデレって弱体化してしまうらしい。

 ……これってスキルのエール関係ないよね!


              ☆☆☆


 サクヤ達が、お馬鹿な検証を行っている頃。ギルド支部長室、その中にある応接テーブルに向かい合って座る2人の男が居た。

 ラグルとレオドナドだ。

 

「で、どうだった? 実際にあの子のスキルを体験して」

「あの時はそれに助けられたが、危険だな」


 ラグルは考え込むように腕組みをして、柔らかいソファーに腰を埋めた。


「危険とは?」

「分かってるんだろう? サクヤちゃんが魔王と自覚して、魔物たちを使って人類に牙を剥いたとしてだ。そこにあのスキルを使ったら……」

「人類に勝ち目はないな」

「ああ……。効果は説明した通りだ。それにあの狼も、たまたまかもだが、進化して能力が飛躍的に向上した。そんなのが大群で攻めて来てみろ。いま攻め込んできている自称魔王なんて可愛いもんだぞ」


 今日まで、魔王軍との戦力が均衡して侵攻を防げているのは、魔族にしろ魔物にしろ、『倒せているから』だ。だが、そこにエールというスキルが加わったら?


「現状、あのスキルは発動条件がサクヤちゃんの純粋な心が鍵になっていると思うが……まるで魔王と勇者を混ぜ合わせたような子だな」

「だからこそだ。このまま勇者として、見守っていくしかないだろ。魔王とバレたときは、そのときはそのときだ。サクヤちゃんの心に賭けるしかないな」

「そのときはラグル、お前が頑張れ。なんたって勇者のパパ・少女キラーラグルだからな!」

「ちょ! おま! 生暖かく微笑んだまま出ていくな! おい!」


 そんなやり取りが行われていたことを、サクヤは知る由もなかった。


               ☆☆☆


 洞窟探索から何日か経ったある日の朝、私は自宅で何することもなく休んでた。

 べつに好きで休んでるんじゃなくて、すべての冒険者クエストが停止してるから。

 停止した理由は、洞窟から溢れ出てくるゴブリンの対処で、Dランク以上の冒険者さん全員が、ゴブリンの討伐をしているからなの。


 それにしても、何もしないというのも暇だな。

 部屋を見回しながらそんなことを思った。


 この豪邸は本当に広くて、1階にキッチン、お風呂、トイレ、それと小部屋が何室かあった。

 生活するには1階だけで十分。

 2階はパーティホール? みたいな巨大な部屋が大半をしめてて、隣には巨大なキッチンがある。そのパーティーホールは今、モフモフさん達の遊び場と睡眠場所になっている。

 3階はまだあまり行ったことなかったけど、会議室みたいなとこがあった。長細いテーブルにそれを囲むように椅子が並べられてる。

 20人は座れるかな? ここで領主さんたちが集まっていろいろお話してたんだろな。


 そんな豪邸の、まだ行ったことない部屋を探検してこようかな? って、1階にある自分の部屋にしてる小部屋のドアを開けて廊下に出たとき、庭からモフモフさん達が吠えてるのが聞こえた。

 子供達が遊びに来ても吠えたりしないのに、どうしたんだろ? と思いながら外に出ると、それはそこに居た。


 赤く鈍く光る体。皮膚は金属みたいなので出来ているみたいで、鎧のような形になっている。顔はフルフェイスの兜みたいになっていて、その鋭い眼光が隙間から光っていた。

 その体から、黒い靄みたいな魔力が溢れ出てきている。

 私でも、見てすぐに分かった。魔族だ……て。


 10メートル先、腕組みしているその魔族の周りに、モフモフさん達が倒れていた。


「モフモフさん!」


 正面に倒れているモフモフさんへ慌てて駆け寄る。

 よかった、生きてるみたい……。


「クックック。うるさかったのでね。眠ってもらっただけですよ」

「よかった。殺されちゃったかと思っちゃった……」

「クックック。さて、本題に入りましょう」


 魔族はそう言うと、組んでいた腕をばっと上に伸ばした後、右手で私を指さした。


「クックック。私はあなたを殺すため、あるお方に作られし暗殺者! やみ……」

「バレてるのに暗殺者なの?」

「……」

「……ごめんなさい」

「……クックック。私はあなたを殺すため、あるお方に作られし暗殺者! 闇夜に紛れ……」

「今、朝……」

「……。クックック。私はあなたを殺すため――」


 あ、これ無限ループだ。あれかな? ヒーローの変身シーンは絶対に攻撃しちゃいけないっていうルール。


「闇夜に紛れ、正々堂々、正面から一撃必殺の元に相手を屠る!」


 いろいろ変だよ。ってツッコミたいです。


「……クックック。あなたが何回も遮るから後のセリフを忘れてしまったではないですか。徹夜で考えたのに……」

「……ごめんなさい」


 謝らないといけないのかな~? 


「クックック。いきますよ」


 魔族が掌を向けてくると、何かが光った。

 その瞬間、スローモーションが発動した。光がゆっくり向かってくる。

 咄嗟に右に跳んでそれを避けると、後ろの玄関のドアが吹き飛んだ。

 

 避けなかったら死んでた……。言動はおかしいけど、この魔族は危険だ!


「ほう……。避けましたか。さすがですね。これならどうです?」


 周囲にいくつもの光が発生して、一斉に向かってくる。


「うわ!」


 ドォォォン! と、響き渡る轟音。


 私は右に避けようとしてその場でこけちゃって、そしてその頭の先、1メートル離れた地面に上から降って来た大きい岩が突き刺さった。そしてもちろん、いくつもの光は豪邸に着弾して、向かって左側を半壊させてた。


「クックック。面白いですね! その方向に向かって跳ぶとおもい、上から魔柱石を落としたのですが、あなたはそれをさらに先読みして、その場に伏せましたか!」


 ……偶然です。でもこれ……この魔族の強さは本物だ。私死んじゃうかも……。


「む! クックック。援軍を呼びましたか」

 

 魔族が丘の先を眺めながら言った。私は見えなかったけど、ラグルさん達が来たんだ! って思った。


「クックック。援軍を呼ばれたうえ、暗殺対象に姿を見られたからには、今回は失敗ですね」


 最初から姿隠す気なかったよね? って言いたかったけどやめておいた。また無限ループになりそうだし。


「この場は引くことにしましょう」


 そう言うと、魔族の背中からコウモリのような翼が出てきて、大きく広げた。

 飛ぶんだ! と思って空を見上げる。


 ……。いつまで経っても、そこに魔族の姿は現れなかった。


「クックック。では、また会いましょう」


 声がして、空を見上げてた視線を戻すと、魔族はその場で空間に亀裂を作って、その中に消えていった。

 

「翼は! その翼はなんの意味があったの!」


 思わず叫んでた。

 それよりも、援軍! ラグルさんかな! 討伐で北の森にいってるはずだけど、私のピンチを察して駆けつけてくれたんだ!

 期待を胸にときめかせて、しばらく待つと、援軍が到着した。


「おねえちゃ~ん。あそぼ~」

「モフモフさ~ん。今日は僕も背中に乗せて~」


 現れたのは、仲良くなった子供たち……。

 うわ~。頼もしすぎる援軍だ~~~! 

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