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第12話:応援という力、そして……少女キラー爆誕?

 朝、洗面所でコップに水を入れて、1枚の葉を口の中に入れて5回くらい噛む。

 するとミントのような香りが広がって、後は水ですすいで出す。

 歯磨きなんてこの世界には存在してなくて、このハーブのような薬草で全てが出来ちゃう。

 息も1日爽やかで、虫歯もできない優れもの。


 全ての準備を終えて、玄関から飛び出していく。


「モフモフさん達~、お留守番よろしくね!」

「ガオウ!」


 戦闘訓練をしてた(じゃれ合ってただけ)モフモフさん達に声をかけてから、ギルドに向かう。

 今日からEランクのクエストで、ラグルさん達とパーティーを組んで行くことになってる。

 今回のクエストは、Eランクの洞窟探索というもので、パーティーを組んでの戦闘を覚えるっていう簡単なクエストのはずだった。

 メンバーは、戦士ラグルさん、神官セシールさん、魔導師ティアナさん、そして私の4人。

 前衛にラグルさん、後衛にティアナさん、ヒーラー兼サポートにセシールさん。

 そして私は見学。はっきり言って、私が何かしようとしても邪魔になるだけだし。



 

 ギュレールの街から2時間ほど歩くと、北にある森に着く。

 私がこの前、ゴブリンに遭遇してしまった森だ。目的地の洞窟は、さらにそこから森の中に入っていった先の山の麓にある。


 森の中は、ゴブリンの棲家みたいになってた。

 木の陰、草むら、木の上の枝から、次々に襲ってきた。

 そのほとんどをラグルさんが倒している。森の中で魔法を使ったら山火事になっちゃうかららしい。

 ラグルさん1人でも余裕そうだけどね。



 ゴブリン達の襲撃を突破して洞窟に辿り着いた。

 入り口は結構大きくて、高さが4メートルはありそう。

 

「洞窟に辿り着くまでにかなりの数のゴブリンを倒したな」

「ええ。数が増えて凶暴化してるって本当なのね」

「そうね~。この先の洞窟には~、気を引き締めて行かないとね~」


 凛とした声と間延びした声。凛とした声がセシールさんで、間延びした声がティアナさん。

 私のイメージだと、攻撃担当のティアナさんのほうが凛とした声だと思ってたんだけど、それは間違いだった。


 ティアナさんの言う通り、洞窟からは私でも分かるほど、禍々しい気配が滲み出てきていた。




 火の点いた松明が明るく周囲を照らしている。

 その明かりを目標にして、ゴブリン達が通路の角から飛び出してくる。


「来たぞ! 5匹だ!」


 ロングソードから短剣に持ち替えたラグルさんが、即座に盾を構えて迎撃体勢に入る。

 洞窟内では、ラグルさんは積極的に攻撃はしない。短剣と盾でゴブリン達の攻撃を洗練された身のこなしで受け流していた。

 しかも、後衛の私達にゴブリン達の意識が行かないように、巧みに立ち位置を変えながら。


「ラグル~。お~け~よ~」


 ティアナさんの緊張高まる……まるでない声を聞いて、ラグルさんは1番手前のゴブリンを盾で吹き飛ばし、後ろのゴブリンを巻き込んで転倒させる。

 直後に、ラグルさんはバックステップでティアナさんの後ろへと下がってきた。


「バーニング・バースト」


 ティアナさんが魔法を唱えると、密集したゴブリン達の足元が爆発して、火柱がしばらく燃え上がった。

 炎が収まった後に残ってるのは、炭と化したゴブリン達。

 これが、パーティーでの戦闘。前衛、後衛の役割分担がしっかりと出来ている。


「さすが、Aランクの肉壁。安定感あるわね」

「おい、セシール! 可愛い声でなんてこと言うんだ!」

「肉壁ってなんですか?」

「ほらみろ! サクヤちゃんが覚えなくていい単語を覚えちまったじゃないか! 聖なる壁って言えよ!」

「あなたたち~、ちょっと緊張感が~、ないわよ~」

「「それは、あんた(あなた)のしゃべり方だろ(よ)!」」


 これがパーティー。ボケとツッコミの役割分担が……じゃなくて! 賑やかでいいな。





 所々でそんなコント――じゃなくて、ゴブリン達と戦いながら、洞窟の最深部に到着した。

 通路の先は、空洞みたいになっているみたいだった。

 その空洞の入り口前で、ラグルさんが左腕を水平に出して、止まれと合図する。

 静かに覗き込んでみると、通路の先は3メートルくらい下にきりこんだ窪地で、直径30メートルくらいの吹き抜けのホールみたいになっていた。

 そのホールの中心に、高さが4メートルくらいある丸い柱のような物が見えた。赤く鈍い光を放っている。

 その柱の横には、高さ3メートルくらいの人影? が見えた。


「オーガ……だな」


 大鬼族……。知識では知ってるけど、見るのは始めてだ。当たり前だけど。

 赤い皮膚。頭に2本の角。鋭く光る金色の目。体は筋肉で膨れ上がってる。

 

 ラグルさんの頬に汗が伝って地面に落ちた。その瞬間、こっちを向いたオーガの姿が一瞬で消えちゃった。


「全力後退! 洞窟を出るまで止まるな!」


 ラグルさんが叫ぶと同時に、ドーン! と、地響きを鳴らしながら、オーガがホール入り口に着地した。

 ここまで一跳びで来たみたい。


「シャインフラッシュ!」


 セシールさんの魔法が、オーガの目の前で鋭い光の閃光を発生させた。

 オーガが両目を手で覆い、もがいている。

 オーガの視界を奪って行動を不能にする魔法だった。



 森を抜けて草原に出た。

 足の遅い私は、ラグルさんに抱きかかえられている。


「ハァ……ハァ……逃げ切れたか?」


 肩で息をしていたラグルさんが、私を降ろしたあと、力尽きたようにその場に座り込んだ。


「ハァ! ハァ! どうだろ……? それにしてもオーガなんて私達だけじゃダメね。あれの討伐なんてCランククエストよ」

「さすがのラグルも~、体力残ってないしね~。私も魔力切れ~」


 みんなも座り込んじゃった。

 私は、うん……腰が抜けて立てない。


「とにかく、ギルドに応援要請を」


 そこまで言ったとき、森の木々が何本か音をたてて倒されて、そこから3メートルの巨体が跳んで来た。


 セシールさんとティアナさんは素早く飛び退いたけど、私は腰が抜けてて……。


「チイッ!」


 ドン! と、ラグルさんに抱きかかえられて、地面を一緒に転がった。

 オーガは、私が座り込んでいたところに、着地と同時に大鉈のような剣を振り下ろした。

 轟音がして吹き飛ぶ大地。大鉈が深く突き刺さっていた。




 オーガの攻撃を盾で受け止めるラグルさん。でも大鉈はそんなの関係ないとばかりに振り抜かれて、盾は砕け散ってラグルさんは地面を転がって動かなくなった。

 ラグルさんはすでに切り傷だらけで全身が血で染まっていた。そこにこの攻撃を受けてしまった。

 セシールさんの強化系魔法を受けていても、オーガの能力がそれを上回って……。

 

 セシールさんもティアナさんも魔力が切れて動けなくなっていた。


「サクヤちゃん……逃げ……るんだ」


 ラグルさんが剣を支えにして起き上がろうとしながら言ってくるけど……。体が震えて動かないよ……。

 オーガが私を見る。

 大鉈を真上に上げて、振り下ろす――。




 こんなとき、遅れて登場するのがヒーローだよね。


「ウオォォォン!」


 モフモフさんが黒い一筋の光となって現れて、振り下ろされた大鉈を横から体当たりして軌道を逸らしてくれた。


 私の2メートル横に刺さった大鉈をオーガが引き抜いて、モフモフさんを見てニヤ~と笑った。


「グルルルルル!」


 牙を剥き出しにして、全身の毛を逆立ててる。ゴブリンのときには見せなかった姿。

 それだけこのオーガは強いってことなんだ……。

 

「ウオォン!」


 モフモフさんが大地を蹴って、黒い光になってオーガに全力の突撃をした。

 でも、私には信じられないことが起こった。


「キャイン!」


 モフモフさんの悲鳴……。

 モフモフさんのあの強い攻撃が、オーガの左腕の横薙ぎ一撃で吹き飛ばされちゃった。


 モフモフさんが何とか立ち上がろうとしてるけど、脚に力が入らないみたいで崩れおちちゃう。

 オーガがモフモフさんに近づいていく……。


 私は何も出来ないの? そんなことない! だってこのままだと、みんなが!

 探して! 私に出来ること……出来ること……。


 ――私の固有スキル、ファミリーと……エール! エールって応援ってことだよね!

 

 確信はなかった。エールっていうスキルがどういう効果のものかも分からなかったし……。

 でも、私は叫んだ!


「がん……ばって……。頑張って! モフモフさん! 負けないで! みんな負けないで! 頑張って! 頑張って――!」


 ずっとずっと叫んだ。

 応援することしかできない悔しさで涙が溢れてくる。


 涙が右手に落ちたとき、私の体が光輝いて草原を照らした。




 モフモフさんが光に包まれて起き上がった。黒かった毛は銀色に輝いている。

 ラグルさんが光に包まれて立ち上がる。傷が完全に回復していた。

 セシールさんとティアナさんも光に包まれている。

 そしてオーガは、光に触れて苦しんでいた。


「すごい……魔力が全回復してるわ」

「それだけじゃないわ~。魔力上限が引き上げられて~、魔法の威力がアップしてる~?」

「うむ。傷も体力も回復して、ステータスが2倍ほど増加してる?」

「モフモフさん! いけるか?」

「ウオン!」



 ここから皆すごかった。


「リストリクション・チェイン!」


 セシールさんが、束縛の鎖でオーガの動きを封じて、ティアナさんが炎の魔法でオーガを焼いて、モフモフさんが銀色に輝く光となって駆け抜いて、オーガの右腕を消し去って。


「これで終わりだ!」


 ラグルさんの横薙ぎの一閃で、胴を切断されて血飛沫をあげながら崩れ去る。


「勝った……」

「すごい! すごい! 今の何? 力が溢れてきた!」

「サクヤちゃんの~、応援ね~。ワンちゃんも助けにきてくれて~、ありがとね~」


 私は、ワンちゃんじゃないよ。モフモフさんだよ。って言いたかったんだけど。


「…………」


 声が出ない! どうしちゃったんだろ~?




 街へと帰る途中で、私の声が出なくなったことを皆で検証していた。

 皆の見解では、スキルの副作用? みたいなものだって言ってる。

 強力なスキルの後のクールタイムみたいなものらしいけど。


「あのスキルは強力すぎるからな。ダメージ、体力、魔力全回復。それに能力アップなんてな」

「…………」

「まだ声が出ないみたいね」

「30分は経つけど、それだけ強いスキルってことなんでしょうね」

「…………」


 私もお話したい~! 会話に混じりたいよ~! て、いろんな言葉を口だけ動かして、声出ないかな~て、してたんだけど、それはある言葉を思い浮かべて口に出したところだった。


「ラグルさん大好き!」


 あ、声出た。……てちが~~~う! どうしてこのタイミングで声出ちゃうの~~~!


 みんな動きを止めて固まっちゃってる。


「違うの! 違うの! ラグルさんはお父さんみたいだから大好きって……何言ってるの私~~~!」




 後日、ラグルさんの二つ名に、少女キラーというものが加わったとかなんとか。

 私のせいじゃないよ?

サブタイトルは仮です。あとで修正したほうがいいかな~?

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