第111話:戦力差が大きすぎると、模擬戦にならないことが分かったよ!
「で、どうしましょう? オークとウルフの部隊だけで包囲は出来てるようですが。クックック」
本当なら、魔法で一網打尽だったんだけど、肝心な魔導師隊が全員乗り物酔い。
私とイザベラちゃんも、モフモフさんの引く荷車に初めて乗ったとき、猛烈に酔ったことを忘れてたよ。
「リリー! 戦況は~?」
「えっとね~。前衛の1部がまだ突破しようとしてるけど~、概ね停滞?」
「睨みあってる状態かな?」
相変わらずリリーの報告だけじゃ分かんないけど、そんな感じかな。
両翼のウルフさん達に突っ込ませてもいいけど、問題は剥き出しの爪と牙だよね。
疾風で掠っただけでも大怪我……最悪死人がでちゃうよね。
「直接状況を見たいから、私も空から見てみるね」
マントを翼に変化させて、2回羽ばたくと体が宙にふわりと浮いた。
「サクヤ様。念のためリンクしていってください」
「そうだね。魔力が多いほうが飛びやすいし」
クックさんとリンクして、魔力が増えたことで飛行コントロールが簡単になった。
「あ、サクヤ様。1つ愚言していいですか?」
「うん? 何?」
「空を飛ぶときはミニスカートにしませんか? クックック……」
「本当に愚か者の言葉だね!? 絶対にスカートなんて穿かないよ!」
しょぼんとなったクックさんは放っておいて、リリーの隣に並んだ。
この位置は中央のオークさん達の少し後方で、空からだと下の状況がよく見えた。
囲まれた混乱から少し落ち着いて、陣形がしっかりしてきてる。
もうちょっと後方まで見たいな……。
てことで、リリーの前方に進んで。
「あ、サクヤっち。そこだと不可視の結界の外に出ちゃうよ」
「え! やば! 矢が飛んで来ちゃうかも!」
弓兵も居るよね? こんな視界が開けた空だといい的になっちゃう!
慌てて下を見てみると、オークさん達との小競り合いをやってて上を見る余裕がないみたいで、私に気付いた人は居ない……。
「おい! 上を見ろ!」
はい。バレテますよね~。白い翼って凄く目立つしね。
気付いた人が私を指差すと、周りの人達が一斉に上を向いた。
とりあえず、攻撃されてもいいようにバリアを展開しておこうかな。
クックさんとリンクしているから、光の防壁が使えるしね。
右手を下に向けて、矢の射線を防げるように光の防壁の角度を調整して、防壁展開!
「もう時間切れなのか!?」
「あれは広範囲殲滅魔法だ!」
ち……違うよ? 攻撃じゃなくてバリアだよ?
「お……お終いだ。他所の土地で死ぬことになるとはな……」
オークさんの壁を突破しようと振り上げてた右腕をダラリと力なく下げちゃった。
「お前には帰りを待ってる奥さんと娘さんが居るだろ! ここは俺が身体を張ってでもお前を逃がしてやる!」
「何言ってる! お前も恋人が居るだろ! みんなで生きて帰るんだ!」
私って思いっきり悪者扱いじゃない? て、あれ? これ模擬戦だよね?
「とにかく逃げろ! 退却だ!」
「囲まれてるんだぞ! どこに逃げるってんだ!」
皆が逃げようとして、さっきまで囲まれつつも整っていた陣形が総崩れしちゃった。
押したり引っ張ったりの大混乱。
それを眺めてると、不可視を解除したリリーが隣に並んだ。
そのリリーを見た兵士さんがますますパニックになった。
禍々しい魔族とか破滅の使い手とか言われてるけど、リリーの力も1だし、攻撃魔法も使えないんだけど……。
ああ、そっか。こうもりのような翼を広げたリリーは、確かに見た目は怖いかも。
「サクヤっち、相手の数はあまり減ってないけど、作戦の第2段階いっちゃおう」
「そうだね」
笛を鳴らすと、後方で包囲していたウルフさん達が少し左右に広がった。
それを確認してから、リリーが叫ぶ。
「みんな! 後方が手薄になってるよ! 短気でお子ちゃまなサクヤっちに攻撃されたくないならそこから逃げて!」
お子ちゃまじゃないもん!
それは置いといて……。隊列なんて関係なく、みんなが一斉にそこを目指して逃げ出していく。
その先の左側には森が広がってて、集団の中央がその森に差し掛かったと同時に笛を吹いた。
「やっと出番が来たぜ!」
森に隠れてたロイさんの人族の戦士さん20人が、敵の集団の側面に奇襲攻撃を仕掛ける。
早く逃げたい一心の相手は、数で勝ってるけど大混乱になった。
うん……なんか相手が可哀相になってきたよ。
剣と剣がぶつかり合い、盾が剣を弾く。
身体に攻撃を受けた人はその場で両手を上げて、倒されたことを知らせる。
ロイさん達は一箇所に戦力集中。対して相手は早く逃げたいためか、広がりすぎて次々に倒されていった。
そんな中、相手の部隊も弱いわけじゃなくて、ロイさん達の部隊も半分まで人数を減らされちゃった。
これ! これ! これだよ! なんかね……やっと模擬戦らしくなってきた!




