第110話:作戦崩壊?
空に小さい爆発魔法が炸裂して、それが合図となって模擬戦が始まった。
私達は前に出ないで、相手を待ち受ける戦法なんだけど。
はっきり言って、人だと50人が横一列に並んでもそんなに威圧感はないけど、2メートルを超えるオークさん達が同じように並んだら、壁でしかないよね。オークガーディアンさん達は全員が全身を隠すことが出来る大盾を持ってるし。
そんな壁に向かって向こうはどう動いてくるかな?
「最初は歩兵さんで突っ込んできて、騎馬兵さんが側面を突破してくるかな?」
「まあ、数ではあちらが上回ってますし、こちらはほぼ横一列の陣形ですからね。普通の軍隊同士ならばそうするでしょうね」
まずは、中央がぶつかり合うでしょ~、で、側面を騎馬隊が突破しようとしてくるのを、こっちはウォーウルフさんとその背に乗った魔導師さん達の機動部隊で掻き乱して~、中央は押し込まれたと見せかけて少しずつ後退、逆に両翼の機動部隊さん達は騎馬隊を押し返しつつ前進。
で、気がつけばこっちはV字陣形になってて、相手は包囲されてるって作戦なんだけど。
「そういえば、訓練を開始した辺りから、敵の偵察兵がうろちょろしてましたね。放っておきましたがね。クックック」
「え? クックックって笑い事じゃないよ! こっちの作戦がバレてるじゃない!」
「影響はないでしょう」
呑気なことを言って、クックさんは空を見上げた。
その上空には、リリーが翼を広げて滞空してた。
リリーの役目は上空からの情報収集と報告。
モフモフさんは今回は伝令係。
クックさん、モフモフさん、リリーの3人は戦闘には不参加。
冒険者登録してるから戦争に参加は禁止されてるっていうのもあるけど、この3人が加わっちゃうと一瞬で勝負がついちゃうしね。
「サクヤっち~! 敵の先頭が見えたよ~」
「あれ? もう来たの?」
予想より来るのが早かった。
てことは、騎馬隊が最初に突っ込んできたのかな? 予定が狂ったけど、両翼のウォーウルフさん達に対応してもらおうかな?
「クックック。リリー、報告はもっと正確にしなさいな」
「正確にって言われても、騎馬と歩兵の全員が一緒に突っ込んで来てるんだよ」
「全軍突撃って……」
思ってたのと違う。
「クックック。リリー、あなた向こう陣営に偵察に行ってましたよね? 向こうの動きを察知できなかったのですか?」
「偵察じゃないよ~。早めに勝負つけないと、じっとしてるのに飽きたサクヤっちが暴れちゃうよって、伝えに行っただけ~」
「ちょっと~! 飽きて暴れたりなんかしないよ! それに私ってそんなに怖くないよね?」
「……クックック。オーク達を指先だけで瀕死に追い込み、魔導師達の魔法でも傷1つ付かなかった壁を消滅させたサクヤ様……。人間達にとっては恐怖でしかないでしょう」
あれ? 私って恐怖の魔王だったっけ?
「まあ、偵察兵をわざと見逃したのも、サクヤ様の力を相手側に周知させるためだったのですがね、リリーの行動で効果は倍増ですね。クックック」
「……説教は後にして、とりあえず指示を出しちゃおうかな」
前方を見ると、オークさん達の正面に土煙が上がって、ガァァァンって、鉄と鉄がぶつかり合う音が聞こえてきてた。
相手は短期決戦で中央突破をしようとしてるみたい。
オークさん達はびくともしてないけど。
ポケットから笛を取り出して、笛を吹いてウルフさん達に乗った機動魔導師隊に前進の指示を出した。
相手は後方で詰まった部隊が横に広がっちゃってるけど、ウルフさん達の機動性なら難なく突破して包囲してくれるはず。
そして全方位から模擬戦用の煙魔法攻撃、包囲殲滅。
……勝ったね。
数分後、伝令のモフモフさんが疾風で駆け込んできた。
「もう終わったの?」
『いえ……それがですね、突破に成功して、指定の魔法攻撃位置に着いたのですが……』
「ですがって、何かあったの?」
まさか、中央突破は囮で、主力は左右から来てたとか!?
だとしたら、無防備になった魔導師さん達が全滅して、逆にこっちが包囲されちゃう!
『突破する際の激しい動きに耐え切れず、魔導師隊の全員が乗り物酔いになり、ダウンしました!』
「えぇぇ!?」
いろいろね……全てにおいて、思ってたのと違う……。




