第109話:3本の矢で団結!
お待たせしました><
模擬戦の開始当日の朝、私はみんなの前で演説をすることになっちゃった。
士気を高める為ってクックさんは言ってたけど、すでにオークさん達はブフーブフーと鼻息を荒くして、ウルフさん達はウゥゥ~って唸りながら牙を剥き出しにしてる。
うん……。戦いが近いことを感じ取った野生の戦士……士気最高潮って感じだね。
演説必要かな?
「注目~。ここに1本の矢がありま~す」
この演説のために用意した1本の矢を皆に見せる。
中学生のときに歴史の授業で習った3本の矢の話を皆に聞かせてあげよう!
「この矢が1人の力だとするとね。こんな矢なんか簡単に……この! えい!」
はい! 私の力だと簡単に折れません!
ていうかさ~、矢って意外と硬いね……。
てことで、その辺に落ちてた細い枝を拾った。
これなら女の子の力でも折れるよね!
「こんな枝なんかね、簡単に……この! えい!」
僅かに曲がっただけで折れません!
地面に枝を突き立てて、上から下に全体重をかけるように!
意地でも折ってやるんだから!
ぐにぃぃ~……。
「はい。ということでね、私は解説。クックさんが実演します」
「「「今までのは……?」」」
疑問の視線が集まってる! だって仕方ないじゃん。枝が折れてくれないんだもん!
「クックック。矢を折ればいいのですね?」
「うん。そうそう。で、1本の矢だと簡単に折れるよね」
「もちろんですね」
パキっといい音がして、クックさんが私の言葉通り、右手に掴んだ矢を親指を押し込むだけで簡単に折った。
ここまで力の差を見せ付けなくてもいいんだけど……ま、いいか。
「でね。2本の矢でもちょっと力を込めると」
バキ! メキョ!
2本の矢を握り締めて砕け散った。
これ……流れ的にヤバイよ。
「でもね。1本2本だと簡単に折れちゃう矢でも、3本が1つになったら、簡単に折れなくなる……」
バキョ!
「折っちゃダメなのぉぉぉ!」
広げた手の指と指の間に同時に挟んで閉じただけで砕け散ったよ。
最初にこの話を説明しておくんだった!
「クックック。そうだったのですね。すみません。ですが、サクヤ様が言いたかったことは皆に伝わりましたよ」
「え?」
今ので? あ、もしかして、この世界にも同じ話があるのかも。
バラバラだと弱いけど、皆1つになって結束したら凄く強くなるっていう話が。
「クックック! そうですよね、皆さん!」
「「「おおお! みんなの力を合わせて、細い枝も折れないサクヤ様を守るぞぉぉぉ!」」」
違う! 違わないけど微妙に違うよ!
みんなの想いが1つになったけど、違うんだな~。
「お姉様! 見てくださいまし! オークさん達の体が光り輝いてますわよ!」
新しく仲間になった普通のオークさん達の体が光ってる!
これって、もしかしてファミリーが発動した?
「「「守る力を! 漲ってきたぁぁぁ!」」」
光が収まってそこに姿を現したのは、全身を重厚な鎧で身を包み、全身を覆い隠すことが出来る大盾を手にしたオークさん50人。
オークガーディアン:オークナイトの守備特化型。
騎馬兵の突撃も簡単に防ぎ、ドラゴンの突進も皆で力を合わせ、根性とやせ我慢で防ぎきる!
サクヤ様を守るためなら120%の力を発揮する。
他の奴等? そんなの知らん。自分の身は自分で守りな!
・・・。はい! おかしい! 最後の説明は絶対おかしいよ! お願いだから他の人も守ってあげて!
そしてね、やせ我慢はよくないよ!
オークさん達が予想外な進化をして、戦力は十分になった。
丘の多い所を避けて、平地に布陣する。
今回の作戦は起伏の多いところだとやり辛いんだよね。
配置した陣形は、最後方に私達の本陣。最前線にはオークさん軍団が横1列。少しだけ後方の両翼にウルフさん達に乗った機動魔導師部隊。
これで準備は整ったね。
「クックック。そいえば、数日前から相手の偵察兵が何人かウロチョロしてましたね」
「え? だったらこっちの作戦は筒抜けじゃないの?」
「問題ないでしょう。こちらは都市の1つや2つ、軽く一晩で滅ぼせる戦力なんですからね。クックック」
「……」
え? いつの間にそんな凄い軍勢になってたの? 全然そんな感じしなかったんだけど。
「魔物と人族との戦闘力の違いは大きいのですよ。特にこちらはサクヤ様が進化させたオーク達が主力ですからね」
「私は何もしてないし! 勝手に勘違いして進化しちゃっただけでしょ!」
「クックック。まあ、団結した副産物みたいなものですよ。さてと……布の厚さはこれくらいですかね」
クックさんが自分の剣に布を何重にも巻きつけて、それを確認するかのように何回か剣を振った。
模擬戦で刃が剥き出しの剣を使ったら、当てられた人が死んじゃうからね。
オークさん達も持ってる斧に布を巻きつけて、近くにあった岩で布の厚さを試して……。
バコォォォン!
2メートルはあるオークさんと同じくらいの大きさの岩が砕け散ったよ。
「模擬戦っていうのはやったことが無いから良く分からんが、全身の骨が砕けても死ぬことはないだろう」
「「「これくらいでちょうどいいな!」」」
ちょっと待ってぇぇぇ! 全然よくないよぉぉぉぉ!
……てことで、全員、布を巻きつけた木の棒に持ち替えて、模擬戦開始です。




