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第108話:新しい魔法はちゃんと試してから使おうね!

「いち、に! いち、に!」


 掛け声に合わせて、ザ! ザ! と、一糸の乱れなくオークさん達が綺麗に足並みを揃えて行進してる。

 訓練前は、私の言うことなんてまったく聞かなかったのに、どういうことだろ?


「ぜんた~い、止まれ!」


 みんなが私の前に1つの乱れなく止まった。

 

「みんな、お疲れ様~」

「「「は!」」」


 ビシッと、右手を胸の前で握り締めて敬礼してきた。


「えっと……みんなどうしちゃったの?」

「クックック。あれだけ力の差を見せ付けたのです。服従しないほうがおかしいでしょ」

「え~。あれってクックさんが怒れっていうから演技でしたんだよ?」

「ピギ!? 演技で我々は死にかけたのですか……」


 恐怖の目で見られちゃってるよ。

 指示はしやすくなったけど、恐怖で言い聞かせたいんじゃないんだよ~。

 もっと、こう……笑顔で分かり合える、みたいな?

 誤解を解く作戦も考えなくちゃ……。




 さてさて、今は目の前の問題を解決しないとだね。

 オークさんとウルフさんを合わせて80人くらいが並んでると、凄く強そうだけど、でも、私の考えてる作戦は、これでもやっぱり人数不足なんだよね。


「オークさん達は防御を固めて壁役を担当してもらうとして、両サイドのウルフさん達をどう生かすかだよね」

「クックック。陣形の話ですかな?」

「うん。相手の数と、どうやって来るか次第だけど、こっちの数は少ないから取れる陣形は1つなんだよね」


 中央にオークさんで、両サイドにウルフさんの横一列陣形の簡単なものだけど。

 ロイさん達はとりあえずオークさんの後ろに待機かな。

 ウルフさん達は左右を突破してもらうとして、その後……。

 やっぱり攻撃力が圧倒的に足りない。


「お姉様!」


 あ、イザベラちゃんの声を久々に聞いたな~。

 相変わらずテンションが高い。

 ギュレールに着いてから別行動してたけど、何の用だったんだろ?

 右手に杖を持ってブンブン振り回しながら駆け寄ってくる。


「学園の生徒を選抜してきましたわ!」


 イザベラちゃんの後ろに付いてきてた子達は、全員が学園指定の魔導師のローブを着てた。

 全員が魔導師って、凄く偏ってる選抜だね。


「総勢30名の大魔法で一気に殲滅ですわ!」

「うん……大火力はロマンだよね~……。じゃ~、ちょっと試験してみようか?」


 と、いうことで、オークさん達の突進を止めるために作っちゃった防壁の前まで移動してきた。

 これはクリエイトで地面の土を改変して作っちゃった物だから、魔法で作った物と違って消えないんだよね。

 平原のど真ん中に聳え立つ壁……。はっきり言って邪魔でしかないよ。

 みんなが高さが20メートルはあるその壁を見上げて呆れたような顔になってる。

 とにかく、ラグルさんにバレる前に消しちゃおう!


「じゃ~、みんなの魔法でこれを壊しちゃって!」

「了解ですわ! お姉様! やりますわよ、皆様!」


 イザベラちゃんの掛け声と共に、全員が壁から距離をとって杖を構えた。


「大いなる炎の息吹よ、我が身に集いて力を成せ……」

「眼前の敵を打ち砕く矢となりて……」


 なんか、みんながブツブツと言葉を発すると杖から光が出てきた。


「ね~ね~イザベラちゃん。どうして魔法使う前にブツブツ言ってるの?」

「お姉様……これが詠唱というものですわ。詠唱することによって、自分の中にある魔力を魔法として顕現させますのよ。魔法を使うときはクックさんですら短い詠唱ですけど言ってるはずですわ。詠唱なしで魔法が使えるのは、私が知ってる限りはお姉様だけですわね……」

「そうなんだ? 私はイメージするだけで使えちゃうからな~。リンク状態のときだけだけど」


 リンクしてないときでも使えるけど、ファイヤはマッチの火程度しか出ないけど。


「ファイヤーアロー!」

「フレイムトルネード!」

「ファイアウォール!」


 みんな一斉に魔法を放って、炎の渦が壁を包んで燃え盛った。

 しばらくすると炎は消えて、結果を期待して見てみると、目の前には黒く焦げただけの壁が健在だった。


「あなた達もまだまだですわね! いいですこと、壁なんて火でどうにかできるものではありませんことよ」


 そうだよね。溶かすんだったら、そんな温度の火じゃ無理だろね。


「この壁はお姉様が作り出したのですわ。ただの壁ではなく、お姉様の意志の固さに比例してきっとミスリル……いえ、きっとオリハルコンよりも硬いはずですわ!」


 イザベラちゃんは壁に向かって両手を広げて、なんか恋する乙女みたいな顔になってるけど、私の意志はそんなに固くないと思うよ? 逆にふにゃふにゃだと断言できそう。


「わたしの想いの篭った魔法ならお姉様の固いガードを崩せますわ!」


 イザベラちゃんはいったい何を相手にしてるんだろう?


「届いてくださいませ、私の想い! エクスプロージョン!」


 爆発系魔法!

 確かにこの魔法なら壁は壊せるかも! でも、想いは届いてほしくないかも!


 ドッゴォォォン! 爆音が響き渡って、爆炎と土煙が晴れた後に見えたのは、ヒビ1つ入らずに聳え立つ壁。

 ……うん。壁の根元の地面に穴を開けただけだったよ。


「そんな……どれだけお姉様のガードは硬いのでございましょう……」

「硬いのは壁ね。……壁だよね?」


 そんなことはどうでもいいけど、さっきの爆音でラグルさんが来ちゃうかも!

 誤魔化す方法はただ1つ! なんとしてでもこの壁を消して証拠隠滅!

 これしかないね!


「私がやってみるよ!」

「お姉様がついに本気になられましたわ!」

「すげ~! まおう……勇者の魔法が見れるぞ!」


 ふっふっふ。見せてやるよ、私の本気!


 みんなの声援を受けて、私は1歩前に出る。

 そして壁に向かって右手をかざして。


「ファイヤ!」


 出たよ! 魔力1のマッチの火のような炎が!


「「「ええ……」」」

「ええ、じゃなくて、これからだよ」


 私は思いついちゃったんだよね。

 シャイニングソードに直接魔力吸収が出来るんだったら、魔法にも出来るんじゃない? って。

 ようするに、自分の中に魔力吸収して暴走するんだったら、魔法を作り出して、その魔法に魔力を吸収させちゃえばいいんだよ。


「いくよ~! 魔力吸収!」


 手の平で留まっていた火に赤い魔力の粒子が集まっていって、赤かった火が青色になって、一回り大きな燃え盛る火の玉になった。

 ついでに黒い稲妻が迸ってるけど。

 これ以上はヤバイよね?


「いけ~! ファイヤ!」


 狙いを定めて右手を前に突き出すと、一直線に飛んで行ったよ。レーザービームみたいな速さで……。

 一瞬で壁に到達したファイヤは、壁に当ると天まで昇りそうな炎となって壁を包んで燃え上がった。

 その炎の中で、壁は見る見るうちに真っ赤になって、溶けていってる。


「クックック。これは明らかにファイヤじゃないですね」

「ファイアウォール……いえ、フレイム系でございましょうか?」

「ファイヤで発動したからただのファイヤじゃないの?」

「「「いえいえいえ! どこをどう見てもファイヤじゃないですから!」」」


 う~ん? 違いが分かんないや。

 そうだ! 1度使った魔法はギルドカードに登録されてたよね?

 と、いうことで。


 【メギドフレイム】

 終焉の炎。込められた魔力値がそのまま威力、温度となり、対象を燃やし尽くすまで消えない。

 魔力値が高ければ、マグマをも蒸発させることが出来る。


 あ~……うん。今まさに、溶けてマグマみたいになった壁が水蒸気になって炎と共に消えて行ったよ。


「とにかくだよ、これでラグルさんにバレずに済んだ……」

「誰にバレずにだと?」

「はう!」


 大きな手が私の頭を鷲掴みにした!


「訓練してるからと聞いて見に来てみれば……地形破壊が訓練なのか?

「ら……ラグルさん。これは違うの!」

「何がだ?」

「みんな! 説明して……って、みんな居ないじゃん!?」


 さっきまで周りに居たのに!

 

「サクヤちゃんには特別授業が必要だな」

「はうぅぅぅ!」


 このあと、夜まできっちり魔法の基礎を訓練させられたよ。

 模擬戦まで後少し……泣かずに頑張るもん!

 


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