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第107話:水のローブは危険な装備!

 リリーが最大級のヒールをかけても、1人をなんとか回復させるのがやっとだった。

 範囲回復だと、個々にかかる効果が薄れちゃう。

 そして、今のオークさん達の状態は致命傷……瀕死。

 まだ死んでないのが救いだけど、先にリリーの魔力が切れちゃいそう。


 リリーとリンクしても、能力はリリーよりも低いし。

 どうしようかあたふたしてリリーの魔法を見いていたら、リュックからプニプニさんが飛び出してきた。

 その身体は金色に光り輝いていた。


「オーバードライブ状態ですね。クックック」

「そっか! ヒーラースライムのプニプニさんとリンクしたらいいんだね!」

 

 プニプニさんは嬉しそうにその場でぴょんぴょんと飛び跳ねてる。

 プニプニさんとの初めてのリンクがオーバードライブなんてね。


「プニプニさん! いくよ~! リンク・オーバードライブ!」

「ピ~!」


 光になったプニプニさんが身体の中に入ってきた。

 着ていた服が水のローブへと変化して、翼も妖精の羽っぽくなったよ。

 それと同時に、剣も杖へと変化した。

 まあ、予想通り、完全な魔導師タイプなのかな?


「神格モード! 水の精霊神イシス!」


 神ってついちゃってるけど、気にしないことにした。


「クリエイト! ヒーリングレイン!」


 右手に持った杖を天高く掲げると、上空に雲が発生して光の雨が周囲に降り注いだ。

 雨に打たれた場所が全て輝く。


「プ……プギ?」


 今まで地面に倒れてたオークさん達が、何が起こったのか分からないような声を上げて、次々に起き上がってくる。

 そして、クラビティによって出来た窪地に雨の水が貯まって、オークさん達が溺れた。


「プギ! がぼっ! プギ!」

「岸まで泳げ~!」


 キバキバさんが叫んで、助けに駆け出して行ったよ。

 キバキバさんに任せておけば……大丈夫かな?

 クックさんもそれを確認してから、何故か目線を逸らしながら声をかけてきた。


「クックック。えっとですね……。そのイシスの能力を見せていただけますか?」

「うん。いいよ」


 ギルドカードでステータスを見てみる。


 【水の精霊神イシス】天からの恵みと癒しを司る。


 力:1

 体力:1

 俊敏:50

 魔力:2500


 【スキル】


 レイン:イメージによって具現化された雨。


 さまざまな効果を持つ雨を広範囲に降らせる。

 範囲内に入ったものは、敵味方関係なくその効果を強制的に受ける。

 雨量によっては大洪水を引き起こし、災害になってしまう。

 雨は自然災害だからね。仕方ないね。


 【魔法】


 ヒール系、状態異常回復系の全てを使用可能。


「こんな感じだね」

「ふむ……。戦闘系はなく、完全に回復専門ですかね?」

「違うと思うよ。このレインに酸の雨とか、爆発する雨とか(ニトロだったかな?)をイメージしたら、凄い攻撃になると思うけど」

「……それは私も考えましたが、効果対象が敵味方関係なくですから、絶対の絶対に使わないでくださいよ? クックック……」

「あ、そうだね……」


 危ない! 試しちゃうところだったよ!


 と、クックさんとそんなやり取りをしていたら、岸に避難できたオークさん達が私の前に整列した。

 モフモフさん達の犬さん……ウルフさん達も集合したけど、何故か全員が下を向いて、視線を私に向けないようにしてる。

 暴走して指示を無視したことを反省してるのかな?


「クックック……。ところで、そのローブは……」

「これ? クックさんとオーバードライブしたときの鎧みたいなものかな? ギルドカード、説明表示」


 【水のローブ】


 水で出来た水色の半透明なローブ。

 プニプニさんの身体と着ていた服で出来ているため、物理攻撃無効の効果を持つ。

 魔法に対しても、水属性なので火属性は完全無効。その他の属性攻撃も軽減。

 ただし、電撃に弱い。


 注意:服を素材にして出来ているため、半透明な性質上、角度によっては裸体が見えちゃう。

 ……見えちゃうよ。


「……」


 みんなが視線を私に合わせないのはそれか~! 丸見えだったんだね!


「ミスディレクション・フラッシュバン!」


 手の平からゆらゆらと昇っていく淡い光の玉に、ミスディレクション……視線誘導の強制効果でみんながその玉に視線を向けた瞬間、視界を真っ白に染める光が弾けた。


「ぐお! 目が~!」

「「「ピギー!」」」

「「「キャイーン!」」」

「わきゃ!」


 私も視線を向けちゃったよ!

 みんなと一緒に両手で目を覆って転げまわったよ。

 その後、プニプニさんとのオーバードライブを解除すると、服はちゃんと元通りになったけどね……。




 ☆ ☆ ☆



「がはは! いいものを見せてもらったぞ! おっと、鼻血が……」


 鼻から垂れ流しになった血が床に点々とシミを作っていった。

 久々に偵察に行ってみたら、あのような至福な場面に出くわすとは。我は運がいいらしいの。

 屋敷の廊下を進んでいたらメイドの1人と鉢合わせになった。


「あら、お帰りなさいませ、あんまん様」

「ただいまなのである!」


 屋敷から飛び出していってからまだ30分しか経っていないがな!

 メイドがそんな我をじっと見詰めている。


「あんまん様、その血は……」

「うむ。これは至福な心のダメージを負ったのである」

「そうですか」


 素っ気無く言うと、雑巾を突き出してくる。


「自分で掃除してくださいね」

「……はい」


 部下と仲良くなるコツは、逆らわないこと、である! ……違っている自信はあるのだぞ?




 床を綺麗にした後、プレシアのじじい……様の執務室へと向かった。

 そのドアを開けると、正面のデスクに座っているプレシア様の姿が視界に入る。


「……はぁ」

「いやいやいや! どうしてワシを見ていきなり溜息をついてるのかの!」

「どうして我の主はこんな老いぼれかと思いましてな。がはは」

「それは仕方ないじゃろ。2つに分かれたワシとサクヤは正反対の性質じゃ。悪と善。恐怖と希望。ワシが年寄りな爺なら、向こうは若くて可愛い女の子になるのじゃからの」

「がはは。分かっておるのですよ。ですがね……納得いかないこともあるのである」


 我は2つの人形を取り出し、執務机の両端にちょこんとその人形を座らせた。


「あんまんよ、これは何じゃ?」

「サクヤちゃん人形ですよ。ノーマルとケモミミバージョンですよ。可愛いでしょう? これでプレシア様との会話を小さき魔王サクヤと会話しているように脳内補完するのである」

「ええ? いや、でもこんな所に置かなくてもじゃな……」

「あ、我は模擬戦というものに飛び入り参加してくるので。あ、それと、その人形は触っちゃダメですぞ。我の私物なので」


 魔王軍は動かせないの。となると、屋敷に居る我の私兵を選別するかの。私兵なら召喚術で呼出せるしの。

 がはは! 小さき魔王に会うのが楽しみである!


「ちょ! 待て! 机の上にこんな人形を置いてたらここに来た部下にワシが疑われるじゃろ! あんまんの物だと言っても誰も信じてくれんぞ! 待てって! あ……行ってしまいおった。触ったら怒るじゃろうし、ワシ、どうしたらいんじゃろ?」 



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