第106話:訓練中に大事故発生!
テント村を一通り見て回って、現状把握に努める。
ベラジュールから避難してきた人達は、ギュレールの街と近辺の農村からの支援もあって、食料は足りてるみたい。
問題があるとすれば、……私の家の庭がなくなっちゃった!
まあ、ベラジュールのあの村が、私の魔法で明らかにオーバーな回復を成し遂げちゃったから、すぐにも戻れるんだよね。
皆の体調と体力が回復したら、また護衛をつけて送り届ける予定。
このテント村はそれまでの期間限定だから、庭が少しくらい狭くなってもいいかな。
テント村の中央は広場になっていて、そこで数人の子供が遊んでた。
みんな7~8歳くらいだけど、木剣を持って打ち合って、コーン! カーン! って、いい音を出してた。
遊びじゃなかったよ!
その中の1人の女の子が、私を見つけて駆け寄ってきた。
「サクヤ様! 模擬戦っていうのするんでしょ?」
「うん。そうだよ」
「私達も参加する~!」
それを聞いて、木剣で練習していた子達が一斉に剣を上に掲げた。
「危ないからダメだよ」
模擬戦は1対1じゃなくて、集団戦だよね?
そんな中にこんな小さな子が混じっちゃうと……オークさんに踏まれて死んじゃうよ!
「クックック。それにですね、この模擬戦は領地対抗です。あなた達はベラジュールからのお客様ですからね。参加資格はありません」
「え~」
「その勇気と剣術は、ベラジュールに帰るときに、魔物から皆を守るためにあるのですよ? 人に向けていいものではありません」
クックさんがしゃがんで女の子の頭を撫でると、女の子は照れたように顔を赤くして頷いた。
そしてまた皆のところに戻っていった。
「クックさんって、意外と子供好きだよね」
「ええ。だからサクヤ様も好きなのですよ。クックック」
「え! それって……」
私もクックさんから見たら7~8歳くらいに見えてるってことか~~~!
私は子供じゃないってことを見せてあげるよ!
「てことで、みんな集合!」
北門を出たところの草原に皆を集める。
ここは見渡す限りの草原になっていて、ゴブリン達との防衛戦が行われたところなんだよね。
模擬戦もここが戦場になりそう。
新たに仲間になったオークさん達はダラダラと気だるそうに集まってきた。
キバキバさんの配下になっただけで、私のファミリーで仲間になった訳じゃないから仕方ないかな。
そこはキバキバさんの統率力に期待しよう。
ウォーウルフさん達は、綺麗に整列してくれてた。
フェンリルのモフモフさんを頂点に、完全な縦社会が形成されてるのかな?
「これから陣形と、実際に戦術に合わせた動きを特訓してみるよ」
「サクヤちゃん。俺達の部隊もその中に混じって行動するのか? 人族の俺達はついていけないと思うが?」
「ロイさん達は別部隊だから、一緒じゃないよ?」
「分けるのか? 俺達は15人しかいないから、陣形も何もないぞ?」
「模擬戦のときの作戦は考えてあるけど、今日は相手の役をやってもらおうかな。オークさん軍団の前方に立っててくれるだけでいいよ」
とりあえず、おおまかな配置を指示して、位置についてもらう。
「クックック。サクヤ様。優しいのはいいことですが、このような集団を指揮するときは、多少厳しくしたほうがいいかと」
「え? 何がいけないの?」
「指示を無視するものが1人でも居た場合、そこから崩壊するかもしれません。演技でもいいので、怒ってください」
「う~ん……頑張ってみるね」
オークさん達は指示を聞いてくれる雰囲気じゃなかったしね。
「いい? 私がこの笛をピッって1回吹いたらゆっくり前進。ピピッって2回吹いたらそのまま後退。ピーって長く吹いたら止まれだからね」
笛を口に咥えて吹いてみせた。
複雑な動きは後回し。簡単な集団動作から練習だね。
クックさんとリンクして翼を出して、上空から見下ろしてみると、オークさんとロイさん達との距離は100メートルくらいの間がある。
平原で邪魔になる障害物は無い。
「じゃ~いくよ~! ピッ!」
「「「猪突猛進!」」」
キバキバさん達の最初から居たオークさん達を置き去りにして、新しく入ったオークさん達だけがいきなり全速力でロイさん達に突っ込んでいっちゃった! ゆっくりって説明したのに~!
ピ~~~!
止まれって笛を吹いても止まる気配なし……。
完全に無視された。
最初から私のことを舐めて見てたみたいだし……。
1人どころじゃなかったよ……。もうね、私の中で何かが切れた音がしたよ。
進行方向10メートル先に狙いをつけて……。
「クリエイト! グランドウォール!」
周辺の大地を素材にして、高さ20メートル、横幅が50メートルくらいの城壁が出現した。
オークさん達は止まることが出来ずに、次々とその壁にぶつかっていく。
「「「ピギィィ!」」」
一旦ぶつかって止まった後、雄叫びをあげて、その壁を回りこんで抜けようとする。
まだ止まろうとしないんだね……。
もう完全に怒ったよ!
「クリエイト! グラビティーフィールド!」
オークさん達をすっぽりと範囲に入るように超重力を発生させた。
範囲内の地面がひび割れを起こして、オークさん共々めり込んでいく。
当然、オークさん達は、何十倍にもなった自分の重さで地面に縫い付けられて、悲鳴が巻き起こった。
私はその鼻先に着地した。
「どうして言うことを聞いてくれないの? 連携した動きが必要って分かってもらえないのかな? このまま潰れてみる?」
突き出した右手をゆっくりと下ろしていって、かかる重力を少しずつ増やしていった。
「サクヤ様! やりすぎですよ!」
「こんな奴等でも私の可愛い部下なのです! お怒りをお静め下さい!」
クックさんが後ろから抱きついてきて、両手で私の右腕がこれ以上下がらないように固定してきた。
キバキバさんは横で土下座してる。
力を抜いて、グラビティーフィールドを解除する。
「みんな言うこと聞かないとダメだよ!」
「「「……」」」
あ、あれ? 解除したのに1人も起き上がってこないよ?
「リリー! 回復を! クックック……」
「了解~! ……て、全員が全身の骨が粉々になってるよ! 死んで無いけど私だけの回復じゃ無理っぽい?」
「「なんと!?」」
クックさんとキバキバさんが恐る恐るな感じで私を見てくる。
……やりすぎちゃった! どうしよう!?




