第105話:いつの間にか戦力充実!
王都で一通りのことをやり終えた私達は、ギュオールの街に向けて出発することにした。
必要なものを買い揃えて、馬車に詰め込んで、いざ、ギュレールの街へ!
でね、門を出たら、沢山の兵士さんに王都が包囲されてたよ。
その先頭にいるのが、カスケールさんだった。
「おお! サクヤ様! 無事でおられましたか!」
「え? 最初から無事ですけど……」
「あ! 忘れてましたわ! お姉様が部屋から行方不明になったとき、お父様が領地から兵を連れてくる話になってましたわね!」
「忘れちゃダメだよ!」
そういえば、バルコニーの上で叫んでたな~……。で、本当に5000人くらい来たよ。
私はカスケールさんに今まであった事と、模擬戦をやることになったことを説明した。
「ほう? 我が娘の領地を……しかも王族の領地を馬鹿にしただと?」
「「「許すまじ!」」」
周囲に居た兵士さん達が叫び、槍の柄の先を地面に突き立てた。
「ただの領地と公国の違いを教えてやるぞ! 全軍、転進! 根絶やしにしてやる!」
「クックック。お待ちください。それでカスケールさんの軍が勝っても、我がサクヤ公国の勝ちにはなりません」
「そうだよ。それに模擬戦どころか、領地が3つ滅んじゃうよ」
ここで止めておかないと大変なことになっちゃう!
「人数が全然足りないですから、お父様が助けてくれたら嬉しいですけど、5000人は多すぎますわね」
「ふ~む。では、模擬戦に我が軍から10名を貸そう。新人で基礎訓練の最中だが、模擬戦は良い勉強になる」
そう言って、カスケールさんは10人の少年兵を呼んだ。
みんな筋肉が立派についてる。16か17歳くらいなのに、どうやってそんなに筋肉をつけたんだろう?
「よ~し! 野営資材を担いで全力疾走! 先行してサクヤ殿達の野営陣地を構築せよ!」
「は! スキル、肉体強化! チャージスタミナ! ハイスピード! よし! 小隊出発!」
担いでって……。あ~、重い資材を直接肩に担ぐのね。そうやって鍛えてるのか……。
馬と荷車は使わないんだね。みんな筋肉隆々だもんね……。
野営の資材を担いで馬並みのスピードで走り去っていく10人を遠い目で見送ったよ。
カスケールさんとしばらく談笑した後、私達も出発した。
もちろん、モフモフさんが引く馬車でだよ?
しばらく進むと、肩で息をしながら休んでる10人に追いついちゃった。
スキルで強化して馬並みのスピードと、普通のモフモフさんのスピード、どっちが早いかだよね。
「クックック。先行して野営陣地を構築する命令を受けて、こんなところで休んでるなんて、たるんでますね!」
「ちょ、クックさん!?」
馬車から飛び降りて行っちゃった。
「休んでいる暇なんてないですよ! 私に追いつかれた者は消し炭にしてあげましょう! クックック!」
握り締めた右拳から、真っ赤な炎が立ち昇った。
「うわぁぁぁ!」
10人全員が悲鳴を上げてすぐさま走り出していく。
そしてそれを楽しそうに追いかけるクックさん。
「クックック! ク~クックック! クゥゥゥックックック!」
凄く楽しそうな笑い声だね……。
あっという間に丘を越えて見えなくなっちゃった。
『ボス。追いかけますか?』
「あ~うん。ゆっくりでいいよ。また追いついちゃったら繰り返されそうだし……」
「あの兵士様方が不憫ですわ……」
「クック先輩も本気じゃないっしょ。大丈夫だよ。たぶん……」
不安しか湧いてこないよ。
それから20分後、クックさんが戻ってきた。
「リリー。すぐに来てください」
「え? どしたの?」
「やりすぎちゃって、みんな倒れたまま動かなくなりました。数人は痙攣してますが。クックック」
「笑い事じゃないよ! 不安的中だよ!」
その後、リリーのリカバリーで回復した兵士さん達がギュレールに到着したのは、私達が到着した2日後だった。
ギュレールの近くの草原まで来たとき、4匹の狼が馬車を囲むように併走してきた。
「ポチさん、ゴンさん、タロウさん、ペスさん、ただいま」
「「「わお~う!」」」
ギュレールを守っていてくれたモフモフさんの子分さん達だ。
挨拶を返してくれて、心がほっこりしたよ。
そのままギュレールの街まで到達して、放心状態になっちゃった。
「何……これ?」
北の街道から逸れて、そのまま西にある私の家に行こうとしたら、丸見えだった屋敷が丸太をそのまま地面に突き刺したような壁に囲まれてた。
その壁まで近づくと、キバキバさん達オークの集団が、壁の外の草原に整列してた。
その数、ざっと見ただけで50人……。増えてるよ。
そして、併走していたポチさん達も散開して、それぞれが一吠えすると、周りの丘を越えて狼さん達が次々に集まってきた。
ポチさん達4匹を先頭に、それぞれ5匹のグループで整列した。
『ほう? ポチ達もそれぞれ群れのボスになったようだな。1グループが5匹。狩りをするにはもっともバランスが取れている数だ』
「野生の狼さんを子分にしちゃったの?」
『野生の狼ではなく、魔獣のウォーウルフですね。ポチたちはグレートウォーウルフ。下位の者を手なずけたのでしょう』
確かに、ポチさん達よりも一回り小さいね。
で、キバキバさん達のオークの集団は……。
「野生のオーク集団がこの壁の奥にいる避難民の方達を襲ってきたので、説得してやりましたよ。この拳で!」
「……キバキバさんって、番長タイプだね」
「番長? タイプでいうと、オークキングですが?」
「そういう意味じゃないけど、とりあえず、新しい皆、よろしくね」
「……」
うわ! みんな無反応だよ!
何言ってんだ? この小さいのは? て視線がすごい突き刺さってるよ!
「こら! この方は魔王様だぞ! 頭を下げんか!」
「あ、いいよいいよ。気にしてないから。それよりも気になってるのは、キバキバさん人語が上手になってない?」
「はっはっは。人と暮らしてるうちに覚えてしまいました」
「へ~」
ヤバイよ……知能でキバキバさんに負けてるかも?
そんな危機感を感じながら、丸太の壁にある門を開けて中に入ると、避難してる人達のテントが一杯並んでた。
私の屋敷の前面が、テント村に様変わり。
丸太の防壁は、キバキバさんのオーク軍団が避難民を守るために設置してくれたんだって。
テントを眺めてると、盗賊だったロイさんが屋敷から駆け出してきた。
「よう! サクヤちゃん。無事に避難してきた人達をここまで連れてきたぜ」
「ありがとう」
「いやいや。サクヤちゃんの私兵となって初任務だったからな。礼はいらないさ」
「あ、そっか……」
「ん?」
ロイさん達の元盗賊さんを数に入れるの忘れてたね……。
「クックック。これで総勢約100名ですね。魔物と人族の混成軍。魔物の数が多いですが、オーク達は人族の重戦士よりも力が強く、硬さもあります。ウォーウルフ達も騎兵よりも速く、小回りが効き、数倍は強いですから、戦力は十分ですね」
「そうだね」
戦力は十分。後は相手の数と、戦略かな?
個々の力は強くても、数と戦略次第では負けちゃうかも……。
これは残り1週間、訓練するしかないね!
私がキバキバさんよりも知能で負けてないことを証明してあげるんだから!




