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第102話:1つのことをやり遂げたことに意義がある! ……のかな?

「クックック。さて、皆に集まってもらったのは、もちろんサクヤ様のクエストについてです」


 宿屋の1室に、リリーとイザベラさんを招集しました。

 モフモフさんは、サクヤ様がモフモフさんの胸の辺りの柔らかな毛を枕にして寝ているので動けず。

 サクヤ様と添い寝とは……少し嫉妬してしま……いえ、モフモフさんはサクヤ様にとっては『犬』ですからね。よしとしましょう。クックック……。

 負け惜しみではありませんよ?


「サクヤっちって、しっかりしてるようでどこか抜けてるよね~」

「そこがお姉様の素敵なところですわね!」

「クックック。イザベラさん。分かっているじゃないですか!」

 

 イザベラさんと硬い握手を交わしました。

 

「まあ、サクヤ様の魅力については後ほどじっくり話すとして、私はもう、クエスト失敗して悲しそうにしているサクヤ様は見てられないですね」

「だよね~。何とかしてあげたいけど」

「もう全員で行きませんこと? 相手がゴブリンでも万が一ということもありますし」

「ですね。クックック」


 出来れば、1人でクエストクリアしてもらって喜ぶ顔が見たかったのですが、仕方ありません。

 イザベラさんの言う通り、万が一ということもありますしね。



 ―――


 朝。目を覚ますと、クックさん達が今日は一緒にクエストに行くって言ってきた。

 クエストをクリアしたいから大歓迎だけど、どうして急に?

 まあ、ここまできたら意地でもクリアしたいよね!


 いざ、受付を済ませてギルドの扉を出る。


「クックック! 最初から全力で行きますよ! モフモフさん!」

『おう! フェンリルモード!』


 クックさんの顔がフルフェイスの兜で覆われて、身体から魔力の旋風が巻き起こって、モフモフさんの体が一回り大きくなって、銀色の毛が金色に変わって光り輝く。

 その様子に街の人達は逃げ惑い、兵士さん達が駆けつけてくる。


「お願いですから外に出てからで! 街中ではご遠慮ください! サクヤ様、お願いしますよ! 本当に!」

「「『あ、はい』」」


 注意されて途端にしぼんでいくクックさんとモフモフさん。

 そして私は巻き添え。いつものパターン。


「も~! 怒られちゃったじゃん!」

「『ごめんなさい』」


 どうしてこんなに気合入ってるのか分かんないけど、やっぱり、1人よりは皆と一緒に行動したほうが楽しいね。




 北門を出たところで、クックさんとモフモフさんが力を解放した。


「クックック! リリーは今出来るだけの結界と強化魔法をサクヤ様に!」

「おっけ~。アタックバリア! マジックバリア! エラーキャンセラー! パワーマジックアップ! ハイクイック!」

「私もお姉様をお守りしますわ! ファイヤービット! お姉様に近づく敵は情け容赦なく焼き尽くしてあげますわ!」


 私の体が結界で包まれて、いくつもの火の玉が周囲を飛び回る。

 みんな過保護すぎると思うよ?


『そういえば、どうしてゴブリンが異常発生しているのか分かりましたよ』

「え? やっぱり異常だったんだ?」

『はい。城に居た兵士をおどし……ちょっとさり気なく聞いてみたんですが』


 脅してって聞こえたけど……うん、気のせいだね。


『領主達とその護衛がこの王都に集まって、街の人口が急激に増加したのが原因らしいですね』

「え! じゃ~毎年やってる領主会議って害にしかならないじゃない。魔物が増えて危ないよね」


 実際に、私も農民のおじいさんに、外は危ないって怒られたし。

 あのおじいさんは強かったけど……。


『そうでもないですよ。その魔物の討伐報酬を目当てに、多くの冒険者が集まってくるらしいですからね。ここら辺の魔物はゴブリン、少し強くてオークやハンターウルフ程度しか出ないそうですし。魔物は害ですが、ランクの低い冒険者にとっては、利益を生んでくれるイベントらしいです』

「え~? 私は外で冒険者さんと出会わなかったよ?」


 ゴブリンはいっぱい居たのに、どうして冒険者さん達は活動してなかったんだろ?


「クックック。サクヤ様のクエストの邪魔をするなと、きつく言っときましたよ」


 グッと親指を立てて言ってくるけどさ~。それってさ~。


「冒険者さんがゴブリンを倒してくれてたら1日目でクエストクリア出来てたよね!?」

「あはは。そうかもしれないけど~、サクヤっちだったら他の理由で失敗してそうだね~」

「む~……」


 3日目の実績があるから否定出来ないよ……。




 薬草の群生地まであと少しのところまで来た。


「お姉様。なんだか、平和ですわね」


 イザベラちゃんが背伸びしながら、顔にかかる日差しを手で遮りながら言う。

 すごいお嬢様っぽい仕草……本物のお嬢様なんだけどね。


 それにしても、イザベラちゃんの言う通り、ここまで戦闘回数0回。

 昨日までのあのゴブリンの数は何だったの?

 て、答えは簡単なんだけどね。


「うん。クックさんとモフモフさんを見て、ゴブリンが逃げ出しちゃうからね」


 2人ともゴブリン相手に本気にならなくていいと思うけどな~。

 クックさんの魔力とフェンリル波動の垂れ流しで、逃げ出すどころか、途中からゴブリンが恐怖で出てこなくなっちゃったよ。


「『邪魔する者は殺す!』」

「うん……そうだね。油断しないで頑張ろうね」


 えっと……私が受けたのは、1番簡単な薬草採集だよね?




「これで15……。やった~! 薬草が規定数取れたよ!」


 最後の薬草をリュックの中に入れながらガッツポーズ!

 そして、何故か鬼気迫る勢いで皆が駆け寄ってくる。

 ……なぜ?


「クックック! リリーは空から近寄ってくるものを警戒! イザベラさんはサクヤ様と共にモフモフさんの背に!」

「え? え?」


 言われるままに、伏せたモフモフさんの背中に乗ったけど……。


「私はしんがりを勤めます! モフモフさんは疾風で街までの最短距離を駆け抜けてください!」

『おう!』

「「「『薬草は誰にも奪わせない!』」」」


 え? 薬草を奪いに来るの? 誰が?


 それを聞く前にモフモフさんが走り出したから、聞けなかったよ。

 そして、あっという間に街に到着。

 どうして皆がそんなに気合が入ってるのか、結局、分かんなかったよ。




 ギルドのカウンターの前に立つ。

 いつもは騒がしいギルド内に居る冒険者さん達が、やけに静かになって注目してきてる。

 そんな中、カウンター前の、私のために用意してくれてる踏み台に登って、ギルドカードを魔法陣に置いた。


「……はい。クエスト達成です。お疲れ様でした」

「「「いよっしゃぁぁぁ!」」」


 何故か私よりも冒険者さん達のほうが喜んでた。


「やった~! 銅貨30枚ゲット~!」

「やったな! サクヤちゃん! みんな心配して応援してたんだぜ!」

「酒だ! 樽ごと持ってこい!」

「サクヤちゃんのクエスト達成を祝って朝まで宴会だ!」


 かんぱ~い! とか言いながら、みんなは既に飲み始めてる。


「あの……喜んでいるところ申し訳ないのですが、昨日までよりも今日のほうが報酬は安いですよ?」


 そういえば、昨日までの報酬よりも、クエストクリアしたほうが報酬が安いよ? どうして?


「えっと……本日はクエストクリアのみで、魔物を討伐されてませんので……。クエストクリアしたほうが借金返済が遠くなっています……。目的が借金返済からクエストクリアにいつの間にか変わってましたね……」


 ……。


 一気に静まり返るギルド内。


「クックック! 1つのことを何日かけようとやり遂げたことに意義があるのですよ! ということで、借金はサクヤ様の頑張りに免じて帳消しに」

「できません(にっこり)」

「ですよね!」


 借金は減らなかったよ!

 クエストクリアに意地になっちゃってたけど、明日からは魔物討伐しよう! うん、そうしよう!

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