第101話:5歩進んで10歩下がる!
クエスト兆戦1日目は、ゴブリンの多さで目的地に辿り着けなくて失敗。
そして2日目! 昨日はお昼過ぎに出発したから時間が足りなかったんだよ。
てことで、同じクエストを受けて朝から出発!
北門を出て、街道を進んで、途中の小道に入る。
ここからだよ。この小道に入ったところからゴブリンが多くなってくる。
その予想通り、目の前にゴブリンが2体……。
私からは突っ込んでいかないよ?
だって、俊敏1だし。
向こうが気付いてなくて奇襲の条件が揃ってても、ここから駆け出して間合いに到達するまでに、態勢を整えられちゃうしね。
じゃ~どうするか。
もちろん、光の刃を飛ばすんだよ。
バシュ!
胴体を切断されたゴブリンが光になって消えていった。
1発撃つと剣の光は消えちゃうけど。
「魔力変換吸収!」
私自身に吸収じゃなくて、剣に吸収させた。
すると、剣が光を取り戻して、シャイニングソードになった。
そうしてるうちに隙が出来て、ゴブリンに詰め寄られちゃうんだけど、スローが自動発動。
ゆっくり慌てずに避けて、がら空きになった横腹をシャイニングソードで斬りつける。
こうやって、シャイニングソードがあればだけど、ゴブリン程度だったら難なく倒せるようになってきた。
しばらくそうやってゴブリンを倒しながら進んでいくと、太陽が真上の位置に来てた。
「お腹減ったな……」
戦いながら動き回っていたら、当然それだけお腹が減るよね?
うん……。お昼ご飯食べたいから街に戻ろう。
そしてご飯を食べて再び目的地へ!
結果……夕方になっても目的地に辿り着けなかったよ!
とぼとぼと夕闇に染まりつつある街を歩きながら、ギルドのドアを力無く開ける。
「クックック……。今日もダメでしたか……」
「お姉様……」
すでにクエストを終わらせて先に帰っていた皆が声をかけてくる。
「うん。昨日はお昼過ぎでダメだったから、今日は朝早くにクエストを受けて出発したのに、どうしてダメなんだろ……」
私の言葉を聞いて、ギルド内にある食堂で夕食を食べていた冒険者さん達が心配そうな顔を向けてくる。
まあ、とりあえずは報告だけでも……クエスト失敗報告だけど。
カウンターまで行ってギルドカードを置くと、何故か受付のお姉さんが苦笑い。
なぜ?
「えっと……今回はクエスト失敗ですが、討伐報酬が銀貨2枚です」
「え? 昨日の2倍?」
「……サクヤ様は、朝早く出発して、1度帰ってきて、お昼にそちらの食堂でお昼ご飯を食べていらしましたよね? それからまた出発したってことは、昨日の行程と同じことを今日は2回繰り返したということで……ゴブリンを倒した数が2倍に……」
「あう?」
どういうこと?
「クックック! サクヤ様。せっかく朝に出発したのにお昼ご飯を食べに戻ってきちゃダメでしょ」
「戻ってきちゃダメって……。あ! そっか! クエストを受けた時間じゃなくて、街を出た時間だね! あうぅ!」
「3歩進んで4歩下がっちゃってますわよ。お姉様……」
会話を聞いてた冒険者さん達が、ガタァン! て、派手な音を響かせて、全員ズッコケテタよ。
あ~うん。単純なミスだったね。
でも、問題点は分かったし、明日は必ずクエストクリア出来るよ!
リュックの中には、お城のメイドさんに作ってもらったお弁当!
準備万端! クリア間違いなし!
「いってきま~す!」
「サクヤ様、いってらっしゃい! 頑張ってくださいね!」
「うん!」
門番の兵士さんに挨拶して出発!
そして順調に進んで、周りに居たゴブリンを倒して空を見上げると、太陽はちょうど真上のあたりにきてた。
ふっふっふ。ここで街に戻ってお昼ご飯なんて失敗はもうしないよ。
リュックの中からスライムのプニプニさんとお弁当箱を取り出して、お弁当箱の蓋を開けた。
ゴブリンとの戦いで結構激しい動きをしてたけど、プニプニさんがショックを吸収してくれたから、中身は全然崩れてなかったよ。
さすがプニプニさん。
お弁当を美味しく全部食べて。
「そろそろ行くよ」
声をかけると、草を食べてたプニプニさんがリュックの中に飛び込んでくる。
ここから先に進むと、昨日までの2日間よりも前進!
行くよ~!
気合をいれて進んで、目的地の森が見えてきた。
薬草の群生地は、その手前の草の茂みなんだけど。
さらにその手前でゴブリンの群れと遭遇。
最後の1匹になるまで倒したけど、問題発生。
「ハア……ハア……」
息が切れる!
体力の無さの影響が爆発、魔力吸収もまともに出来なくなっちゃった!
こんな状態でスローを発動させても、ゴブリンの攻撃を避けれないかも……。
光が消えた剣を構えてゴブリンと睨み合ってると、ゴブリンの右側に人影が飛び込んできた。
そして、手に持ったクワでゴブリンの頭を強打!
コ~ン! ていう音がして、ゴブリンが光になって消えていった。
その人影は、荷物運びの牛さんを連れた農民のおじいさんだった。
「こりゃ! 10歳程度の子供がこんなところに来ちゃ駄目じゃろ! しかも女の子が冒険者ごっこなんて、家族が心配するぞ!」
怒られた! そして問答無用で正面から抱きかかえられて、牛さんの背中に乗せられちゃった!
「あの……私は……」
「外は危険なんじゃ! 分かったらもう危険なことしちゃいかんぞ!」
「あ……はい。ごめんなさい」
反論できる隙がな~い! 牛さんの背も高くて、怖くて飛び降りれないし……。
「街まで送ってってやるわい。ちょうど畑仕事が終わった帰りじゃからな」
「ありがとうございます……」
あ……あれ? これって、双六のゴール手前で『スタート地点に戻る』のマスに止まっちゃったみたいな?
クエスト失敗の強制イベントですか?
街の北門に到着。
そして私は抱きかかえられて、門番の兵士さんの前に降ろされる。
「こりゃ! こんな小さな女の子が外に出ておったぞ! 子供を危険な外に出さないのも門番の仕事じゃろが! わしが保護したから今回は何事も無かったがな!」
「すみません。今後から気をつけます」
兵士さんがペコペコと頭を下げる中、おじいさんは去っていったよ。
そして……。
「サクヤ様……」
頑張って、と、送り出してくれた兵士さんとの間に微妙な空気が張り詰める。
「お茶でも飲んでいきますか? お菓子もありますよ……」
「あ、うん」
空を見上げれば、日は傾いておやつの時間にはちょうどいいかな。
また出発しても間に合わないし。
あのおじいさんも心配してくれただけだしね。
そんなこんなで。……今日もクエスト失敗です!




