第100話:1番簡単で報酬も安いクエストのはずだった……よね?
草原が全部畑になっちゃう! てことで、すぐにクックさんを呼んだ。
うん。私1人じゃ無理だったよ。盛り上がっちゃった皆は誰も話を聞いてくれなかった。
そして、たった一言で、皆を冷静を通り越して、怒り心頭にしちゃった……。
「クックック。国内を畑で埋め尽くすのは勝手ですが、その前に、あなた達の頭の中に咲いている花畑をなんとかしなさいな」
うん。怒るよね~!
「魔王様の側近だとて、その言い草には反論させてもらいますぞ! だいたいですな、サクヤ様の庇護を出来立ての領地が主張していることも気になっておったのですよ」
「そうじゃ! 戦力が整っている我らの領地が庇護すべきなのじゃ!」
数人の領主さんが、顔を真っ赤にしてイザベラちゃんに詰め寄った。
怒りがサクヤ公国に飛び火しちゃった。
「クックック! まだ分かってないようですね! サクヤ様に庇護など必要ないのですよ! そもそも、領民すら守れないあなた達が、サクヤ様を守れるなどとは思えませんね!」
「そうですわ! お姉様を守るのはわたくし1人で十分ですわ!」
……富国強兵の話はどこに言ったんだろう?
どうして私の取り合いみたいになってるの? いつから弱い強いって話に?
「皆! 静まれぃ!」
ビスケールさんがテーブルを叩きながら大声を出した。
その巨体から発せられた音声は部屋全体を揺らして、その瞬間にテーブルの上に素早く移動したクックさんの手に握られた剣が、ビスケールさんの喉元に……って、えぇぇぇ!?
「何やってるのクックさん!」
ジャンピング張り手をクックさんの後頭部に喰らわせてやったよ!
ダメージは0だったけど。
「いや……そのですね、サクヤ様に対し威嚇を放ったので、つい身体が勝手に動いてしまいまして。クックック」
「クックックじゃないでしょ! そこに正座!」
「御意!」
素直に正座するクックさん。ただし、テーブルの上に。
そこにって言ったけどさ……。
「ビスケールさん、ごめんなさい! 何か言いたいことがあったんだよね?」
「ああ、うむ。強い弱いで揉めているようじゃったからな、領地対抗の模擬戦を提案したかったのじゃ」
「クックック。いい考えですね。サクヤ公国の力、見せてあげましょう!」
「望むところですな! ですが、領地の安全を守らねばいけないため、我らは連合として、有志の領地戦力でお相手しましょう!」
「クックック……」
「ふっふっふ……」
……。
「「「戦争だ!」」」
模擬戦だよね?
会議どころではなくなって、中庭の野営地で模擬戦の作戦を練ることにした。
どうしていつもこうなっちゃうんだろ?
まあ、クックさんを呼んだのがそもそも間違いだったよね。
「クックック。さて、イザベラさん。こちらの戦力はいかほどでしょう?」
「この場にいる私達と、あとはギュレールに居るポチさん達のウォーフルフ4匹、後はキバキバさん達のオーク兵15人。確認できるだけでこれだけですわね」
「は? いや……クックック。兵士達もいましたよね?」
「ギュレールに居る兵士はサクヤ公国所属ではなく、王国から派遣されてますので、戦力外ですわ。給金も王国が出してますので。もちろん、冒険者の戦争動員は規定により禁止されてます」
「さ……サクヤ様……」
あ~……そんな困った顔で見詰められても、どうすることも出来ないよ?
「う~ん。まずは相手の戦力の情報がほしいよね。クックさんとモフモフさんが居たらどれだけ戦力差があっても大丈夫だと思うけど、模擬戦だから本気出せないし」
「模擬戦は1ヵ月後ですし、ギュレールに帰ってから対策を行いましょう」
そう決めてから、王都にある冒険者ギルドに向かった。
王国から救援の報酬も貰えたし、魔物討伐報酬も合わせたら凄いお金が貰えそう。
その資金で、強制的な徴兵じゃなくて、募集して兵士さんを雇う計画。
ギルドに着いて、早速カウンターに設置されてる魔法陣にギルドカードを置いた。
「えっと……」
受付のお姉さんが困ったような顔をして、映し出された文字を見てる。
金額が大きすぎて困ってるのかな?
「大変言いにくいのですが、パーティー換算でマイナス金貨12枚の借金となります」
はうぅぅぅ!?
「え? 借金? どうして?」
「その……冒険者規定によって、建造物の破壊などの場合、修繕補償金が報酬から引かれることになるのですけど、サクヤ様の場合、ベラジュール王都東地区が半壊滅、西地区完全壊滅ですので……」
「お待ちなさい。お姉様はベラジュールを救ったのですわよ?」
「はい、そうですね。ですが、これは国家の救援、人命救助の貢献を差し引いての金額です。それらを加えなかった場合は大金貨10枚……。あ、魔族撃退の貢献が大きいですね」
えっと……金貨1000枚が大金貨1枚だから、本当は金貨1万だったのが12枚か……。
さっき貰った救援の報酬が金貨10枚だから、これをこのまま返済にあてて、残り借金は金貨2枚。
クエストをいくつかクリアできたらなんとかなりそう?
「お姉様! 模擬戦どころではありませんわよ! この1週間の間はとにかくクエストをこなしていきましょう」
「クックック。そうですね。皆で1つのクエストよりも、手分けしていったほうが効率はいいでしょう」
「そうだね~。それに、クエストクリアで、サクヤっちの魔王レベルのアップにも繋がるかもだし、ここは前向きに考えよ~」
「うん! 皆ありがとう」
と、いうことで、早速クエストを受けてきたよ。
内容は、1番報酬が安い薬草採集!
え? 魔物討伐? 何言ってんの? リンクしてないとステータスオール1だよ? 無理無理!
受付のお姉さんから、薬草の群生地を聞いて、その場所に向かった。
王都の北側、草原の中にあるちょっと小さい森の手前の、草が茂った中に生えてるらしい。
薬草は何回も見てるから、さすがに覚えて簡単に終わるかな? って思ったんだけど、そう簡単にはいかないみたい。
採集場所に向かう途中の小道で、2匹のゴブリンと遭遇しちゃったよ!
油断してて、なんの警戒もしてなかったから、しっかりと見つかっちゃった。
ゴブリンのステータスは全部10前後……つまり、私の10倍強い! 強敵だよ!
「グギャァ!」
短剣を振り上げながら突っ込んで来た!
その直後にスローが自動発動して、動きがゆっくりになった。
私の体もそのスローの影響を受けて、動かす意思はあっても、ゆっくりな動作になって思うように動いてくれないけど、敵の動きが見えてるから避けることは出来る。
問題は攻撃なんだけど……。
回避行動で半身に捻った態勢から、腰に下げてたシャイニングソードを鞘から抜き放って!
ピシュン!
何の抵抗もなく、抜き放たれた光輝く剣の刃がゴブリンの身体を通り抜けた。
今までは、剣の重さとスローの影響で、剣を振るだけでも苦労してたんだけど……。
スローが解除されると、ゴブリンは短剣を振り下ろした姿のまま、光となって消えていったよ。
これって、重さを全然感じないシャイニングソードの武器補正の効果?
武器補正があるならいけるかな?
少し離れた残りのゴブリンに、剣に宿っている光の刃を飛ばすイメージで……。
「シャインスラッシュ!」
思いついた技の名前を叫んでみた! 周りに人が居たら凄く恥ずかしいけどね!
「グガァ!」
飛んでいった光の刃が、ゴブリンを頭から胴体へ真ん中から真っ二つに両断して光に変えた。
凄い! これなら何匹来ても大丈夫だね! ど~んとこ~い!
何匹来ても大丈夫? ど~んとこい?
誰? そんなこと言ったのは?
うん……結果として、採集場所に辿り着けなかったよ!
もうね、ゴブリン多すぎ!
クエストに出発したのはお昼過ぎで、ちょっと遅めの時間だったけど、出てくるゴブリンを倒してたら夕方になっちゃったよ。
普通の人だったら、ゴブリンの数が多くてもそんなに時間をかけずに辿り着けるんだろうけど、私の体力だとね。
戦う~休憩。歩く~歩き疲れたから休憩。戦う~休憩。少し歩く~歩き疲れたから休憩。
……休憩の回数が多すぎ!
さすがに夜になると危ないってことで、街に引き返した。
ギルドに入ると、クックさん達は既に戻ってきていた。
「クエスト失敗だよ……」
採集なんかのデイリークエストに失敗ペナルティーはないけど、報酬の銅貨30枚が稼げなかった。
「クックック……。まあ、仕方ありません。明日また受ければいいのですよ。とりあえず、報告だけでもしてきてください」
「うん……」
しょんぼりして、カウンターの魔法陣にギルドカードを置いた。
「クエストは失敗ですが、魔物……ゴブリン討伐報酬が銀貨1枚と銅貨5枚ですね」
はい? 銀貨? クエスト報酬よりも遥かに多いよ?
「クックック。サクヤ様、いったい何匹のゴブリンを倒したのですか?」
「えっと……いっぱい?」
あ……あれ?
100話目達成です^^
今度は200話目指して頑張ります!




