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第99話:富国強兵!

 領主会議。

 1年に1回だけ王都で開かれるその会議に、私も招待された。

 王都に帰ってきたタイミングと開催がちょうど重なったからだけど、本来ならサクヤ公国っていう領地を無理やり建てちゃったイザベラちゃんが出席だよね?

 勘違いしてるかもしれないけど、私は領主じゃないよ?




 どどど~ん!

 ……思わずそんな効果音が頭の中で流れちゃったよ。

 だって、私が座らせられたのは、本来は王様さんが座るはずの豪華な椅子。

 当然、皆の顔が一望できる上座といわれる場所。

 国王のビスケールさんは、隣に座ってるけどね。

 イザベラちゃんは1番奥に座ってるね。

 多分、座る位置は、領主の位の高さじゃなくて、領地の大きさとか影響力の大きい順に、王様の近くになるんじゃないかな。

 だから、出来立てで、まだ何も力も無いサクヤ公国の領主のイザベラちゃんは最後方ってことだね。

 ……どうして私は1番トップの位置に居るんだろ?


「皆の者、魔物が多く出現している中、集まってくれたこと大儀である」


 ビスケールさんが言葉を発すると、皆が姿勢を正して一礼した。


「先に紹介しよう。ワシの隣に控えられておるお方は、現代に甦られし善の魔王、サクヤ様である。皆も知っているだろうが、我等が祖先は、その昔、悪の魔王との戦いで元初の善の魔王様と共に戦い、その後に善の魔王様からこの土地を頂いた。今の我々がこうしていられるのは、善の魔王様がいたからである。皆、その魔王様の計らいに背くことの無いように」


 私が知らなかったこの国の成り立ちがビスケールさんの口から語られたよ。

 ていうか、私は私。元初の魔王とか関係ないんだけど。そんな大昔の記憶もないし。

 でも、紹介されたからには挨拶しないとダメだよね?

 緊張するけど……ここは重い空気にならないように……。


「サクヤです♪ 小さいけどもうすぐ16歳です♪」

「「「……」」」


 ……。


 しまったぁ! 女子高生のノリでやっちゃったぁ!


「今のなしなし! よろちゅくおねがいちゅ……ます」


 うあぁぁぁ! 帰らせて~!

 皆がどうやって返したらいいか困ってるような、その配慮が滲み出た顔が逆に痛いよ!

 

「うおっほん! まあ、なんじゃ、こんな見た目ではあるが……」


 ビスケールさんがフォローに入ってくれた!

 これで一安心だよ。


「報告によると、ベラジュールの王都を一刻もかからず壊滅させたお力を持っておられる」


 ちょっと! それって私が悪者みたいな言い方だよ!

 あんまんさんと魔物との戦いで、少しは壊しちゃったけど……うん、少しだけ。

 壊滅させたんじゃなくて、救ったんだよ。


「まあ、信じられない者も居るだろうが、詳しいことはこの会議が終わってから、各自でお茶会などを開き、直接聞くのじゃな」


 お茶会ってなに? 私そんなのしたことないよ? それに直接聞けって……。


 結局、私に丸投げした後、ビスケールさんは手元に置かれた羊皮紙に書かれた資料を手に取って、皆の座ってる席に目を向けた。


「空席は5席じゃな……。報告によると、領地の作物の生産量が落ち財政状況が悪化、魔柱石から出現する魔物も増え、領地を離れられない状況らしいの」

「小作人の数が増えすぎでは? 税率を上げて、増えすぎた者達は徴兵し、魔柱石攻略に向かわせ、口減らしを……」


 ……どうしよう。トイレに行きたくなっちゃった。

 私が座ってる椅子は普段はビスケールさんが座ってる椅子だから、少し高いんだよね。足が床に全然届いてなくて、完全に浮いちゃってる状態。

 だからね、ちょっと勢いをつけて飛び降りて着地!


「お……お姉様? どうされたのですか? 落ち着いて下さいまし!」


 ほへ? 

 イザベラちゃんが、少しだけ恐怖を感じた様子で言ってくる。

 トイレに行きたいだけだから、イザベラちゃんが落ち着いて?

 ていうか、どうしてビスケールさんを含めた全員が真っ青な顔に?


「ギュラドール伯爵! 先ほどの発言はあくまで1つの案ですわよね! ね!」

「そ……その通りです! 魔柱石をどうにかしたいと思い、失言をしてしまったこと、平にご容赦を!」


 あれ? 怒って飛び降りたって思われてる?

 ……トイレに行ってきます。なんて言える雰囲気じゃなくなっちゃってるんだけど……。


「えっと……この国のやり方に口を出すつもりは無いけど(政治とか領地運営なんてさっぱり分かりません!)、犠牲者を出さないように皆で考えて! 私は少し頭を冷やしてくるからね」


 自然な流れで会議室を出た! 私って凄い! 天才!

 そしてトイレにダッシュ!




 口減らしってなんだろう?

 そんなことを考えながら、ドアを開けて再び会議室へ……。


「て、暗い!」


 部屋の明るさじゃなくて、みんなの雰囲気が。

 頭の上に岩でも乗せてるんじゃないかってほどに、苦痛に塗れて生気を失った顔をしているよ!


「私が居なかった5分くらいの間に何かあったの?」

「おお! サクヤちゃん。国王であるビスケールからお頼み申します。いい案が浮かばず、その聡明な知識の助言でお助けくだされ」

「えぇ~……」


 私の前まで来て崩れ落ちるように膝を着いて、両手を握られちゃったよ。

 なんか勘違いされちゃってるけど、私は怒ってるわけでもないし、聡明な知識なんてもってるわけないじゃん。

 言っておくけど、中学卒業までの学歴しか無いんだよ?

 て、皆の期待に満ちた目で見られている場で言えるわけ無いよね……。

 ここは必殺、口からでまかせで何とかなる作戦!


「えっとね。財政難ってことだったけど、どうしてそんな中で皆そんな高そうなキラキラした服を着てるのかな?」


 私なんて、そんな中でいつもの白い練習着に水色ホットパンツだよ? 1人だけ浮いちゃってて、場違い感が半端ないんですけど!


「皆がここに集まる会議なんかも無くしちゃったら? この王都に来るまでの費用も大事なお金だよね?」


 こんな会議が無くなったら、場違いな私まで呼ばれることは無くなるしね!

 よし! 勢いでたたみかけちゃえ!


「財政を維持するために税率を上げるってさ、目的が自分達の生活水準を維持するためって置き換わっちゃってるんじゃないの? 私が旅をしてるときはスープだけの食事なのに(それしか作れないだけなんだけど)、あなた達は豪勢な食事をしてるんでしょ?」


 羨ましいよ。料理してくれるシェフさんを雇って連れて行けないかな? あ、ダメだ。クックさんとモフモフさんが私の料理を食べれなくなって、やる気を無くして戦力外になっちゃう。


「えっと……ここまでは、私の愚痴だったね」

「いえ! そのようなことは! とても参考になるご意見でした!」


 え? 参考になったの? 今ので? ……どうしよう、この人達の基準がサッパリ分かんないよ。

 とにかく、今までの会話を頑張って纏めよう!


「えっと……富国強兵って言葉知ってる?」

「それはどのような?」


 ……どういう意味だっけ? 私も言葉は知ってても、意味までは知らないよ。


「国が豊かになれば兵士さんが強くなる?」


 うわ! 言葉そのままじゃん! 意味の説明になってないよ!


「税率を上げて、さらに最低限の食事をさせるんじゃなくて、税率を下げてでも豊かな生活環境を与えて……あとは……」

「言いたいことが分かりましたぞ! サクヤちゃん!」


 点と点が繋がった! ……どこで?


「十分な食事を供給し、筋力強化をさせるのじゃな!」


 え? その脳筋思考は何?


「皆! これより贅沢は捨てよ! 今着ている服を脱ぎ捨てよ! 小作人だろうと農民だろうと飢えさせてはならん! 徴兵しても飢えてては戦力にならん! 兵士にもこれからは素振りを剣からクワに持ち変えらせ、畑を耕すことを日課とさせよ!」

「おお! 確かに! クワを振るう動作は剣術に通づる物がありますな! ただ空を切る素振りよりも、畑を相手に振るったほうが得られるものが多いですぞ!」


 そうなの!?

 

「わし等が率先し、領民が一丸となることにより生産量が増え豊かになり、筋力もついて兵が強くなる! まさに富国強兵!」


 あ…あれ? なんか違うよ? 豊かになるってことは合ってるかもだけど、筋力って関係あったかな~?


 ねえ、もう1回だけ冷静になって話し合おう?

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