♪ (o゜▽゜)oo【RANGE;】!?
『取扱説明書はございますか?』
ロイドの言葉にあたりを見回す安藤。現在部屋は散らかっている。見つけた。
ロイドの言う取扱説明書とは業者が渡してきた、
「このうっすい説明書か。ふん、読むわけないだろ」
『読めよ』
ロイドの好感度が『お客様 (ハート』から急転直下している。
由々しき事態だ。
「今時の若者を舐めんな。触っているうちに覚える。これ基本。説明書なんてその日のうちに保証書ごと捨てるわ」
『捨てんなボケ』
――ノビタでは、なかったのか……
誠に由々しき事態だ。
『説明書は各ボタンの説明になっております。詳しい説明についてはスマホにて確認。または、私が口頭にて仕方なく説明させていただきますのでご安心ください』
「仕方なくなんだ」
『まずはお使いのスマホをお出しください。スマホを併用することで遠距離からリモコンとして使うことが可能です。また、レンジ内の食材の焼き加減を確認できる機能。焼きたい範囲の指定などがスマホにて調整可能となっております』
「俺ガラケーなんだけど」
『…………』
安藤は苦学生である。ガラパゴス携帯ガラケー月料金一,五〇〇円 万歳最高。
『スマホに替える予定はございませんか?』
「昨日ショップで三年契約」
『マジありえねー』
この人工知能と、この人工知能を開発した人間こそありえねーと思う安藤だった。
『今話した内容については忘れてください』
「OK。忘れた」
気を取り直して、
「俺ガラケーなんだけど」
『だっさ』
※ ※
『ノビタ、ノビタさん、ノビタ君』
――……。
『ノビタ君』
「アウトじゃね?」
――わざわざダミ声にしやがった。
電子レンジのロイドが来て、愈々安藤の寝るスペースが無くなった。
――漫画なんか読んでる場合じゃねぇ!
今は持ち込んだ荷物を真面目に片付けていた。
実家の安藤の部屋では六畳押入付きだった。今は四畳半押入無し。驚く程物が置けない。
電子レンジのロイドの上に雑誌を積んだら、
『頭に乗せんな!』
と怒られてしまった。
――チッ、レンジのくせにわかるのか。どっから頭だ。
※ ※
腹が減った。
新しい冷蔵庫の中には、常温に戻ってから再冷凍された食品。
例によって、例のごとく、買い置きしていた冷凍食品だ。たぬき。お湯で茹でれば鍋から食す。
すこし物足りなさを感じた。
「せっかくだから使ってみるか」
生卵を取り出した。電子レンジの前にどすんと座る。
『嫌な予感しかしない』
「ゆで卵をつくろう♪」
『やれやれ、ノビタ君。電子レンジで卵を調理するのはすごーく危険なことなんだ。非常識な君でもわかるように説明してあげるからよーく聞くんだよ』
「その口調がムカつくんだけど」
馬鹿にされている感が半端ない。
『電子レンジというのはね、マイクロ波を出して食品の中にある水分をぶるぶると震わせるんだ。その擦れあう摩擦熱が食品を温めているの。ここまではいいかい? ノビタ君』
「その口調を止してくれないか?」
『卵というものは、その水分質な内容物を硬い外殻と薄い皮膜によって覆っています。卵と水を鍋に入れて茹でる場合には卵は外側から徐々に温め固めていくため、大きな破裂は起こりません。ですが、電子レンジでは、内側から急激に温めるため熱膨張が起こります』
「つまりどうゆうこと?」
さっきの口調の方がわかりやすかった。わかりやすいとムカつく。わかりにくいと頭から抜ける。難しい選択だ。
『爆発します』
卵をセット。
『何を聞いていた』