魔術戦争
戦争という答え
「マナ教だけが魔獣研究に立ち遅れている現状を打開するには、魔術の研究を禁ずる規則を撤廃し、自分たちが魔術研究を行わなければならない」といのが開明派の主張であった。
しかしながら、”カルメスの宣告”において最終的に下された結論はまったく真逆のものだった。
「背教者の研究により我々が無知になろうとしているのなら、背教者の研究を止めればいい」
その”背教者”の筆頭として初めに目標とされたのは、着々と魔術の研究を進めていたマナ教標準派だった。
”カルメスの宣告”の採択と同時に、「教理を歪め広める悪魔の手先から教徒を守る」ため、標準派の「抜本的な浄化」を行うことが決められた。そしてそのために、各国に出兵を求めた。つまり事実上の宣戦布告である。
「協力」という言葉を用いてはいるが、信仰の証明のために出兵せよということであり、拒否は波紋を意味していた。各国には出兵するしか選択肢はなかった。
戦争の結末
結論から言えば標準派の一方的な勝利に終わった、この魔術戦争と名付けられた戦いは、歴史が記録され始めてから初めて魔術が大規模かつ組織的に行使された戦いとなった。
士気は低いとはいえ圧倒的な軍勢を揃えたマナ教に対し、標準派は禁忌中の禁忌を犯した。人を殺すために魔術を使ったのだ。
マナ教は神の祝福に身を焼かれ、何一つ抵抗することもできないまま潰走した。権威を完全に失ったマナ教は、それから数年のうちに完全に消滅することとなる。
マナ教の消滅とともに、世界を縛っていたルールが消えた。魔術はついにいましめから解かれた。人への魔術の行使によって掴んだ勝利によって。
そしてマナ教により集められ魔術戦争に連れていかれていたすべての国が、戦争における魔術の圧倒的な優位性を目の当たりにした。
各国は相次いで軍用魔術の研究所を公式に創設した。もはや彼をとがめるものなどいなかった。