魔女は紅穹の下で舞う~ Opposite World
全てを受け入れる幻想郷に不死なんてあるものか。
生を受け入れ死を受け入れる。
抗った3人以外はいつか死ぬ筈だ。
この戦いはそれを早めるだけなかもしれない。
死までの短縮ルートでしかないかもしれない。
...そうではないかもしれない。
何故私たちは戦っているのか?
殺すためだけなのか?もうわからない。
いいや。殺そう。目の前に居る二人を殺せば何とかなるんじゃない?
考えるのは後だ。殺そう。
「さてまずは私から行かせて貰うわ!!遍く光を呑み串刺しにしてあげるわ」
レミリアは数十年ぶりにグングニルを解禁した。
あの時だってそうだった。紅い霧の下、紅白の巫女と戦った。
彼女は強く、仕方なく霧を晴らすしかなかった。
「あの時と同じようには行かせないわ...過去の記憶...さぁ全てを貫きなさい!」
アリスを目掛けて紅い蝙蝠は突撃をしてきた。
眩い槍はアリスを確かに貫いた。
「あら動かないのかしら?全く。降参なんて受け付けないのよ?」
「お姉様ったらいきなり本気出し過ぎよ?もう少し遊んでやってもいいんじゃない?」
紅い霧が晴れた後、妹のフランドールも紅白の巫女と一戦交えた。
ただそれは純粋な遊びであり、運命を決めるレミリアにとっては羨ましくもなかった。
「フラン?相手は多少なり侮れないのよ?でもこの七色の人形遣いさんは弱過ぎた様ね」
「腑抜けね。ところで白黒の魔法使いさんもいないんだけど」
「あれだけ威勢がよかったのに。口だけかしら」
それから数分経った。
二人は現れなかった。
「ちょっと紅茶でも飲んでくるわ」
「私も」
それから紅茶を淹れるまで数分経った。
二人は現れなかった。
「それじゃ頂く...」
レミリアが紅茶の入ったティーカップを口に運ぼうとした瞬間
そのティーカップは無残に割れた。
破片が周囲に漂う。
「まさか...!」
勘付いた時には遅かった。
その破片はレミリアの袖を破いた。
「私を殺せたと思って?残念ね」
「嘘でしょ?私は貴女をグングニルで貫いた筈よ?」
「確かにね。でも私のこと忘れてない?まさか私が幻想の七つ道具の持ち主であること」
幻想の七つ道具。
幻想郷の秩序を護るためにある道具だ。
博麗の巫女だけではもう持たないと思われた時紫が一石を投じた。
所持者は7人。全て紫が無意識のままに埋め込み当の本人には気付かない。
気付いてるのは、霊夢と魔理沙とアリスぐらいだろう。
「そうよ...!貴女はその一人だから殺すんだったわ!」
「意味もない戦いに血なんて出したくないの。貴女、戦闘前に忘れてたでしょ?」
「えぇ。忘れてたわ。これで殺意がどんどん湧いてくる!」
「私もお姉様と同じように鼓動してるわ...」
「はぁ...これだから戦闘狂は。でもいいわ」
「「二人で行けば蘇生なんて心配なしね!さあ死になさい!独りで!」」
この一瞬。
甦るような記憶。アリスの目の前に迫った吸血鬼らは殺すことにしか目がなくなっている。
避けるなんて知らない。考えることなんてもってのほかだ。
「その隙、頂くぜ。魔法の剣...マジカルスターダストレヴァリエ!」
その一閃は吸血鬼らを薙いだ。
「だから今さっきアリスが忠告しただろ。目の前をよく見ろって」
吸血鬼らは地に墜ちていた。
「まさか魔理沙も不意を討つなんてね」
「見よう見真似だ。あいつらが戦闘狂で良かったわ」
踠のが見えた。
流石にあれだけじゃ死なない。
「魔理沙?あいつらも真似をしたいのかしら?」
「私だってのんびり話してるわけじゃないんだがな。ほれっと。これでokだ」
「その一瞬、逃がさないわよ!」
フランドールがレーヴァテインを振るった。
しかし二人は動かなった。
「さて。お仕置きだ。リアクティブボーダー・ゴールドインフェルノ作動!」
周囲に忽ち爆炎が咲いた。
激しく連鎖していき二人の頭上を爆破をしてゆく。
「どうだい結界は。初めてか?」
結界を張りその上に爆発物をばら撒いた。
今回は魔法の爆薬を使用したが。
爆発の後の煙が棚引く。
結界は爆破の勢いで消えている。
その時だ。頭上から紅い蝙蝠が頭から刺してきたのは。
「うふふ、少し注意力が足りなかったんじゃない?」
アリスは地に伏した。
血が魔理沙の足に届くまでそんなに時間はかからなかった。
「じゃあ私も」
続け様に呆けていた魔理沙にレーヴァテインが突き刺さる。
魔理沙は地に伏した。
血が混じるまで時間など無意味だった。
それから静かな時間が流れた。
それを下瞰していた。
「風が収まったわね...」
「いつまで此処に居ようかしら」
床は紅く染め上げられていた。
いつしか乾き血を求めていた。
「紅いわね...」
「えぇ...」
「この二人は死んだの?」
「多分そうよ...」
「お姉様?なぜ泣いてるの?」
「泣いて何か...いな...いわ...よ」
涙が滴った。
一滴の涙でさえ血は潤った。
グングニルに血が乾ききってるのを見た。
レーヴァテインにもこびり付いている。
「殺したのね...」
その声は響かなかった。
「お姉様、一つ聞いて良いかしら?」
「えぇ。なに?」
「なんで二人を殺したの?理由は有ったの?」
「あったわよ」
「じゃあなんで立ち竦んでるの?涙まで流して...」
一辺の風がフランドールの言葉を遮った。
レミリアは俯いた時魔理沙の手とアリスの手が少し動いたように見えた。
まさか風のせいではないだろう、と思うが。
「ねえフラン。今どんな気持ち?」
「お姉様の目的が果たせて清々しいよ」
快闊であった。
妹を殺しに巻き込んでしまうなんて。
「レミ...リ...」
掠れた声が聞こえた。
「レミ.......ア...」
「まだ生きてるのかしら?ならば止めを刺すのみよ」
言葉こそ威勢があった。
しかしその声は震えていた。
レミリアは数滴の涙を零し
フランと共に館へと戻った。
声の主がどちらか分からなかった。
服に着いた血を血で洗っていた。
フランが寝た後館の外を見てみた。
しかしそこには有るべき死体がなかった。
血に染まった世界がぽつりとあっただけだ。
「死体運びでも来たのかしら」
紅い霧を晴らした。
もう必要ない。
星々が浮かんでいる。
レミリアは薄らと滲む傷に涙を付けた。
それはすぐに滲みた。
結果として無意味な戦いになってしまった。
フランは考えそうにもないが何故か勘ぐってしまう。
パチュリーと二人は仲好く魔法研究に没頭していたときもあった。
パチュリーは親友だ
今回の戦いは親友の友達を殺したみたいなもんだ。
レミリアは暫く俯いた。
「ごめんね、フランにパチェに咲夜....」
最期の力をグングニルに込め刺した。
とうとうレミリアは朱く濡れた床に伏した。




