紅き月に霧雨の降る
夜の紅い月。
もうあの形態の彼女には弱点はないと古来から言われていた。畏怖されてきた。
しかしそれはどうだろうか。
天は恵みの雨を降らす。
全く。こんな夜の雨の日によく来るのぜ。
お前らから見たらガラクタばっかなのに...
え?前の話の続きが聞きたいって?
紅茶でも入れてくるからそこのソファーにでも腰掛けるのぜ。
そういえばあの日も雨だったな...今日ほどではないがな。
第二章~スカーレット・レイン
闇は深くなっていた。
二人も同じく打点がなくなっている。
「あら?それだけかしら。幻想郷での魔法使いといえば貴女達なんだけどねぇ...」
夜の王、レミリア・スカーレットは蔑むよう不敵な笑みを浮かべていた。
「弾幕でダメならあれを使うしかないのかしら。解封・the Grimoire of alice」
アリスの懐より出でた光はレミリアの前の空気を一閃した。
子供のころ無機質な心で魔界にて習得した魔法。
人間界に溶け込むようになっては強力すぎて封印をしていた。
あくまでも私は人形遣い。そう言い聞かせていた。
「魔界で修業したのはアリスだけじゃないぜ...私もあの時魅魔様から教わった禁術がある...人間界では使うなとは言われたがこればかりはしょうがないぜ...パンデモニックプラネット!!」
アリスとほぼ同期である魔理沙もまた魔法修業を積んでいた。
人の魔法を見よう見真似で何度も練習する度+αな魔法も使えるようなっていた。
その人の中にはアリスも入っていた。今でこそ人形遣いを名乗るがれっきとした魔法使い。
春に異変が起き偶々出会ったことも運命だろう。魔界修業の時のあの魔法を魔理沙は思い出した。
「もう貴女は引っかかってるわよ。私たちの魔法の罠に。気付けないのかしら?解は一つだと言うのに」
「口だけは達者ね...その口ももうすぐ封じてあげるわ。禁忌に触れた悪魔の槍にて無限の闇の底へ堕ちろ!神槍「スピア・ザ・グングニル」!」
「今さっきアリスがいったのが分からないのか?お前はもう罠にはまってんだよ。達者なのはあんたじゃないのか?」
「ちょっと紅い月を見過ぎて狂ったのかしら?罠なんてないじゃない...まさか威かせようと?ばっかじゃな.....」
一瞬。レミリアが隙を見せた一瞬が唯一の打点であった。
「だから言ったろ。残念だが私たちの勝ちだ。永遠にさようならだぜ。
魔砲「ファイナルマスタースパーク」!!」
魔理沙が解禁したパンデモニックプラネットは魔法の威力を飛躍的に高めた。
そして散りばめられた魔法効果を持つ石は魔法を反射させ四方八方にオーバーキルな魔法を飛ばした。
「流石魔理沙ね...私もあの魔法使おうかしら...なんてね
さて後は魔理沙に任してもいいんだけど...」
辺り一面に北風のような冷風が吹き荒んだ。
感じた事のない冷風に二人は身震いした。
ここは何処なのか。辺り一面はなにも無くただ蒼い空間が広がるだけだった。
「アリス、此処がどこだか分かるか?私には多少と察しがついたが」
「勿論よ。それより早く戻りましょう。こんな穢れの無い場所に穢れが入ったらすぐ見つかるわ。生き物がそもそもいないんだから」
「といってもどうやって戻るんだ?」
「というか私たちが何故ここに居るのよ。地上に居たじゃない。しかもレミリアの姿が見えないし」
「.....静かな海に穢れが二つ...貴女達をここへ連れてきたのは私です」
「狐?感じた事のない力を帯びているようだが....」
「私の名前は純狐。今は訳あって月の都に来ている」
「何故ここに連れてきたのかしら?私たちは地上の民よ」
「だから連れてきたのです。地上の民は穢れの象徴。貴女達が居れば月の民は何れここに来る。そして私は作戦を遂行する」
「私たちを利用しようと?成程ね。ただ私たちは今宿敵と戦っているところだったの。 地上に返して」
「私も同じです。宿敵が居る。それと同じ」
「へぇ...って私たち巻き添えじゃない」
「残念ね...私の敵の味方は貴女達の敵よ?」
「共闘してほしいなら素直に言えばいいのに...」
月はいつものように白かった。
地球は青かった。
しかし純狐の背後はぼやけて見えていた。
憎しみの純化した存在。唐突なる月での征討作戦が今始まろうとしていた。




