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その者、音に聞く益荒男の如き乙女なり。  作者: ぶるどっく
第二章 出会うは強き意志の舎弟なり。

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旅立ちし世界は広大なり。


 この世界にはいくつかの大陸と大小様々な国があり、争い有っている国もあれば、仲の良い国もあった。


 その広大な世界で生きる命は人間や動物だけでなく、獣人もいればエルフなど亜人と呼ばれる者達もいる。


 ……そして、魔物と呼ばれる命あるものを脅かす存在、古より人と相容れないと考えられている魔族と呼ばれる者達もいたのであった。



 そんな数多の命が息づき、美しくも危険に満ちた世界。


 数多の欲望と悪意、無欲と善意が巡る世界。


 血で血を洗う争いを繰り返す国、笑顔が溢れる平穏な国のある世界。


 善と悪、太陽と月、光と闇…………相反する現実と夢に満ちた世界。


 だが、それは心を持つ生き物が存在するどの世界でも同じことなのかもしれない。


 そんな世界にある鳥籠のような狭い村から飛び出した一人の若者がいた。


 若者が世界に抱くのは希望か、はたまた絶望か……全ては神のみぞ知る。



※※※※※※※※※※



 ロキソーナと呼ばれる大陸にある幾つかの王国の中でも、大国と呼ばれる“エレンファール王国”。


 そのエレンファール王国の王都よりも、国境の方が遥かに近い街道とは名ばかりの道ををガラガラと車輪を弾ませながら進む数台の馬車の姿が有った。


 それは何処にでもいる普通の商人が幾人かの護衛を雇って荷物を運んでいる馬車である。


 馬車が向かうのは大きな森を超えた先にある国境に近いこの地方では一番大きな都市である“エルネオア”と呼ばれる城塞都市だった。


 護衛である冒険者の一人が手綱を握り、馬車を引く馬を操って盗賊などが出没すると噂の森を一刻も早く抜けようと鞭を振る。


「……ああん?」

「どうした?」


 馭者台に座る仲間の訝しげな声に、荷台にいた仲間が聞き咎めて声を掛ける。


「盗賊だけじゃなく、魔物もいるこの森を一人で歩くバカ野郎があそこにいるからよぉ……」

「……どんな命知らずだよ、そいつはっ!」

「けっ! どうせ、自分の実力に自惚れてる野郎か、魔物の恐ろしさも知らねえ馬鹿たれだろうよ。」

 

 バカな野郎だ、と冒険者二人は嗤って馬車がその男の横を過ぎる時にバカな面を拝んでやれと笑い合う。


「…………ああ、馬車か……」


 しかし、そんな冒険者二人の会話が聞こえたのか、それとも馬車の車輪の音に気が付いたのか、そのバカ野郎と呼ばれた男が背後を振り向いた。


 その鋭く、殺気に満ちた眼光をを見た冒険者二人は己の無残に殺される姿を想像してしまう。


「(…………殺されるっっ?!)」

「(……ひっ……母ちゃんっ助けてっっ!!)」


 己の死を予感した冒険者は二人は他にもいる仲間へ助けを求める声を上げることすら出来ず、蛇に睨まれた蛙のように脂汗をダラダラと流しながら固まってしまった。


 その男の存在は、それなりに経験を積んだ二人の冒険者が対峙したどんな魔物よりも危険な生き物であると直感が告げたのだ。


 獲物を狙う猛禽類のように鋭く、気迫と強すぎる意志の宿った苛烈で獰猛な印象を受ける双眸。


 漆黒の衣装を身に纏い歴戦の猛者を思わせるような凶悪な風格漂う……どこか悪役めいたその容貌。


 全身が鎧のような筋肉に包まれた鋼の如き強靱で大柄な体躯。


 己の野望のために覚悟を決め、弱者も強者も、老若男女関係なく数多の命を奪っていそうな印象を受けずにはいられない人物だった。


 そんな天災の如き人物と出会ってしまった己の不運を嘆きながら冒険者二人が死を覚悟する。


 ……だが、冒険者二人の予想に反して馬車は特に何事もなく無事にその男の横を通過した。


「…………い、生きてる……ぐすっっ……神様、ありがとう……」

「…………おかあちゃん……ずびっっ……」


 緊張感から解放された男達はひたすらに命があることを喜んだのだった……。


 


「……いつかは馬車……いえ、せめて馬が欲しいですね。 でも、ちっちゃい子だと私を乗せるとそれだけで疲れちゃって可哀想ですし……大きな馬は高いし……困っちゃいますね。」


 今しがた通り過ぎた馬車に乗っていた冒険者二人が、己の姿を見て命を危機を感じていたなど露にも思っていないアンジェは、羨ましいですね……と一人のほほんと呟いているのだった。



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