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その者、音に聞く益荒男の如き乙女なり。  作者: ぶるどっく
第二章 出会うは強き意志の舎弟なり。
14/43

共に歩くは心身を研磨する少年なり。

 いつも読んで下さりありがとうございます。

 今回でアンジェが村を旅立ってからの第一幕が終了となりますが、第二幕も続けていきたいと思っていますのでどうぞよろしくお願いします。


 城塞都市“エルネオア”へと続く深い森の中の街道とも言えない道を、小柄な少年と大柄な人物が歩き続けていた。


「おい、ランス。 本当に大丈夫か?」

「……はっ、はあ……アンジェさん、大丈夫っす! 僕は強くなるためにも泣き言は言わないって決めたっすから!!」


 肩で息をしながら歩き続けるランスは、アンジェの心配する視線に力強く応える。


「はあっ……はっ……アンジェさんこそ、僕は大丈夫っすから普通に歩いてっ……下さいっす!」


 汗を滲ませ、荒い息を吐きながら歩き続けるランスだったが、明らかに歩く速さは落ちている。

 

 その上、二人のコンパスの違いは明らかでアンジェが一歩進めば、ランスは二、三歩進まねばならないのだ。


「お前に合わせてる訳じゃねえよ。 たまたま、俺がゆっくりと歩きたい気分なだけだ。」


 心配無用だ、と笑うアンジェにランスも笑顔を浮かべる。


 たった一夜明けただけのはずなのに、明らかに違うランスの生き生きとした瞳の輝きと、高い(こころざし)を掲げ覚悟を決めた心。


 眩しいほどに輝くランスの姿にアンジェは微かに口角を上げる。


「(故郷の空の下にいるお父さん、お母さん、グウェン、クリス。 そして、村の皆さん。

 盗賊退治という恐ろしい事件に巻き込まれてしまいましたが、私は元気でやっています。……クリス以外にも、普通に話してくれる友人?……と言えるかは分かりませんが、道中の話し相手が出来ました。

 ……もしも、友人になれましたら是非紹介したいと思います。)」


 アンジェは森の木々の枝の隙間から見える青空を見上げ、心の中で故郷にいる家族へと語りかける。


 まるで、アンジェの心の声を届けるかのように真っ白な鳥が青空へと飛び立ち、故郷の方角へと飛んでいくのだった。



※※※※※※※※※※



 濃淡様々な灰色の切り出されて形を整えられた大きな石が(うずたか)く積み重なった重厚な壁に囲まれた城塞都市“エルネオア”。


 城壁の中心に(そび)え立つ頑強な作りの城は要塞と言うに相応しい佇まいを持っており、城を中心に栄える街は活気に満ちていた。 

 

 そんな塀に囲まれた都市の一角に、女性の横顔と羽根を模した紋章が施された白い建物が有る。


 それは、この大陸中で信仰されているとある宗教の象徴であった。


 白い建物、教会の中で一人の黄金の髪を輝かせた十代後半の少女が静かに祈りを捧げ続けている姿が有り、紋章を模したステンドグラスから降り注ぐ七色の光を浴びて、何処か神聖な一服の絵画のような光景だった。


「……この世界を創造せし、慈愛に満ちた女神様。 神託に従い、私は貴女様の加護を受けし英雄に会いに行こうと思います。」


 強い決意を秘めたその横顔は、凛とした美しさを放っている。


「……私達の旅路に幸多からんことを。」


 祈りの言葉を捧げ終わった少女は黄金の髪を風に(なび)かせ、輝く碧色の瞳と清楚な修道服にその身を包み、まだ見ぬ英雄と出会うために歩き出すのだった。




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