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その者、音に聞く益荒男の如き乙女なり。  作者: ぶるどっく
序章~巡りし命は生誕す~
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その者、益荒男の如き容姿なり。


 最期の願いと思って、少しだけ私の話しを聞いて貰えないでしょうか?


 私は、地球という青い星の小さな日本という島国に生まれました。

 当時は、所謂花の女子高生だった私は幼い頃に派出所勤務の警察官である父に勧められて始めた剣術が好きになりずっと続けていたことや、歴史や時代小説を好んでいた事以外は特に目立つ特徴もない平凡な人間でした。


 そう……谷が無ければ、山も無い、そんな極々平凡な毎日が私の人生だったんです。


 ……皆様、気が付きました?……悲しいことに過去形なのです。


 平凡なはずの私の人生はさながらジェットコースターに乗ったかのように、ある日唐突に急展開を迎えたのです……。


「えへっ、失敗しちった! ごっめーん!!」


 ……この目の前にいるイラッとしかしない糞神のせいで。


「んもうっっ! 女の子が糞なんて言ったらダメだぞ!」 


 ……すみません、謝るのでぶん殴らせてください。


「えー、痛いのやだあ! あ、そうだった!

 今回平凡すぎて笑えない貴女の人生を私のくしゃみの所為で、奪っちゃった償い? として新しい人生をプレゼントするために呼んだのよぉ。」


 ……今すぐあんたの所為でプチトマトのように潰れた私の死因である事故を無かったことにして生き返らせて下さい。


「あぁ、それは無理無理。 神様の規定で死んだ人間は元の世界に生き返らせちゃダメな事になってるの。

 だから、貴女は私が守護する世界の一つに生き返る事になるわ! あはっ、ディユーちゃん頑張っちゃうぞ!」


 ……生き返らなくて良いので、鼻血が滝のように流れるように顔面ボコボコになるまで殴らせて下さい。


「もーう、さっきからそればっかり! ディユーちゃんが可愛いからって嫉妬は良く無いぞ。」


 ……天使のコスプレしたでぶった、バーコードなおっさんの何処に可愛らしさが有るかは知りませんけれど、少なくとも私は殺意しか感じません。


「あ、もしかして貴女ツンデレっ?! やだあ、初めて見たあ!!」


  ……もうどうでも良いので、速く転生させて下さい。 出来れば、次の世界では普通に最後まで生きられるようにして頂ければ良いです。


「あらら、それだけで良いの? 欲がないなんて素敵! もう、ディユーちゃん大サービスしちゃうっっ!!」


  ……はっ?!ちょ、まっ……


「いってらしゃーい!!」



※※※※※※※※※※



 とある王国の王都より遥かに離れた場所にある村に、一組の年若い夫婦がいた。

 

 その夫婦の間には待望の新たな命が授かり、育まれ……そして、誕生の時を迎えていたのである。


「ああ! どうか……どうか、神様! 俺の妻と子供をお守り下さい!!」


 落ち着かない様子で産気づいた妻、リーシャのいる部屋から閉め出されている夫、マークはひたすら神へと祈りを捧げ続ける。


 ……その時、リーシャのいる部屋の中から元気な赤子の泣き声が響き渡り、続いて産婆の引き攣った悲鳴が木霊した。


「リーシャっっ?!」


 赤子の泣き声だけならば未だしも、続いて木霊した産婆の悲鳴に驚いたマークは堪らずリーシャのいる部屋の扉を力一杯開け放つ。


「リーシャっ、大丈夫か!」

「……マーク?」


 部屋の中に慌てて入ってきたマークの姿を初産で疲労した様子ではあったが、おっとりとした見上げたリーシャはコテンッと首を傾げてしまう。


「……オババ様ったら、この子の顔を見たら驚いて悲鳴を上げて倒れてしまったの。……こんなにも凛々しくて、将来が楽しみな子なのに。」

「……凛々しい……?」


 心底不思議そうに首を傾げる愛する妻の姿に、マークも疑問符を浮かべてしまう。


「うふふ。 そうなの、あなたに負けないくらいに凛々しいのよ。」

 

 微笑みながらリーシャは腕に抱き上げた赤子の顔がマークへと見えるように、そっと少しだけ腕を傾ける。


「…………?!」


 リーシャが抱いている赤子の顔を見たマークは石で出来た彫像のように固まってしまう。


 愛する素朴だが、可愛らしい顔立ちの妻の腕の中にいた二人の愛の結晶である赤子は、何とも凛々しすぎる益荒男の如き顔立ちを生まれながらに宿していたのだった。


「……あら? この子、男の子だと思っていたのだけれど、女の子だわ。……うふふ、男の子だったら凛々しい顔立ちに似合う“グウェン”という名前にしようかと思ったけれど、女の子なら可愛い方が良いわね。

 ……私達の可愛い天使、貴女の名前は“アンジェ”がいいわ。」


 おっとりと慈愛に満ちた笑みをリーシェは、石のように固まったマークと、驚き昏倒した産婆のことを気にすることなく愛しさに満ちた眼差しをアンジェへと贈り続けるのだった。



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