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黒い犬  作者: 桑 司
1/1

鼠進行

まぁ、自分が単に犬が好きというのが書いた理由なんです。

犬は人に化けたりしますが、イケメンにはならないのであしからず。

ヒーローというか、ダークヒーロー的なものにしていきたいです。

--私は逃げている。奴等から。暗闇を全力で走っている。

運動部に入っていない私の体力は、もう限界を迎えているはずだった。髪は乱れ、額に汗をかき、足の太もも辺りが痛い。

それでも、走るしかなかった。

奴等は大群で私を追ってきている。

捕まれば私は食べられる、そう、きっと食べられる。追ってきている奴等から伝わってくるのは、私を食べようとする気持しか伝わってこない。


あれは私の知っている「鼠」ではない。

だから逃げるのよ美奈。必死で自分に言い聞かせた。


小さい頃、弟と留守番している時に鼠は家に現れた。

母が帰ってくるまで、私と弟は絵本に出てくる鼠と同じものだと思い、捕まえようとした。家中を逃げる鼠を追いかけ回した。小さい体を駆使してタンスの下に逃げ込んだりしてなかなか捕まえられなかったが、私と弟は夢中になって追いかけ回した。

私の中では鼠はチーズを食べる小さな生き物としか思っていなかった、捕まえたら絵本の中のやつと同じように喋ってくれるとも思っていた。


しかし、今、後ろから追ってきている奴等は、どう考えたって違う。

私の知っている鼠の体はあんなに大きくない。あれはどう見たってコーギーとか中型犬位ある。それに目が真っ赤に光っている、私の知っている鼠は目は光らない。

そんな奴等が10匹は私を追いかけている。

チューチューという表現で絵本に書かれていた泣き声じゃなく、か細い悲鳴にも聞こえる声と、大群の足音が道路に響いていた。


あれを見たのは、つい先程のことだった。


いつも通りの学校の帰り道、駅からいつも歩いて帰っている私は今日も普通にいつもの道を歩いていた。

歩いていると前から近所のお婆ちゃんが、飼っている柴犬を散歩させていた、

私はお婆ちゃんと柴犬に挨拶をした。お婆ちゃんは挨拶を返してくれ、今自分が歩いてきた方向に歩き始めた。

私は、逆にお婆ちゃんが今来た道を歩き始めた。


直後の事だった、お婆ちゃんの悲鳴と犬の鳴き声が聞こえた、振り返ると先程自分が立っていたマンホールが空いていた。お婆ちゃんと犬の姿はなく、変わりにマンホールの手前に人ほど大きい黒い塊と、小さな黒い塊があった。唖然として見ていると、黒い塊の一部が剥がれ中から白い何かが見えた。

すぐに理解できた


骨だった。


そして塊は鼠達だった。


鼠達は、老婆と犬を食べ終わると、光っている赤い目をこちらに向けた。よく見ると、一匹、二匹と赤い目を光らせ、マンホールからさらに出てきていた。


「ひっ!」


私が声を挙げると、一匹が私に飛びかかってきた。私は持っている鞄でそいつを殴った。殴ったというより、振り回した鞄がそいつに当たった。そいつは、吹っ飛び後ろの鼠達の群れに当たった。すると鼠達は、吹っ飛ばされた鼠に集り、先程の老婆と犬のようにあっというまに、骨にしてしまった。


私は、その光景のあまりの惨さに悲鳴をあげ、走った。


何処に行けばよいかわからなかったが、ただ鼠達から逃げる為に私は走った。後ろからは、鼠を見たからあがったであろう悲鳴とその鼠に襲われているからあがった悲鳴で溢れていた。それでも私は振り返えらなかった。


走りついた先は、家の近くにある公園だった。

大きな銀杏が中心に生えている、そこに美奈は駆け寄ると辺りを見回した。辺りはすっかり暗くなり、公園に生える木々が不気味に風になびいていた。

「もう・・・・・追ってこないのかな?」

そう、呟いた。

しかし、期待はすぐに裏切られた。入ってきた公園の入り口から、先程の倍の数の鼠が入ってきて、銀杏の下にいた美奈を囲った。

(あ・・・・・、もう無理なんだ)

美奈は木にもたれ掛かって下をうつむいた。

美奈は頭の中がパンクしそうだった。

もう嫌だ、走れないし、走ろうとしようにも逃げ場がない。

いろんな諦めが絶望になった。そしてその絶望が涙となって美奈の頬を伝った。

(神様・・・・・恨むよ?)


鼠達の中から一際巨大な鼠が周りの鼠をどけて前に出てきた。きっとリーダーとかに違いない、そう思って、諦め、ただそいつを呆然と見ているに、鼠は飛びかかった。





グシャリ



何かを潰した音が美奈の耳に聞こえた。

きっと私は死んだんだ、美奈はそう思っていた。

しかし、痛みがない。


そっと目を開けると、美奈の前に立ちはだかるように巨大な犬が先程飛びかかってきた鼠を地面にねじ伏せ立っていた。

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