恋愛ストラップ
わたしの名前は蘇田瀬里葉。今、心友の日野原明日香と一緒に帰ってるの。いつも、途中にある神社でお喋りをするのが一番の楽しみ。
「瀬里、好きな人出来た?」
「明日香、しつこいなwそれ、昨日も聞かなかったっけ?」
わたしはいつも明日香に「好きな人いる?」と、聞かれる。わたしはいつも、
「いないよーw」
と、答えるのが当たり前になっていた。
その時、
チロリロリロ♪チロリロリロ♪
明日香の携帯が鳴った。
「もしもし〜?あ、たっくん?」
たっくん(伊藤達也)は明日香の彼氏。
「明日っち?今どこ?」
「今?いつもの神社だよん〜」
「そか〜、て事は隣に瀬里ちゃんいるでしょ?」
「いないよ〜w」
「神社ってことは絶対にいるよw」
「いないってw」
「本当に?」
「本当だよw」
「あ、ごめん…切るね…横の男子がうるさくてww」
「そか、じゃ、バイバイ!」
明日香がどうしてわたしのこと「いないよ」って言ったのかは後ほど分かるとして、
「明日香は羨ましいよ…」
「ん?なんで?」
「彼氏はいるし、モテるし」
明日香は、男子にとって超理想の女子。モデルもやってるし、男女問わず超人気者。それに比べて、わたしはダメダメ…。頭は悪いし、提出物も出せない…。友達も少ないし…。好きな人もいないから、恋バナに参加することも出来ない。ま、性格はいいとして。
「ごめん!わたし、そろそろ帰らなきゃ…」
時計を見る。
17:30
「わたしも帰るよ」
それにしても、今日もたくさん話せることができてよかった。学校ではあまり話せないから。
「瀬里、バイバイ!」
「バイバイ!」
今日も楽しかった。明日香に貰ったストラップを撫でようとしたが、
「嘘… ストラップが無い…」
2つ貰ったはずのストラップが、1つ無くなっていたのだ。今、カバンに付いているストラップは友情の証のストラップ。無くなったのは、恋愛のストラップだった。
「どうしよう…明日香から貰った、大切なストラップ…」
わたしは来た道を戻ってストラップを探した。だけど、ストラップは見つからなかった…。もう、諦めようと思ったわたしは疲れたので、神社の階段のところに腰掛けることにした。
「恋愛のストラップ…好きな人が見つかるストラップか…」
「好きな人出来た?」
明日香の明るい声が遠い耳の奥から聞こえてきた。わたしは、小声で願い事を言った。
「好きな人が出来ますように…」
すると、突然凄い風が吹いてきた。
「うわ‼︎」
わたしは飛ばされそうになった。
すると、わたしの背後から誰かの声がした。
「これ、君のストラップ?」
そこに立っていたのは、超かっこいい美少年だった。
「そのストラップ…」
「君のだよね?」
「う、うん…」
こんなかっこいい男子と話せるなんて。
「あ、ありがとう…ございます…」
「いえいえ、そういえば君、願い事言ってたよね?」
え?なんで知ってるの?誰にも聞こえないように言ったのに!
「僕がその願い事を叶えてあげよう!ってことで、今日から瀬里葉の家に泊めさせてもらうよw」
笑顔が凄くかっこいい。わたしはその笑顔に見惚れてつい頷いてしまった。てか、その前になんでわたしの名前知ってるの⁉︎
「ついて来て大丈夫かな?」
「大丈夫!僕の力でなんとかなるさ!」
なんとかって…。そして、とうとう家に着いてしまった。
「ただいまー」
「ただいまー」
「2人ともおかえりー」
2人ともって。この男の子は本当に凄い力を持っているとわたしは知った。
「夕飯の支度してあるから、早く食べてね」
「は、はーい」
そういえば、まだ名前聞いてなかった。
「え、えと、名前は?」
「大神だよw」
大神くんか…。名前もかっこいい。
「で、大神くんはいつまでわたしの家にいるの?」
「願い事が叶うまで僕は瀬里葉の側にいるよw」
願い事が、叶うまで⁉︎しかも、側に⁉︎
「好きな人が出来ますようにっていう願い事w瀬里葉って可愛いね!」
「か、か、か、可愛い⁉︎」
わたしは大声を出した。そして、首をぶんぶん振った。
「可愛くないよ!」
わたしは真っ赤になって言った。
「瀬里葉、林檎みたいw」
でも、こうして話すのも、楽しいかも。
翌日
「瀬里葉!起きて!学校に遅刻するわよ!」
お母さんがそう叫ぶ。
「瀬里葉、おはよう」
「おはよう…って、その制服!」
大神が着ていた制服は、わたしが通っている中学校の制服だった。
「どこで買ったの⁉︎その制服!」
「どう?似合ってる?全部僕の力でやったんだ」
凄すぎる。この際だから、一度聞いてみたかったことを大神に聞いてみることにした。
「大神くんは何者なの?」
大神は答えた。
「神だよ」
と。
「神…」
だから、あんな凄すぎる力があったんだ。神だったんだ。
「早く学校に行こう!遅刻するよw」
「あ、うん」
そう言ってわたしの手を引っ張った。
学校
「皆さんおはようございます。いきなりですが、ホームルームを始めます。さ、入って」
大神が教室に入るとクラスがザワザワし始めた。
「大神です。よろしくお願いします。」
クラスの女子たちが騒ぎ出す。
「瀬里、今日の朝大神くんと登校してきたでしょ?」
「げっ!なんでそれを⁉︎」
「わたし、後ろからこっそり付いてきたのww」
わたしは真っ赤になってしまってうつむいた。
「大神くんの席は愛美さんの隣ね」
相田愛美。クラスで二番目に可愛い女子。背は低いが、とても親しみやすい性格。
「大神くん、わたし愛美っていうの。よろしくね!」
「よろしくねww」
そんなやりとりをを見ていたわたしは、なんだか胸の奥が痛くなるのを感じた。
下校
「瀬里!一緒に帰ろう!」
「あ、うん」
帰る頃にはすっかり気分が沈んでいた。
「どうしたの?」
「なんでもないよ」
大神くんは確かにかっこいい。クラスの女子たちだって、騒ぐほど。しかも、二番目に可愛い女子の隣。考えれば考えるほど気分は更に暗くなる。わたしの学校は可愛い子ばかり、男子はかっこいい人ばかり、その中で女子があんなに騒ぐのはとにかく超かっこいい美少年だけ。大神くんと一緒に帰りたかったけど、クラスの女子に誘われて一緒にお茶会をやっている。
「瀬里、大神くんのことで元気ないの?」
「ち、違うよ!」
「そなの?」
「そだよw」
「ふーん」
いつもの神社に来ても、話す話題は思いつかない。
「ごめん…わたし、もう帰るね〜」
「バイバイ」
明日香は手を振りながら帰った。
わたしは一人、神社の階段に座っていた。
(なんでこんなに胸が痛むんだろ…)
夜
「ただいまー」
「瀬里葉、おかえりー」
「大神くん、帰ってたんだ」
「うん。瀬里葉といる方が一番楽しいから」
わたしといると、一番楽しい…。その言葉にわたしの心は動いた。
「ところで、瀬里葉は好きな人出来た?」
大神くんの目は真剣だった。その瞳から目線が外れない。大神くんの顔、赤い。わたしはしばらく動けなかった。大神くんの目を、いつまでも見ていたかったから。
「まだ出来てないかw」
「う、うん」
「そのうち出来るよな!」
大神くんは二階へ上がって行った。