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1・千里眼の少年

 もう期待などしない。もう意地を張らない。もう外に目を向けない。もう言葉を鵜呑みにしない。もう無理をしない。もう頑張らない。もう好きにならない。



 ▽


 遠くの空には鳥が飛んでいる。どれぐらい遠くかは分からない。最近僕は見たくないものが見えてしまう病気になったらしい。正確には、見えるはずのないものが脳裏に浮かぶ病気、らしい。それもどういうわけか見たくないものや、知りたくないものが殆どだ。


 あ、鳥が撃たれた。赤く咲いた血が落ちいく。鳥は力が抜けていき落ちていく。鳥に駆け寄り脚を持ち上げる。これは誰かの見ている景色なのだろう。


 病気だと言われた時は耳を疑った。これが病気として成り立っているのかも疑問だ。


 望まない千里眼は僕の精神に大きな影響を与えたらしい。家でも学校でも一人でいることが多い。話すことは事務的な連絡ばかり。人が怖いわけではないが、とりわけ話すことも無いというのが本音なのだが、大抵の人は僕の精神異常を疑う。そして上辺の同情と慰めの言葉を向けてくる。そんな人達と友好な関係なんぞ最初から望んでいない。仲良くできる訳が無い。自分よりも下にいる人間を確認し、自分の立ち位置を少しでも良いものだと思いたい者達なのだから。


 今度は人が見える。歩いている。まるでもってどうでもいい。見えてたって何にも出来ない。どうして僕だったんだろう。


 今日は学校を休むことにした。ただ外に出ることが面倒になったからだ。最近は親も僕を心配しなくなった。仕方のないものだと諦めたらしい。何もする気がおきない。


 どうして僕なんだろう。考えても答えが出ない。そういうものだと諦めても諦めきれない。まぁ、気が狂わないだけマシなのだろう。


 人が車に撥ねられた。頭からちを流している。動かない。周りで人が騒いでいる。だが誰も彼も騒ぎ携帯を前に構えて、顔の横に携帯を持つ者は誰もいない。この事故はニュースにでもなるのだろうか。僕には関係の無いことだ。


 最初のうちでこそ驚き、気絶をした。が、今はもう見慣れていることだ。どうでもいい。心の底からどうでもいい。


 寝ている時が一番幸せだ。見たくないものを見なくてもいいから。今は苦にもならないが見ると見ないでは、見ない方がいい。死んだものを見ることはなんとなく嫌だ。


 死んだものの周りを見ることの方が嫌だ。


 ずっと寝るにはどうすればどうすればいいかな。手首にカッターを当てる。こうすればずっと眠れる。


「おやすみ」


 カッターの刃は皮膚を裂き見慣れた赤い色に染まる。ずっと考えていたことは僕じゃなければよかったのに、と。


 目の前が暗くなる。こんな世界……。

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