M-001
蒸し暑い残暑の中、掛け持ちでバイトをする。
昼から夕方に、夕方から深夜までみっちり働いて新卒の大学生と同じかそれ以下の給料。
税金なんか全部払える余裕も無く、家に帰れば風呂に入って寝るだけに近い生活が続く。
何でこんなに税金は高いのだろう?
まともに払えば半分は消えていくバイト生活。
もう考えるのも嫌になる。
健康保険だけは欠かさず払っているが、すべてを払った上に家賃・公共料金など除けば食費も心もとないほどしか残らない。
いつの日か食事は日に2食になり、休みとなれば動かずじっとしている。
そんなうだつあがらない独り者の生活が続く。
この日もそんな1日だった。
満月に近い月が出ている。
そんな月を見ながら家路に着いた。
風呂に入り汗を流す。
おざなりに体の水分をふき取って布団にダイブする。
もう寝間着に着替えるのも面倒でメガネだけを外す。
携帯の充電をしなきゃと思いつつ、眠気にあがらえずに体を弛緩させる。
最近は、自炊しても外で食べるのと変わらぬほど食費がかかる。
この暑い中、野菜を安く買っても全部食べきれずに痛む方が早い。
処分の手間と同じ野菜を食べるばかりになるよりはと外食が増える。
合わせて面倒に思う事をしなくなってきたと思いつつもしようと思わなくなった。
その思いが体を休める名目とともに抜ける力に逆らわずに眠りに落ちる。
多分、この1ヶ月の間に夢を見ている。
夢を見たと言う記憶があいまいな上、普段は見ない。
自分と違う記憶のような風景に写真でも見てその風景が浮かんでいるのか自信が無い。
語学が堪能でない為に解らないんだろう聞いたことの無い言葉。
異国風の言葉にメイドの様な雰囲気を持つ人が話しかけてくる。
時に紳士の様な歳を召した人も居る。
心配そうな雰囲気の中、俺は伝えられずに目が覚める。
いつもだと思う。
そんな感じで夢だと思う内容は終わる。
最初に何かしていても終わる時はいつもそんな感じだった。
今日もそんな感じだと思っていた。
夢も見ずぐっすりと眠る。
なにか久々な感じだ。
少し肌寒い。
風が肌を撫でて行く。
そこで布団を引っ張ろうと寝返りを打つ。
掴めぬ布団。
硬い床。
狭いはずの部屋で・・・
そこに疑問を持ち、違和感を覚えた。
現実に帰り、眠気が抜けていく。