6話
前日はあげられなかったため、今回は文章量が多めです。
最後に主人公達のステータスをお見せする形にします。
初めての街だ。ようやく俺の異世界攻略が始まるんだな。
身体が女だから、やってみたかった事が半分くらい無くなるけど。
キョロキョロと上京したての田舎者みたいに街を見渡す。
壁はレンガ造りだったから、街並みも中世ヨーロッパ風かと思いきや、木造建築ばかりだった。
三階建て以上ばかりなのを見ると、それなりに技術はあるのだろうか。
道はほとんど舗装されていなく、砂利道だ。
夕方なのに所狭しと並んだ建物に光が遮られて暗い。
三軒に一軒位の割合で、建物から弱い明かりが漏れていて、街灯がなく人通りはほとんどない。
街の外側になるにつれ貧民になるんだっけ、中心の方はもっと明るいんだろうか。
どの街でも中心から順番に、第一地区⇒第二地区⇒第三地区と続いていく。
区画ごとに壁で遮られていて、中心に近いほど壁が厚く高い、と聞いている。
(さて、どこに何があるのやら全く解らない。文字が読めるわけでもないし。いきなりギルドに入っていってもボロが出そうだし、とりあえず宿探しか。)
身分証にはどの組織でどれくらいの身分かが記載されている。
俺の場合は成り代わったレンディという女の身分になるが、ギルドが本所属でランクDである。
ランクはA~Gまであり、Gが最下位なので中間くらいである。
ちなみに他の組織は最下位のGだ。
(やっぱり勢いで村を出てくるんじゃなかったか)
一応最初に街を案内してもらう手はずだったのだ。
(案内役が欲しいな、秘密を守ってもらえるような信用信頼のおける相手だ)
そんな人は居るはずがないが。
(奴隷を買うしかないかなぁ)
奴隷は元々買うつもりだった。俺のステータスを見る能力を一番有効活用できそうだからだ。
手持ちのお金は銀貨7枚、鉄貨5枚、鉛貨3枚。
硬貨の価値は 10000鉛貨=1000銅貨=100鉄貨=10銀貨=1金貨 である。
(宿でも何が起こるか分からん、リスクを最小限に抑えるには奴隷を先に購入しておいた方が良いか)
最低銀貨1枚から買えるらしく、街の一番外側であるこの区画ならあまり高いのは置いていないだろう。
ブラブラと歩いた結果、大きな通りに面している建物は明かりがついているところが多い。
そして大きい建物は、大体看板がついている。
首輪のような絵、見知らぬ文字が一文字だけ、複数の硬貨の絵、漫画肉の絵、剣と盾の絵などがある。
見たことあるような気がする絵も一つあったのだが思い出せない、他はよく分からなかった。
この中で奴隷を扱っていそうなお店は、首輪のような絵の看板の建物だろう。他のところよりやたら明るい。
(間違ってたら適当になんか買ってすぐ出よう)
ゆっくりドアを開け、中に入っていこうとする。
「お待ちください」
「!?」
入り口でいきなり呼び止められた。ビックリしたが、身分証の確認だった。焦った。
大きな待合室に通される。俺以外にも何人かいたが、皆冒険者みたいな格好をしていた。全員男だ。
何故か入ってきたばかりの俺が、最初に奥へ通された。
「レンディ様こちらへどうぞ」
「あ、ああ」
まさか娼館ってことは無いよな。
上下紺色の袴を着た白髪でオールバックの男に促される。
この世界の人間は全て西洋とも東洋とも違う独特な顔立ちで、所謂アニメ顔のような感じである。
故にその格好をしてもスーシー、テンプーラ、サムラーイなどと言いそうではない。
「当店をご利用頂き誠にありがとうございます。本日は戦闘用の奴隷をご要望でしょうか?」
よかった。どうやら奴隷商館で間違いないようだ。
ただ一体何の理屈を持って、戦闘用の奴隷という結論になるのかよく分からない。
ここは少し曖昧にしておくのが良いだろう。
馬鹿正直に案内用の奴隷が欲しいなんて言うと可笑しいはずだ。
「いや、色々見させてもらいたい。なるべく賢い奴がいいが」
一瞬少し驚いたような顔をして、すぐに営業スマイルに戻った。
「畏まりました」
長い廊下を白髪男の後ろに付いて無言で歩く。
人が2人並んで歩けるか歩けないかくらいの狭い廊下だ。
いくつも扉があり、中から奴隷の声が漏れ聞こえる。悲鳴というより騒いでいる感じがする。
一階の部屋は素通りして二階へと登り、一番小奇麗なドアの部屋に通された。
かなり広い部屋だ。入って奥に窓があり、それを背にするようにポツンと質素なソファーがある。
壁は一面統一された色の木材で出来ており、天井の中央には火とは比べ物にならないくらい明るい光源がある。
電気の変わりに魔力を使っているこの世界であるが、基本平民層の夜はランタンを使っているはずなのだが、明らかに魔道具っぽい。
魔道具は平民には手が出しにくい、奴隷商というのは儲かるんだろうな。
背負っていたロングボウを仕舞い、少し固めのソファーに腰掛けて待っていると、ノックと共に白髪男が奴隷を20人程連れてやってきた。
予想通り全員獣人だ。普人である場合は最低金貨一枚以上はするのだ。
全員裸で、トカゲやらワニやら犬やらが混じったような身体と顔つきをしている。
若干汗臭いな、身体的特徴の所為で汚れが目立つ事はないが。
一人一人ステータスを見ていくと男は大抵スキルを持っているが、女はスキルを持っていなかった。
恐らく処女を散らされたのだろう。この世界では処女を散らされると相手に持っているスキルを奪われてしまうのだ。
故に貴族はより強くなるため、処女を大量に買う。
用済みになった女は捨て値同然で奴隷商に売り捨てられるのだ。
「如何でしょう。気に入ったモノはありますか?」
「そうだなぁ……この子は?」
ふと、獣人の女が目に留まった。明らかに他の獣人とは違い可愛いのだ。
髪はピンク色で無造作に切られたショートカット。
顔は普人と同じで、猫耳が付いているだけ。
身体は肩から先と太腿から先が獣化しており、重要な部分が普人と同じだ。あと長い尻尾が付いている。
他の獣人は逆で、身体の中心や顔の方が獣化している。末端の手や足が普人と同じなのだ。
「これはお目が高い、戦闘向きではありませんがなんと銀貨6枚です」
「……そんなにするのか」
つい思っている事を呟いてしまった。
(銀貨1枚からって聞いてたけど、案外するんだな。凄く可愛い顔してるし、性奴隷としての利用価値が高いのか)
「……やはり知っておられましたか。性奴隷としての価値しかないモノです。酔狂な方が買ってくれるのを待っているのですが、そろそろ処分しなければなりません」
発言から察するに、普通ならお買い得と思って買ってしまうような値段設定なのだろう。
何か問題があり、俺がそれを見抜いての発言だと勝手に勘違いしてくれたらしい。
「詳しい経歴を話してくれ、気が向いたら買ってやる」
「本当ですか?! ありがとうございます! ご存知の通りコレは少し前に噂になった獣人でして……」
この猫娘はオークションで処女として貴族に買われた。
もちろんやる事やった後すぐに売り払われる事になったのだが、性奴隷にするにはうってつけなほど可愛くスタイルがいい。
オークションでもかなり高くなったらしく、買い取り価格もそれなりに高かった。
しかし売ろうとしても、家畜同然の扱いを受ける獣人を性奴隷として買う貴族はおらず、買うのは金持ちの性欲に負けた冒険者くらいだった。
その冒険者からも、すぐに返品される。何故ならちょっとした雑事も出来ないから。
獣化した手は日常生活に絶望的な支障をきたす。
性奴隷といっても、事後の後片付けや基本的に自分のことは自分でしてもらわなければならない。
それすら出来ないモノはもはや奴隷ですらない。
どんどん値段も下がっていき、平民にも買われたがすぐに返品される。
奴隷商は世話も大変だし、これ以上負債を増やす前に処分してしまおうかどうか悩んでいるらしい。
「少しこいつと二人で話をさせてくれないか、たぶん買う事になるだろうが確認しておきたい事がある」
「おお! 感謝致します! 他の奴隷を戻してきますので、その間にお願いしますね」
白髪男は奴隷を率いて部屋を後にする。
猫娘が近寄ってきて、物凄い笑顔を作りマシンガンのように喋り始めた。
「ありがとうございますニャン! ご主人様精一杯ご奉仕するニャン! ご主人様は冒険者ニャ? ウチも少しは戦えるニャ! 武器は使えにゃいけど、この爪があるニャン!」
兎に角必死で無理をしているようだった。傍から見れば、笑顔で明るいキャラのように映るだろうが、俺の目は誤魔化せない。
「マッサージもできるニャン! 夜が一番得意ニャン! 暗くてもみえるにゃ、ベッドでご主人様をきっと満足させられるニャン! ご主人様は責めたいタイプかニャ? それとも責められたいタイプか……ニャ? え? ナンニャ? これ……ニャ?」
猫娘は俺に甘えた様に擦り寄り、胸を押し付けようとしたが、その前に俺の胸で顔を弾かれる。
混乱しているのか身体は震え、固まった笑顔は誰から見ても作り笑顔と分かるだろう。
「う、嘘ニャ……こん、こんにゃ、の、可笑しいニャン、有り得、にゃい、ニャン……ご、ご主人様は、お、男じゃ、にゃい……ニャ?」
確かに厚手のローブをきているから身体の凹凸は分からないし、身長も男並み。
フードを深くかぶっているから顔がわからないだろうが、面と向かって男と間違えられるのは嬉しい。
俺はそっと猫娘を抱きしめると、頭をなでなでしてやった。
「大丈夫。俺はお前が必要だ。捨てたりなんてしないよ」
この猫娘は色々な主人の元へ行っている。
そこで得た経験や知識はきっと、細かい常識を知らない俺にとって役に立つだろう。
何より情がわいてしまった。一体どれほどの苦難を歩んできたのか、今こうして見ていただけでも想像できる。
「にゃ、にゃ、にゃあああああああああ!!」
猫娘が俺の腕の中で泣き崩れる。偽善だろうがなんだろうが、この子を少しでも幸せにしてやろうと思う。
と言う程俺は人間できていない。この子チョロイわ、でも処女じゃねぇとかヒロインじゃねぇ! などと考えていた。
その後とんとん拍子に事が進み、返品しないという制約をして値下げもしてもらった。
銀貨6枚がなんと銀貨3枚である。半額だよ!
奴隷の契約儀式をする時名前を決めるのだが、シャムという名前にした。
確かシャム猫っていう品種がいたから、むしろそれしか思い浮かばなかったから。
白髪男とシャムは驚いていた。
普通は元々持っている名前にするらしい、その方が呼ばれた時すぐ反応できるとかどうとかで。
俺はそこで、すかさずこう言ってやった。
「これから始めるんだ。過去の事は全て洗い流し、今までとは全く違う新しい生活をね」
またシャムが泣きだして俺に縋り付く。その様子をみて感心したように白髪男が頷いていた。
それにしてもシャムの匂いが少し気になる。
身辺に置くのだからある程度綺麗にしてもらわないとな。
「汗の匂いが気にならない程度まで、シャムの身体を綺麗にしてもらいたい。あと、身体を隠すローブのようなものがあれば譲ってもらいたい」
そういって銀貨を一枚取り出す。
「成るほど、シャムの容姿では人目を引きますからね」
「ご主人様、ありがとうございますニャン。ありがとうございますニャン」
白髪男は銀貨を受け取ると、シャムを連れて行った。
奴隷は全員裸だった。剥いだ身包みくらいは当然持っているだろう。
銀貨一枚で足りるかと思ったが、顔色を見る限り大丈夫そうだったな。
シャムのあの様子を見る限り、心は鷲づかみしてるだろう。多少無理言っても聞いてくれそうだ。
明日からはダンジョンに行って金稼いで、服買ってもっと奴隷増やしてがんがん金稼いで……。
今後の予定を考えていると、白髪男とシャムが戻ってきた。
シャムは赤色の下着に、ねずみ色のローブを着ていた。
下着は色々と便利なあの魔物下着である。この辺では上下セットで銀貨一枚くらいすると聞いている。
白髪男が言うには、基本的に剥いだ身包みは、商会にもって行っても足元見られて捨て値同然で買い取られるらしい。
「またのお越しをお待ちしております」
「ん、またくるよ」
ぴったりと横にくっついたシャムと、人気の無い場所に向かう。
日は完全に落ち、辺りは暗くなっている。
俺は近くに人がいない事を確認し、シャムに小声で話しかける。
「ご主人様、どうかにゃさいましたニャ?」
「話さなければならない事がある。この事は誰にも言わないように」
「……かしこまりましたニャン」
奴隷契約で、主人が不利・不都合になる事は一切行えなくなっているが、一応確認する。
全て話すわけではない、必要最低限の事を話すだけだ。
辺りは静まり返っており、小声で話しているのにやたら大きく響いて聞こえるような気がした。
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名前:佐々木 實
性別:女
種族:普人
HP:33/33
MP:12/12
身体強化 LV.2
必中の理 LV.1
回復速度上昇 LV.2
上位存在
満月の夜に魅せられて
装備効果:体温管理 物理軽減LV.8 魔術軽減LV.5
奴隷:シャム
お金:銀貨3枚 鉄貨5枚 鉛貨3枚
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名前:シャム
性別:女
種族:獣人
HP:311/311
MP:2/2
装備効果:物理軽減LV.1 魔術軽減LV.3
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