山嵐のように
人は誰しも、身を守るための目に見えない針を背中に隠し持っているのかもしれません。
寄り添いたいと願いながらも、近づくほどに互いを傷つけてしまう――そんな都会の隙間に漂うヤマアラシたちの苦悩と孤独の記録です。
静けさのなかで、彼らの消えない痛みに少しだけ耳を澄ませていただければ幸いです
『山嵐のように』
背中に並べた針を立てて
誰も傷つけないようにと祈りながら
ぼくらは満員の地下鉄に揺られている
触れ合えば痛むと知っているから
液晶の光の中に小さく丸まり
だれとも目を合わせずに息を潜める
もっと近くに寄り添いたいのに
寂しさを温め合いたいだけなのに
抱きしめようと腕を伸ばすたび
ぼくの刺が きみの肌を深々と引き裂いてしまう
雨の降る街のビル風のなかで
ぬくもりに飢えた二匹の獣は
互いの血で染まった針を見つめたまま
爪先ほどの間隔をあけて立ち尽くす
冷たい雨は刺を濡らし
消えない孤独の形を浮き彫りにする
すれ違うことさえ許されず
愛そうとするほどに傷つけ合う
ぼくらはどこへも行けない
互いを遠ざける針を纏ったままただ動けずにそこに立ち尽くし、泣きもせずに咆哮する。
明日がある限りそれは繰り返される。絶望はひない。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
ヤマアラシのジレンマをモチーフに、都会の片隅で誰かと繋がることを恐れながらも寄り添いたいと願う孤独を描いてみました。
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