第五話 【軍神 先生 越後の龍】
今回の章、マジで沖田総司以上に史実ガン無視設定がある、かも?
とある日
「はぁ、はぁ‥‥‥」
夜中、海のような蒼色の髪がすらっと伸びている女性は何かから息を切らしながらも逃げている。
女性を追いかけているのは白い瞳が真っ暗な夜に輝く赤色の馬の集団であった。
「おお! いい絵だねぇ、ぞくぞくするよ」
そんな様子を住宅の屋根から眺めて筆と白紙の絵巻を手に取っている男性がいた。
「ほーんといい趣味してるね、クソウ」
その隣から真っ白な着物を着たクレインが男__クソウが持っている絵巻を覗いた。
「ああそうだとも! オレの絵は最高だ! そこに今という生臭い欲望や苦しみが渦巻く最高のモルモット! 正にベストマァァァチィ!!!」
クソウは高らかに笑う。不気味ともいえる笑顔を空に向けながら。
「あはは! マジでおもろ、‥‥‥あーワタシ帰るねー」
「おいおいツル野郎、オレの作品見なくていいのかよ」
「きょーーーみナッーーーシングッ! ワタシはねぇあんたみたいにやばい癖はないんですぅ」
クレインはわざとらしいウィンクをだけを置いてその場から消えた。
「そうかよ、だが見なかったことを後悔しろ!!」
クソウはさらに高らかに笑いながら手を動かし逃げている女性の姿を絵巻に描く。
「はぁ、はぁ‥‥‥」
女性は壁に追い詰められ次の瞬間には馬たちによって踏みつぶされる絶体絶命の場面だった。
「すぅはぁー」
女性は一度瞳を閉じ深く深呼吸をした。そして瞳を静かに開ける。
「さぁ貴様はどんな最期をオレにどんな刺激をくれるん‥‥‥だ?」
白い光のような刃のような手刀があたり一帯を包み半月を描くように空を一閃した。
次の瞬間には馬たちの首は上空へと高らかに打ち上げられていた。
「おいおいまじかよ」
馬たちはパリンッと魂石が割れた音と共に消える。
その中でクソウを見つけ殺意が籠っている瞳で睨みつける女性はいきなり気を失ってその場に倒れた。
「こりゃ面白い絵が描けそうだ!」
クソウはその様子に笑みを浮かべ煙となって場を離脱した。
◇◇◇
芹沢さんを倒してから一日後、今日は普通に学校に通っています。
「ふぁあ、うぅ眠い」
教室で一番後ろの席、目をこすりながら話を聞く。
歴史の授業ってどうしてこんなに眠くなるのかな。
『あのー優花殿』
ふと後ろから声が聞こえる。そこには透明化している沖田さんが居る。
‥‥‥うん、なんで腰に刀を構えているのかな? というのはもう正直どうでもいいんだけども。
「(ん? なんですか沖田さん)」
『さっき程から優花殿に向けて殺気とは言いませんが視線を向けている者がいるのですが‥‥‥』
「(あー虎也さんのこと?)」
沖田さんが指さした方向を見るとこちらに憎悪にも近い怖いオーラを私に向けている男子__虎也 亥斗さんがこっちを見ていた。
『斬っていいですか』
「(ダメですよ!?)」
『そうですか‥‥‥』
何しょんぼりしてるんですか!? 怖いんですけど‥‥‥。
「早見さん、よそみしない」
いきなり前から顔の__恐らく瞳に向けて白いチョークが飛んできた。
「!? はーい」
あっ‥‥‥ぶな!? なんとか紙一重で飛んできたチョークを躱した。右耳が繋がっているかどうかをすぐさま確認した。
繋がっていた。
そのことに心からの安堵をそっとした。
安堵した後に私は前を見る。
黒板の前に立っている青髪に黒メッシュに目が引かれる女性の先生__上長 直美先生が淡々と何事もなかったかのように授業を続けていた。
おかしいな、‥‥‥下手したら生徒が一人死んでましたよ!?
私だったから良かったけども!?
__キンコンカーンコ――ン
「おっ、時間だね。じゃあちゃんと復習しておきなさいよ」
チャイムが鳴り授業が終わりを告げた。しゃぁ! 終わり!
私は密かに拳を握った。
◇◇◇__放課後
学校の終わりの夕暮れ時、私は千華と沖田さんに挟まれるように真ん中に位置して帰路を歩いている。
「んー学校終わりー!」
ホントは手を空へと伸ばしたいがその後に両脇の二人に当たるのでやめておくことにした。
「今の人はあんな難しいことを学んでいるんですか‥‥‥一周回ってバカじゃないですか」
「そうっち、それはわたしも思う、とはいえ知っていて損はないけど」
私を挟んで会話をしている二人、意外と仲いいな!? けど勉強の話はしないでもらいたい、眠くなる。
「ゆうっち、そういや虎也の奴は大丈夫なの?」
おっといきなり私に話を振ったな千華。
「ん? 別に問題ないけど」
「さっすがー」
「聞きたいのですが虎也とかいう人はどんな人なんですか?」
「あーそれは‥‥‥ん? なにあれ?」
前に突然と赤い馬の集団が現れこちらを見ていた。わーカワイイ! なんてはならない、だって敵意がむき出しになってるもん。
「優花殿‥‥‥!」
「分かってる、やるよ沖田さん! なーはこれ持ってて」
「はい!」
「頑張って、ゆうっちにそうっち!」
バックを千華に預けペンダントに【沖田魂】をはめる。
《ローディング‥‥‥沖田総司‥‥‥》
「憑依!」
《音越え 三段 一番隊!》
沖田さんと私の身体が重なり新選組の羽織を纏う。
【日輪】を鞘から抜き出し刀を構える。
『いきますよ優花殿』
「はい」
地面を割るほどの勢いで一気に馬たちの首にめがけて踏み込んだ。
『「はぁっ!」』
__カキンッ
そんな金属同士がぶつかったような音が耳元に聞こえた。それもそのはずだった。刀が馬の首を金属にぶつけたかのように弾き飛ばされたのだから。
『まじですか‥‥‥!』
「硬すぎ!」
硬すぎ、その感想がまず初めに飛び出た。一度さがり呼吸を整える。
どうします沖田さん?
『三段突きで突き刺せば簡単にいけそうですがあの数は‥‥‥』
確かに。見た感じ十か十五匹くらいいた。三段突きだと一回やったあとの反撃に対応できないだろうしなぁ。うーんけど、
「そうするしかないですよね?」
『まぁそうなんですけど』
よしじゃあそうしよう、刀の鍔部分を回そうと手を触れた時だった。
「『「!?」』」
白い何かが天から降ってきて馬たちの首を紙を切るかのように軽々跳ね飛ばしていた。
土埃があたり一帯を覆った。
「ちょっ?は?え?」
困惑した。
土埃が晴れるとそこには白や黒が主な甲冑を纏った女性がいた。澄んだ青に白メッシュの長髪が綺麗にたなび‥‥‥いて‥‥‥あれどこかで見た‥‥‥ような?
どこかでみたような気がするがどうにもそれが誰か思い出せない。
女性がこちらを向いた。長刀を持ち、それがまた女性の印象を引き締まらせていた。
「上長先生!?」
先に口を開いたのは千華だった。‥‥‥って!? あぁ!! 上長先生!? 言われてみれば確かに‥‥‥。
「ワタシは毘沙門天の生まれ変わり! 上杉謙信である!!」
???? 声質はまったく上長先生と同じなんだけど言動が似ても似つかないというか。
「えっと‥‥‥上長先生なんですか?」
「おっと、そういえばこの肉体の名はそうでしたね八波さんに早見さん、それに‥‥‥新選組の不審者さん?」
『!?』
!? 上長先生もしかして沖田さんのこと見えてるの!?
「ワタシが気づいてないとでも? 早見さん、ワタシは戦国最強の上杉謙信ですよ」
上長先生本当に上杉謙信何だろうと自分の中で確信した。だって、なんか沖田さんと同じ気配を感じる。
『優花殿?』
失礼、なんでもないですよ沖田さん。
『何言ってるのかよく分かりませんが憑依を一回とってもらっていいですか?』
あっそれはシンプル忘れた。
『ちょっと!?』
私はペンダントから【沖田魂】を取り出す。すると私の新選組の羽織が消えて代わりに沖田さんが息を整えながら出てきた。
◇◇◇
とある路地裏で虎也亥斗は缶をけっていた。
「くそが早見あいつさえ魔女さえいなければ‥‥‥」
ぶつくさと文句をいいながら亥斗は持っている竹刀で缶を完膚なきまでに叩き潰した。
「やぁやぁ荒れてるな少年よぉ」
「誰だ!」
突然、亥斗の後ろにクソウが音もせずに現れて声をかけた。その声に亥斗が振り向くとクソウは消えるよう後ろに移動し亥斗の首筋にゆったりと指をかけた。
「!?」
「おいおい少年そんなんじゃ人生速攻ゲームオーバーだぜ」
クソウの表情は笑っていたがその声は氷のように冷たかった。ひやりと冷たい吐息が亥斗に当たる。
「俺にな、何の用だ」
「オレと契約しないか。そうすればお前が憎んでる相手に復讐できる力を与えてやんよやんよ。ただし」
「! それはどういう‥‥‥! ガッ!?」
「話は最後まで聞く習わなかったのか?」
クソウの指に力が入る。亥斗の首からメシメシときしむような音が鳴る。
「オレをぞくぞくさせるような絵を見せろ、それが契約だ」
「わ、分かった契約する!」
「いい返事だ」
クソウは不気味な笑みを浮かべながらポケットから一つの紅色の魂石を取り出した。
《武田信玄!》
「がぁっ、ああああ!!」
亥斗の身体に埋め込むと亥斗の身体は黒い煙に包まれた。
「こいつの保護者頼んだぜ」
「ああ‥‥‥」
陰から黒いフードを被った男が現れ代わりにクソウがこの場から消えた。
「‥‥‥」
「おっとあなたがいましたか」
「! ムジナ様なんのようでしょうか」
どさっと無気力で倒れた虎也を見下ろすように立つフードの男の前にムジナが現れた。
「いえいえ、あなたに使って感想をいただきたいもらいたいものがありまして‥‥‥使ってくれますよね」
「承知しました」
フードの男はムジナから羽のような紋様が浮かんでいる黒の魂石と機械的なラインが施されている槍を受け取った。
◇◇◇
紆余曲折あり上長先生を我が家に案内することになりました。その途中で千華が「やだやだゆうっちのご飯を食べたい!」と拗ねたので千華も一緒についてきました。
本人の両親から許可も貰ったので今日は久々に千華とお泊りすることなったよ! やったね!
「しかし、新選組の隊長さんが女性だとは思いませんでしたよ」
「こちらもまさかあの上杉謙信さんが女の方だななんて驚きです‥‥‥!」
私と千華の後ろで上長先生あらため上杉謙信さんと沖田さんが話し合ってる。‥‥‥うん、あなた方が女性で驚きだったのはこっちですからね!?
上長先生、あなたはまだ納得できますよ、女性説とかありますし、沖田さんあなたは本当に驚くんだよ!!
「ゆうっちのご飯ー楽しみー」
「あはは、何作ろっかなー」
今日の夕ご飯なんて考えてはおりません。どうしよ、たこ焼きでも焼こうかな、いやけどなタコ焼き機どこにあるか分かんないし。あっそうだ確かシャケが余ってたはずだからそれを塩多めで焼こう。
「おっ帰ったか優花‥‥‥おい後ろの奴誰だ」
「おかえりなさいませ優花さま‥‥‥後ろのお連れは?」
家につくと庭で人の姿のタマと火車ちゃんが桜の木をみながらくつろいでいた。
「おや、黒丸じゃないですか、あなた。久しぶりですね、上杉謙信ですよ」
「ああ、久々だな。酒飲んでないのか。一瞬誰だか分からなかったぞ」
知り合いでしたかー。まぁなんかそんな気はしたけども。というかタマの本当の名前ってなんなんだろう?
「今のワタシは【教師】なのでね。昔みたいにいつも飲んでるわけではないですよ」
「は? お前が教師? 冗談‥‥‥ではないのか」
「なわけないですよ。しかし、あなた本当に変わってないですね。身長すら変わってないなんてまじもんの神様だったんですね」
「‥‥‥‥‥‥まぁ、な、しかしどうしてお前が?」
「ふふ、少し助けてもらいたいことがありましてね」
助けてもらいたこと? なんだろう?
先生は手を胸に当て口を開いた。
「この肉体を救ってくれませんか?」
!? どういうこと!? 特に体調が悪いとか大けがしてるようには見えないけど。
「どういうことだ?」
「今のワタシはある死人の肉体を借りてるんですけどその死人の願いを叶えて成仏させてほしいんです」
「へ? どいうこと?」
意味が分からないというのがまず真っ先に頭の中に浮かんだ。
「意味が分からない当然ですよね。この肉体はワタシのですけどワタシのじゃないんですから」
?????? さっきから一体何を言ってるんだ? 頭の中にたくさんのはてなが生えた。
「そうか、成仏‥‥‥少し手間がかかる明日朝早朝まで待ってくれるか?」
「いいですよ。この子が救われるなら」
先生は胸に手のひらを当てどこか悲しそうな瞳をしていた。
その時だった、街から悲鳴が聞こえる音が耳に届いた。
「! 優花殿」
「うん、分かってるいくよ沖田さん、憑依!」
《音越え 三段 一番隊!》
私は【沖田魂】を用いて沖田さんを憑依させながら悲鳴が聞こえた方へ走っていく。
「あっゆうっちあたしも‥‥‥」
「では、ワタシが連れて行きましょう」
「へ? どええええ!!??」
上杉謙信は軽々と千華を片手で持ち上げ背中に乗せると優花の後を追うように跳んでいった。
「ボクも行くか」
タマもその後についていく。
◇◇◇
「があああ!! どこだ早見いいいい!!!」
現場につくとそこには赤い甲冑を着て風林火山と書かれた二本の旗を振り回し街を壊している虎也さんがいた。
「げっ、虎也さん? 何やってるの?」
「見つけぞ早見!!」
虎也さんは私を見たやいなや旗をこちらに振り落としてきた。私はそれを簡単に避けた。流石に単調すぎるしね?
けど、一体どうしてあんなことに?
「魔女がぁ!! てめぇさえいなければ!!」
「‥‥‥は?」
虎也さんは私を恨むように睨んでいた。無意識というのには失礼だが私は刀をそのまま壊してしまうのではと思うほど強く握っていた。
怒り、激怒、今のわたしの感情を表すならその表現が最も適しているはずだ。
そして思い出す。
小学5年生の頃、千華をいじめていた男子グループの実質的なリーダー虎也含め全員を衝動に刈られ––しにした記憶。
そして私が【魔女】と周りの人達に言われることとなった事件。
『優花、殿?』
私を心配してくれる沖田さんの声が聞こえる。
「お前さえいなければ俺はあんな恥晒すことにならなかったのに!!」
「は? ふざけないで。あれはあなたたちが‥‥‥!!」
「うるさい!! てめぇみたいな魔女は消えろ!! 風林火山・火!」
「くっ‥‥‥」
虎也さんは再び炎を纏った旗で猛攻を仕掛けてきた。先程より重く早かった。
『優花殿』
「分かってるいくよ!」
鍔部分を一回転させペンダントに重ね三段突きの構えに入った。
《ヒッサツ、ローディング、クリア!! オキタ!! 3! 2! 1!》
「はぁっ!」
《絶技! 三段突き!》
人の目には追えない速度で虎也さんに近づき冑を割るように腹あたりにめがけ突きを決める。‥‥‥はずだった。
『「!?」』
突然目の前が煙で真っ白になり金縛りでもされたのか身体がガッチリと空中で止まった。
「はぁっ‥‥‥!」
「ぐっ‥‥‥」
煙の中から黒い拳が伸びてきて私は身動きが出来ないまままともに当たって後ろに飛んだ。
煙から抜け出し身体に自由が戻ってから私は煙の方を見た。
「‥‥‥」
「誰!?」
そこには虎也さんを守るように前に立ちフードを被った男性が槍を構えていた。
《カラス天狗‥‥‥!》
「憑依‥‥‥」
《暗黒、カラス天狗‥‥‥! 我 飛翔 火傷》
『「!?」』
カラスのホログラムが突如として現れ男を通りすぎたと思ったらそこにはカラスのような天狗のようなお面をかぶり漆黒の翼が広々とのびてはためかせている男が現れた。
「俺の名は天世、倒れてくれ桜の巫女」
「ッ!?」
一直線に近づいてきた男__天世に反応が追いつかず日輪で完全に受け流せず頬に傷がついた。
「なぁ桜の巫女もっと頑張れよ」
「言われなくても!」
気分が高まる、あの落ち武者や芹沢さんと殺りあう時より数倍心が跳ね上がる。
向かってくる槍を何度も叩き落とす。
「いい動きだなぁ!」
「くぅっ!?」
回転がかかりまっすぐに来ると思った槍が急激に曲がって私の身体に再び当たった。
命の取り合いをしているとは思えないほど変な声が思わず興奮して出てしまった。後ろに飛び一度距離をとる。
◇◇◇
「‥‥‥」
タマは優花が天世と戦っている様子を無言で後ろから何かを思うかのように見ていた。
「なにあれ‥‥‥」
上杉の背中に担がれたまま千華もその様子を見ていた。
「黒丸、少し八波さんを頼みます」
「構わないがなにするつもりだ」
「遊びですよ遊び、最高に楽しい戦ですよっと」
「わっ!?」
またしても体重なんて関係ないと言わんばかりに千華の身体を上杉は片手により持ち上げタマの近くへと降ろした。
そして、白い柄の薙刀をどこからともなく取り出しかけているメガネを取り外すと雪のように白い甲冑が上杉の身体を包む。
「すぅーはぁーー」
上杉は瞳を閉じ深くたいそう深呼吸をしながら持っている長刀を地面にへとリズムよく何回か叩きつける。
そしてゆっくりと瞳を開けた。先ほどまでとはまるで別人のような雰囲気をのせて。
「明鏡止水、相変わらずか」
「明鏡、止水?」
明鏡止水、またの名を超集中状態、フロー状態ともいう。【越後の龍】【毘沙門天の生まれ変わり】上杉謙信を否、一人の女性を北条を、織田を、武田を数数多の大名を退け戦国最強大名としてこの国に定めた神にも届きよる魅技。
ゾーンとも呼ばれる本来は極限状態やスポーツの試合中など特別なタイミングにしか入れない世界に上杉謙信は自ら自由に行き来することが可能である。
ただ、もしそれがそれだけでなら彼女は神には届かない。
もし彼女が人より数倍、数十倍そのゾーンの世界が精度が高い特異体質ならば?
もし彼女が常人が普段脳の約10%分の機能しか発揮できないところを通常時でも20%いやそれ以上の機能を自由に発揮できる特異体質ならば?
そのうちのどれか一つでも彼女にあてまっていたら?
否。
この上杉謙信という女性はどちらにも当てはまり日本どころか世界を見ても極めて稀有な体質であった。
そして、くしくも上杉謙信が乗り移っている肉体もまた群雄かっこの戦国時代を生きた上杉謙信と同じ体質であった。
だが、所詮はすごいだけの肉体、十分にそれらの才能を扱えるのは天才的な運動神経や血を滲むような鍛錬あってのものである。
「ふー、とはいえ元の半分の力程度しか出せませんね、まあ十分ですが、ねっ!!」
上杉はそう言って優花がいるところへ突風を引き起こしながら跳んでいった。上杉が踏み込んだ地面はアスファルトごとクレーターのようにへこんでいた。
「わっすごい風!?」
「‥‥‥なぁ千華さき帰って少し準備するぞ」
跳んでいった上杉に対し千華は驚愕しタマは何を思ったのか帰ろうとする発言をした。
「えぇ!? どうして!?」
当然、千華は驚いた。
「多分、倒れて帰ってくる奴がいるからな」
「よく分かんないけどゆうっちの力になれるなら?」
タマがいった言葉に疑問を浮かべる千華だが言われるがまま帰っていくタマの後を追っていく。
◇◇◇
「はぁっ!」
「倒れろおおお早見!!!」
「くっ!?」
視界の右左どちらからも迫りくる攻撃に私は今防戦一方であった。
別に虎也さんの攻撃は単調だからそこまでの脅威ではないんだけど、問題はもう片方の天世でである。
私の弱いところを知り尽くしているというか痛いところばかり狙ってきて反応がどうしても遅れてしまう。
それに槍さばきが達人ってレベルではないと思うけどほんとどこかで?
「手助けしますよ早見さん、そいやっ!」
「先生!?」
「がはっ!?」
「くっ越後の龍か、‥‥‥」
突如として背中の方からから上長先生が駆け上がってきて虎也さんと天世の二人をまとめて後ろへ飛ばした。
「おっと、信玄の気配を感じましたがどうやら少し違うのですか。なら明鏡止水はいらなかったかもですね」
「ああ? 違う‥‥‥違う違う違う! 俺は最強の力を手に入れたんだ!! 早見に‥‥‥魔女に復讐する力を!」
「それでワタシの最高の好敵手、最高のおもちゃの力を手に入れ適当に振るうと‥‥‥‥‥‥死ね」
「なぁっ!?」
『「!?」』
一撃、先生は長刀による一撃で虎也さんの甲冑が粉々に壊し地面に叩き落とした。虎也さんは気絶しているようだった。
身震いしたとしたというのが最初の感想だった。もちろん恐怖による身震いではなかった。
戦いたいという衝動からくる身震いだった。
強い、戦って、戦って戦いまくりたい。私の血が騒いでいる。
『優花殿、優花殿、笑顔出てますよ』
え? あっまただ、もうほんと悪い癖、小学5年生の殴ったときだって聞いた話だと笑ってたらしいし。
「厄介な、今回はここまでだな」
「!」
「虎也さんをどうするつもり!?」
少し目を離した隙に天世は虎也と紅色の魂石を回収しており逃げようとしていた。
「クソウ様から守れとの命令があるからな。当然のことだ。それと‥‥‥」
『「「!?」」』
「約束のためにもまだ死にたくないんでな」
無数の魂石を投げたと思ったらそこから赤い鬼?がたくさん現れた。
「こいつらは餓鬼だ。またな桜の巫女」
そう言い残し天世は去っていく。逃げていく背中を掴みたくて思わず手を伸ばそうとしたが餓鬼達に意識を向け先まずは全員倒そうとした。
「くっ!?」
一体一体はそこまで強くないからどうとでもなるけど数が数が多い!
『優花殿一度憑依を!』
「分かった!」
《死を呼ぶ 鎌 今現れる!》
【沖田魂】を取り出しかわりに【我桜魂】をつけると沖田さんが出てきて背中合わせとなった。
人が増えたなら先生とも協力して倒しきれる!
「ははっ時間切れ」
へ? 嫌な言葉が先生の方から聞こえた。振り向くとそこには地面にふらっと倒れる上長先生がいた。
「先生!?」
「ちょっ優花殿!?」
私はすぐさま先生に駆け寄った。
「大丈夫ですか!? ‥‥‥って寝てる?」
寝ていたのだ、瞳を閉じ気持ちよさそうな寝息を立てて。
‥‥‥‥‥‥はあ!?
頭の中が少しの間放心状態となって怒りとは言えないが近いような感情がのった声が心に漏れ出た。
「と、とりあえず先生抜きでやるしかないってことだよね」
「そんな当たり前のこといってないで早く手伝ってください!?」
「ご、ごめん」
私は沖田さんに謝りながら餓鬼達を倒すのに協力する。
「おや我が君、どうやら苦戦していそうだね」
「N!?」
私達が倒しても倒しても一方に減らない餓鬼達に苦戦していると突如としてNが現れた。
「だから少し手助けして差し上げます。ふふっ久々ですね」
《水虎、河童、融合!》
Nは魂石を二つ取り出してナックル型のアイテムにはめる。低めのエコーがかかったどこか背筋を凍らせるような音がなり水色と緑色のエネルギーが溜まっていく。
「バン」
《妖、二撃!!》
Nは餓鬼達の集団のど真ん中に飛び込みナックルを振るった。すると、水の虎と河童が餓鬼達を一人残さず一掃していった。
「ふぅこんなものでいいですかね我が君?」
「いいんだけど、‥…‥ねぇN私と一手お手合わせ‥‥‥!」
「ではまたお会いしましょう我が君」
「あっいっちゃた‥‥‥残念」
ってなに悔しがってんだ私ぃ! 私は憑依を解除し寝ている先生に駆け寄る。
「この方寝ているのですか」
「そうなんだけどどうしよう」
沖田さんもすぐに駆け寄ってきて先生の心配をしてくれる。‥‥‥連れて帰るしかないんだろうけど流石に身長的にも担いでいけないよね。ほんとにどうしよう。
あっそうだ!
《火車 ローリング》
「火車ちゃん大きくなってこの人運べる?」
私はローラースケートから火車ちゃんを呼び出してみた。もしかしたらさっきの水の虎みたいな大きさになれるのではと思って呼んでみた。
「はいもちろん可能です。少々形が変わりますが」
火車ちゃんの炎が燃え上がると形を変え馬車のようなものに変わった。
「おお、圧巻ですね‥‥‥これ猫ですか?」
「どう、なんだろう? 少なくとも猫ではないよね」
開いた口がふさがらなかった。が、すぐに先生を火車ちゃんの中に運んだ。
「皆さまも入りますか?」
「いえ私は大丈夫ですが優花殿は?」
「私も大丈夫‥‥‥かな」
「そうですか、ではお先に失礼します」
火車ちゃんはそういって透明化し帰って行ってしまった。
「しかし、あの天世でしたっけ? あの強さ一体何者なんでしょうか?」
「そうだよね、けどのあの戦い方どこかで」
まさか‥‥‥ね? だってあの人は確かに‥‥‥。ううんダメダメそんなこと考えるな、あの人はいない。邪魔するんだったら倒すそれだけ。
憑依を解除した私と刀だけを透明化させた沖田さんは横に並びながら会話を交わし家に向かっていく。
って刀だけって器用ですね!?
◇◇◇
「‥‥‥」
「どうですかその槍は?」
陰から天世は憑依を解除しフードを被った姿に戻るとムジナが現れ声をかけてきた。
「とても心地よい感触です。まことにありがとうございますムジナ様」
「それは良かったです。少し前に掘り当てたものを急遽改造及び改良したもですがちゃんと動きましたか」
天世はムジナに向けお辞儀をした。ムジナはそんなものに目を移さず不気味な笑みを浮かべたまま手のひら同士を叩いた。
「分かっていますよね天世、あなたの役割を」
「もちろん、俺はあなた方の駒です」
「よろしい。ではこれからも頼みますよ優秀な駒」
「はっ」
ムジナは姿を消し天世は上半身をあげた。天世は軽々と気絶している虎也を持ち上げその場から消える。
次回予告!
「やっぱり無理ですか」
「上長先生はなんで先生を?」
上杉謙信、否、上長直美が教師をする理由__
「桜の巫女お前が周りを不幸にするんだ」
「それは!!」
追い詰められる優花__
「早見ぃ今度こそ俺がぁ!!」
「毘沙門天の力をお見せしましょう」
「いきますよ‥‥‥憑依!」
白と青の龍をその身に纏う__
「だから武田、あなたは‥‥‥」
第六話【故に 決着 川中島】




