第一話 【死んで初めて 輝く 命の宝石】
仮面ライダー見ながらFGOやってたら突然浮かんできたアイデアを形にしたものです。※不定期投稿
「父さん!父さん!」
太陽が山の頂上に昇り夏の暑さも最高潮に上がった時、とある山岳付近で腹から生暖かすぎる血が流れて次の瞬間には死んでしまいそうな状態で倒れている男性が一人とその男性の腹を汗を搔きながら一生懸命両腕で抑えている7歳の女の子が居た。
「優‥花、もう‥‥やめ‥‥ろ」
男性が震えている手で女の子の手を掴んで、かすれた声を振り絞りながらそういった。
「で、でも‥‥」
「お前は‥‥これで‥彼女たちを‥‥救って‥や‥」
男性は腰からペンダントを取り出して女の子の胸に押し付けるように渡した。それをするとともに、男性がやることはやり尽くしたと言わんばかりに力が急激に抜けていって亡くなった。
「あああああ!!」
静かに男性の死をいたたむように雨は降り始めたがその山にはペンダントを力強く握った女の子の声が響いた。
◇◇◇__十年後
「今日もいい天気だなー」
人の魂が集まりやすいと密かに噂されているこの町、霊日市のある所に十人以上が一緒に暮らしても問題がないくらいには広い敷地を持った昔なじみの日本屋敷があった。
その屋敷の清めの土と呼ばれている白い土が敷き詰められて人が座られる石がいくつも置いてあり、桜の木が屋敷の中心に植えてられていた。
その中の一つの石に私__早見 優花は座っておにぎりを食べている。
自分で自分用に握った特に変わった部分がない塩おにぎりは塩気がちょうどよく舌で感じられて日差しがちょうどよく差し込むこの場所で食べることでよりおいしく感じられる。
黄みの薄い灰色のショートヘアーと髪の色と同じ色をより白を追加したような眼で着物を模したトレーナーを着ている私はふと首にかけているペンダントを見た。
「父さんがくれた、これ結局なんだろう。大事な物っていうのは分かるんだけど」
はぁ、と軽すぎるため息をつきペンダントをパカパカ開閉させる。ペンダントの中にはオバールカットされた宝石が一つだけ入りそうなくぼみがあるだけだった。
ただ、それが何を意味するのかは分かっていない。
私の父さん__早見 大介はなんで私なんかにこれを託したのだろう?
◇◇◇__数十分後
私は家の地下室に繋がる扉を開けて階段をリズムよく降りてゆく。地下室には石でできた祭壇があって、それを中心にして多種多様な実験器具たちに薬品たちがある。
私にはそれをどう扱うかを学校授業で多少は知っているがそこまで触れたことはない。というか知らない薬品もあるため怖いから触れられない。
他にも父さんが集めていた昔の英雄や偉人たちに関しての資料が大量に置かれている。
「タマいる?」
「イル、イル、ユウカ、ヨクキタ、ヨクキタ」
すると、声がすると共に私の足元に一匹の黒猫が歩いてきた、名前はタマ。タマの片足は機械で出来ていてる。喋れる理由は分からないが足に関しては父さんが片足をなくして倒れていたタマを保護して歩けるように改造を施した結果らしい。喋れるのはその副産物なのだろう。
「タマ、あの金庫どうなってる?」
私はタマを両手で拾い上げて撫でながら聞いた。
「シンテン、シンテン!キンコ、アイタ、アイタ!」
「へー開いたんだー‥‥えっ!?開いたの!?」
私は驚いた。それと合わせてタマが私の腕からぴょんと逃げるように下に飛び移る。
「ホント、ホント、イマカラ、アンナイ、スル」
「よっしゃぁ!!」
柄にもない大声で喜びながら前に歩いて行くタマの後ろ姿を追うについていく。てか、よっしゃぁっ!!て、恥ずかしい。数秒前の自分を殴りたい。絶対タマもなにこいつ、いつもの場所行くのに大声出してんだとか思ってるんだろうなー‥‥そう考えると顔が赤くなる。
◇◇◇
「ツイタ、ツイタ、アソコニ、キンコ、オイテル」
タマが案内させてくれた机には、ペンダントのくぼみにはまりそうな形をした水色と白色の宝石が一つずつと『日の本偉人伝』と書かれているほこりがかぶって少し古ぼけている本が一冊入っている金属製の金庫が置かれていた。
「なんだろうこの宝石‥‥」
私は白い方の宝石を手に取りそういった。とりあえずペンダントにはめてみたが特に変化はなかった。
「それにこの本も、わざわざ日の本って書いてあるし日本に関係してる偉人が書いてあるんだろうけどなんでそんなものを‥‥」
疑問に思いながらも私は試しに適当なページを開いてみた。
「これって‥‥沖田総司さん」
ちょうど開いたページには新選組一番隊隊長の沖田総司について書かれていた。その人は昔寝る前によく父さんに聞かされてかっこいいなと憧れていた。
「あれ、けどこれ‥‥違くない?」
少しそのページを見ていると沖田総司の生年月日が書かれているプロフィールの性別の欄で性別が男性のはずなのに女性と表記されていた。これを書いた著者が間違えたのだろうか?いや、沖田総司でそんなこと起きるのか?
父さんならこの時どうするんだろう。多分『相手の視点から深く探せ』とかいうんだろうけど。
私は少しだけ真剣に考えた。その結果は‥‥。
「うーん、無理だぁ!!私には父さんみたいにはできないな!!」
はぁと軽すぎてため息かと疑うくらい軽いため息をつき、次のページを開こうとする。
「ユウカ、カオ、カオ、クセ、デテル」
タマの肉球が私の頬をプニッと押し込んだ。その肉球の柔らかさが私のめくる手を止めてくれた気がした。
「ねぇ、タマ。私笑ってる?」
本を一度閉じて机に置くとタマと目の位置を合わせるように腰を下げて聞いた。
「ウン、コワクテ、カワイイ、イイ、エガオ」
「やっぱりか。治らいなよね、この癖は」
鏡で確認しなくても今の自分の表情は手に取るようにわかる。不気味で怖くて大体の同級生に怖がられる私の笑顔。この癖は小学五年の時‥‥いや、何でも‥‥ない。
その時、白い宝石が一瞬黒く光り、不気味な骸骨が浮かんだことはこの時の私にはわからなかった。
◇◇◇
少しして玄関からチャイムがしたため、白い宝石だけポケットにハンカチに包ませて突っ込ませてタマも一緒に駆け足気味で歩いている。
玄関の門に近づくと門に寄りかかりながらスマホを見ている青いチノパンツに白のブラウスを着ている私の唯一といっていい友達で親友の八波 千華が立っていた。そして、こっちが近づいてきているのに気づいて片手を大きく振った。
「なーは、急に何?」
なーはというのは千華の愛称である。
「ん-いや別にこれと言って用はないけど、なんか久々ゆうっちと散歩したくなってさ。今、暇?」
「暇だけど、流石に急すぎない。せめてメールで‥‥」
「まぁまぁそこは気にしない気にしない。タマもそうだよね」
「ニャー」
千華はタマを軽々と私とタマの目が合うように持ち上げるとタマは空にも負けない明るい笑顔で鳴いた。
「もうタマー」
「よし、そういうわけだからレッツラゴー!」
「ちょっはやすぎ!」
私は千華にいきなり力強く腕を引っ張られてあせった。それと同時に嬉しかった。千華といると心が温かくなる。千華の明るすぎる性格もあるんだろうがそれ以上の何かが私の心をほっとさせてくれる。
けどさ、いくら何でも力強すぎでしょ!!結構必死に抵抗してるのに全然手ごたえ感じないんですけど!!バカ力か!!
「ゆうっち、今あたしのことバカって言った?」
「へ?いいいってななないけど?」
勘もいいのかよ!!知ってるけど!!
◇◇◇___とある路地裏にて
黒装束の40代くらいの細身の男はどこからともなくドブのような色をした水晶玉を二つ出現させた。
すると、水晶玉を触媒として一つは黒いオーラを全身にまとった鬼の仮面をかぶっている落ち武者が、一つは実体のある影が生まれその影は男が投げ捨てた水晶玉と同じ色の宝石を貪るように取り込みスーツを着た20代くらいの男性へとなった。
「あのお方から授けてもらった大切な魂石です。大事に扱ってくださいよ」
細身の男がどこかうらやましそうな目でスーツの男にそういうとスーツの男はコクッと頷いた。
「よろしい。ではあなたたち二人に仕事を与えます。この写真に写されているペンダントを探して殺して奪いなさい。またその際ペンダントの所持者が白やその他の色の魂石を持っていたらそれも奪いなさい。あぁ白の方はついででいいですよ。ですがそれ以外の色の__英雄の魂石は喰わないでくださいね」
細身の男はそれだけ言い残し煙となってこの場から消えた。その場に残された二人はつぶやいた。
「仰せのままに‥‥」
と。
◇◇◇__散歩道中
「そういやさ、なーは今日は道場お休みの日だっけ?」
私はちょうど持っていた塩おにぎりを食べながら千華に聞いた。
道場というのは千華のおじいちゃんが開いてる普通じゃないと絶対に断言できるほど変わった道場で剣道や柔道を学べるのはまぁ普通だろうが斧や大鎌、クナイ、七支刀の使い方を学ぶことができる。
そういやたまにCQCやエアガンもやったりしたような。
私はあんましエアガンは得意じゃないからそこらへんの記憶は曖昧だ。
「うん、休みだよ。ゆうっちもたまに来なよ。相手になってあげるよ。木刀か‥‥短刀でね!」
千華は私の顔を横から覗くように目が焼けるくらい明るい笑顔で私を見ていた。
「あーうん木刀だけはやめてほしい‥かなー‥‥」
「へーじゃあそういうゆうっちは何使うのかなー気になるなー」
「えっ!?とそ、それは‥‥‥‥ま、かな」
「ん?何かな、聞こえないなー」
千華はからかうように顔を上げ青くて透明でだからこそ美しい空を見ていた。
私はそのまぶしさが直視できなくてしていいはずなくてコンクリートに無意識に顔を動かしていた。
「大鎌だよ、私が使うのは」
その時の私の声はとても震えていた気がする。自分の使う武器をいうだけなのになんで私の身体は_心臓は_心はこうもぎゅと締め付けられるのだろう。
「ふーんそっかぁ。ゆうっちが大鎌使うならあたしは短刀使おうかなー。あっそうだ今からでも山の近くにある団子屋に行こう!そうしよう!!」
「えっ!?ちょ‥‥」
いきなり走り出した千華に困惑しながらもその背中を追いかけるようにタマと私も駆け出した。
◇◇◇__団子屋に行く道中、休憩
「はぁはぁ、ゆうっち速すぎでしょ。‥‥ほんと‥‥なんで」
「なーは大丈夫そう?これ、あそこの自販機で買ってきたんだけど飲む?」
私は千華が倒れている場所から100メートルくらい離れている自販機から買ってきた缶コーラをなーはにあげた。
「飲む‥‥けど‥さ、ゆうっち‥‥まだ‥‥走れるん‥‥でしょ」
「まぁあと2キロくらいは楽に走れると思う‥‥多分だけど」
確証はなかった。私は学校でも全力で走った経験があんまりない。それこそ普通の女の子になるために長距離走でわざと疲れた振りもしたことがあったが意味はなかった。
「ははっ、ゆうっちはすごいなぁ。もっと自信張りなって」
千華はおいしそうにコーラを飲みながら私の頬を軽くつついた。
「うん、そうだね、そうするよ。‥‥‥‥ね、ねぇなーはあれって何?」
私はさっきまでいた自販機の所に立ってこちらを見ている落ち武者のような恰好の人を指さした。恐怖で動けなかった。指が_足が_身体が巨大な力で力強く締め付けられているような感じがした。
「え?あれって何、ゆうっち?別に何もなくない?」
なーは、何言って‥‥もしかして見えてないの?私の頭に疑問が浮かんだ。ふとタマの方を見ると何かを警戒するように私の足に密着していた。
「だから、あれだよ‥‥‥‥え?」
また、指をさそうとするとそこには落ち武者の恰好をした人どころか誰もいなかった。幻覚だったのかなと思い目をこすって再び見てみた。やはりそこには誰もいなかった。
ただ一つ変わっていたことがあった。
それは‥‥‥‥私の身体の後ろから赤い血と共にするどい刀が飛び出していたことである。
「ゆうっち!??」
あぁなーはの困惑している声が薄れていく視界からかすかに聞こえてくる。
「なー‥は‥‥私」
前に倒れそうなのを千華は支えてくれて仰向きにさせてくれた。そんな状態の私は小さすぎる声を振り絞って言葉を発した。
「すぐ救急車呼ぶから!!待ってて!!」
千華はすぐにスマホを出していた。私のために焦ってくれている。けど、救急車が来る前に私はじきに死ぬ。身体が指先から徐々に冷たくなり感覚がなくなっていくのが分かる。父さんも同じ気持ちだったのだろうか、ここで死んだら笑っておにぎりを一緒に食べられるだろうか。あぁ、けどまだ‥。
「死にたくないなぁ」
そんな言葉が私の口からもれた時に私は見た。なーはに今にでも襲いかかりそうな殺意まみれの刀が天から振り落とされようとするのを。
「なーは!」
無意識に私は声と共に体を起こして千華を押しのけた。それが本当に無意識だったのかは分からない、誰かに引っ張られただけかもしれない、けど!‥‥千華を守りたいと思ったその心を信じたのは紛れもない真実だった。
◇◇◇
「おい、おい!起きろ!優花!」
その声で私の意識はぼんやりと目覚めた。目をゆっくり開くとそこには黒いケモミミの小学生くらいの身長の少年が立っていた。
「さっさと起きろ!」
水を上からぶっかけられた。シンプルに何の迷いも感じさせず頭にめがけて一直線に。
「何するんですか!!というか誰!?」
突然すぎる行動に驚いて横に倒れていた体を起こして少年の顔を見た。
「もしかして‥‥タマ?」
別にタマだという確証はなかった。ただなんとなく自分の心が目の前の少年をタマだと告げた。
「お前の視点から見たら正解だな。うん、何から話そうか、お前からしたらまず一つここはどこで何なのか、一つはあの落ち武者は誰なのか、自分はどうなったのかこれに関してはすぐに答えよう。お前は死んだ以上。で他には‥‥」
「え!?私死んだの!どういうこと!?」
少年__タマの口からさらっと告げられた『死んだ』という言葉に激しく驚き周辺の草花が揺れた。
「声でか、いやお前だって分かってただろう。あの傷は死ぬって」
「それは‥そうだけど‥もしかしてタマも‥!?」
「違う、ボクは神様だよ。だから死んでない安心しなよ、あとここはボクが生み出した独自世界だ。向こうの世界の一秒はここでの1分だから千華はまだ生きてる。最もここにはお前みたいな死人しか連れてこれないが」
「は、はぁ‥‥」
その説明を聞いて私は一度心の中で深呼吸をして状況やら諸々をどうにかして飲み込む。
「でだ、ここでゆっくり話したいところだが時間がない、詳しく話しは後でするとしてとりあえず一回お前をよみがえらせる。覚悟はいいな」
「へ?えぇぇ!!!」
何とか飲み込めたと思ったら再び理解が追い付かない情報を投げ込まれ頭が混乱する。死んだと思ったらすぐに蘇るってどういうこと!!右ストレートを耐えたらその上に右フックが叩き込まれた気分だよ!!
「それじゃあ、頑張れよ」
「だから、まず説明を!って身体光ってるんですけど!!」
身体が突然光り出したと思ったら目の前が真っ暗になった。周りを見渡すと前からロングローブを頭から被った私と同じくらいの身長の少女?がコツコツと音を立てながら歩いてきた。
「誰?」
私は質問した。少女の見た目としては大鎌を両手で構えており右肩に骸骨を模したと思われるパーツがついている。さながら死神のようだった。
「契約は一つだ、自分を信じろ」
「それってどういう‥‥あっ」
少女がそういうと腰のポケットから宝石が飛び出して私のペンダントにぴったりはまった。
「契約完了、告げよ『憑依』と」
「契約って何?」
「告げよ『憑依』と、告げよ『憑依』と‥‥」
少女に何を聞いても答えてはくれなかった。ただ『憑依』と言えとしか言わなかった。
「もう分かったよ!言えばいいんでしょ!」
「告げよ『憑依』と‥‥」
「分かったって!!『憑依』!!」
『憑依』というと再び体が光り出して目の前が見えなくなってく。その中で少女はこうつぶやいていた気がする。
「契約違反」
と。その言葉が何を示しているのかは私には分からない。
◇◇◇
「ゆうっち!!ゆうっちってば!!」
千華は当然倒れて脈を感じない優花の身体に語りかけるように触れている。その瞳には涙がにじんでいる。
「‥‥」
それを横目に落ち武者は千華に刀を振り落とそうとする。邪魔者は消すただそれだけ。
そう思って刀を振り落とす、すると突然倒れている優花の身体が光となって消えた。そして、
《死を呼ぶ 鎌 今現れる!》
その不思議な声と共に刀は突然現れた大鎌と接触し火花が散る。
「‥‥!」
落ち武者はその現象見て警戒しを初め後ろに一歩下がった。元々落ち武者が立っていた所には黒い腰マントに左肩に骸骨の衣装をまとって大鎌を構えている早見優花、その人だった。
「貴様は何者だ‥‥」
「私はあんたに殺された死人だ、生まれたてのな!」
次回予告!!
「本当に死んでるんだ‥‥私」
「教えてタマ、あなたやこれは何なの?」
「お前に頼みたいことがある」
「死んでてもゆうっちはあたしの大事な親友だよ!」
「私は親友のためにあなたを倒す」
「さぁ、咲き誇れ!!」
第二話 【今から 始まった 英雄伝】