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ソセイソル 〜Uninvited sin〜  作者: おやさしい海月
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第2ラウンド




自分の訓練校に帰投した汐川は現状報告をしに飯伏大佐の元へ訪れた。


「――以上が我々第3部隊が確認した内容です。」


飯伏大佐は机に座り顔をしかめる。


「1000も削れないか……。」


その発言に汐川は唇を噛んだ。


「汐川訓練生。君は今を持って卒業とする。今後は第2次迎撃作戦に参加してもらう。場所は京都福知山空軍基地だ。兵庫の迎撃部隊は既に既存の部隊がついている。」


休みがないのは汐川もわかっていた。だが初めての戦闘を経験した訓練生になんの労いもない。


「大佐。発言してもよろしいでしょうか。」


「構わない。続けろ。」


「今後の作戦において訓練生を即応部隊として用いるのはやめて頂きたいです。」


「君たち、第72期生は全員卒業していた。一日の猶予もなかったと能登教官から聞かなかったのか?汐川少尉。」


汐川の眉間に皺がよる。

身長162cmの後ろで結んだ長いポニーテールの明るい茶髪をしており可愛らしい容姿を台無しにするほどだ。


「失礼致しました。」


汐川は敬礼し部屋から出る。

外に出ると待っていた教員が京都の第2次迎撃作戦の作戦書を渡してくる。

汐川はそれを強引に受け取って格納庫へ向かって早歩きで向かう。

時刻は21時をすぎていて訓練校内の人は少ない。


格納庫へ着くと自分のS-88が絶賛補給中であった。

見に来た汐川に整備士が声をかける。


「汐川さん!補給はあと数分で終わります。第2次迎撃作戦に参加されると聞いて急ぎ行っておりますので暫しお待ちください。でも帰ってすぐ出撃とは大変ですね。」


「そ、う、ですよ!命からがら逃げてきて部隊の大半を失って!私しかここにいない…。」


「心中お察しします…。」


汐川は格納庫を見回す。

出撃前は50機も並んでいたS-88も今や1機しかいない。

随分寂しくなったものだ。


汐川はストレッチを始める。

気持ちを切り替えなければいけない。

もう訓練生ではない。正規の戦闘機、人型機動兵器のパイロットなのだ。


さっきの整備士は持ち場に帰って行った。

S-88は装甲の応急処置も行われていて訓練機の備品で余った装甲板をつけられているため1部黄色になっていた。

黄色は好きな色だしまぁいっか。

汐川は格納庫に設置された休憩スペースに腰掛け、自動販売機で缶コーヒーを買った。


「はぁ……どうしよっか…。」


汐川は作戦書を開く、そこには大阪迎撃部隊が行っていたのと同じような作戦が書かれていた。


ミサイル攻撃で足止めし戦車部隊が人型機動兵器を支援。

人型機動兵器は腐食弾を装備し浮遊物体を各個撃破か。

なんてわかりやすい作戦か。



「汐川さーん!整備終わりました!」


汐川は重い腰をあげる。

そして缶コーヒーをゴミ箱へ入れる。

このごく普通な生活とはしばらくおさらばか…。

汐川は自身のS-88、4番機に乗る。

今思ったけど、4って不吉な数字だな。


システムのチェックは整備士が全部終わらせてくれている。

格納デッキの足場にいた整備士たちが手を振る。

汐川はグッドサインを出しながらコックピットハッチを閉じた。


カタパルトの天井には輸送機が着いていた。

今回はその輸送機に運んでもらう。教官たちの先発偵察隊のように。

滑走路のランプが赤から緑に変わる。

輸送機は固定されたS-88と一緒に出撃する。


「こちら輸送機AL-300。汐川少尉聞こえますか?」


「はい。こちら汐川聞こえます。どうぞ。」


「AL-300は京都福知山集結地点上空まで輸送した後、切り離しを行います。そこから着陸誘導にしたがってください。」


「汐川、了解しました。」


「はい。予定では21:38に到着です。」


「汐川、了解。」


たった、5分しかないのか。

汐川はコックピットの左手操縦混の下に貼られた写真を見る。初めてS-88に乗った時貼ったものだ。

それは第3部隊が結成した時の集合写真。

あのころは楽しかったな。

汐川の目に涙がうかぶ。


「生きて…帰ろう。絶対に。死んじゃダメだ。」


輸送機のパイロットはオープン回線のままだと伝えようとしたが止めた。それは無粋だろう。





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