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ソセイソル 〜Uninvited sin〜  作者: おやさしい海月
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大阪防衛作戦





「散開!散開!」


「長瀬君!そっちはダメぇ!」


「くそぉぉぉお!」


1番機こと長瀬は機体を回転させながら浮遊物体のプレス攻撃を避けた。無理な動作をしたせいで腰周りの関節に負荷がかかる。その一瞬の遅れを浮遊物体は突く。

飛ばされた板は1番機の胴体を貫いた。


1番機の四肢が接続部を失って四散する。

1番機:浮遊物体沈黙数32体


「なんで、なんでよ、なんで殺すの! くそぉ死ねぇえ!」


汐川は涙を浮かべながら操縦混を倒す。

ロケットエンジンで加速し浮遊物体の30m距離に入る。

すかさず、ライフルで腐食弾を打ち込む。


「お前らが悪いんだぞ!!」


腐食弾が当たった浮遊物体はドロドロになって沈んでいく。


黒井は道路とスレスレに低空飛行しながら市街地を抜けプレス攻撃から逃げる。エンジンを一瞬でも止めれば圧死。

黒井の額には汗がびっしりと浮き出ている。

黒井の3番機がとある浮遊物体の足元に着いた時、引きづられ鉄屑と化した戦車や迎撃車両と一緒に巻き込まれている参式:比叡を見つける。


やっぱりか…。

黒井はそのまま低空飛行をしながら腐食弾を打ち込んでいく。しかし、大小様々な浮遊物体たちの数は一向に減らず、人型機動兵器の数だけが減っていく。



「撤退しよう悠ちゃん。無謀すぎる。」


「そうだねっ!そうし…う…」

突如3番機との回線がおかしくなる。

原因は3番機の周囲が浮遊物体で囲われ電波が屈折しているからだ。

3番機は危機を察知し一気に上昇を始める。

対G装備が反応しスーツが膨らむ。

上昇する3番機を追うようにプレス攻撃が後に続く。

間一髪、抜け出した3番機へ上昇地点より大きい浮遊物体が遠くからプレス攻撃を放ち、3番機の下半身をえぐる。

3番機は姿勢制御を失いロケットエンジンの反動で回転しながら飛んでいく。


3番機:浮遊物体沈黙数40体



汐川はその姿を確認した。


「悠ちゃん…悠ちゃん!応答して!」


飛ばされていく3番機を追いながら連絡を続ける。


「明日香ちゃん……ごめんね。ごめん…」


かすれた声で聞こえた黒井からの通信後、3番機は爆発した。


「悠ちゃん!?悠ちゃ……あぁ…。」


4番機は反転する。


「やっぱり、全部全部全部…全部!!お前らがぁお前が!」


汐川は叫びながら浮遊物体の群れに突っ込んでいく。

浮遊物体は他の訓練生の機体に注意を向けていて汐川の接近に気づいていない。

汐川の弾丸が数体の浮遊物体を沈黙させる。

汐川はそのままの速度で別な浮遊物体へ攻撃を開始する。


訓練生たちは犠牲を出しつつも浮遊物体の数を減らしている。その数は微量とも。


汐川は腰部ジェットエンジンの噴射方向を切り替えながら空中でジグザグに飛行する。

直線でロケットエンジンを点火し加速、浮遊物体に横切るその刹那、流れるように攻撃する。

そして、機体の両足を使って軌道をずらし方向転換することで短時間の反転を可能にする。



〖残弾ゼロ、残弾ゼロ〗


コックピットのモニターでライフルの残弾表示がEmptyを示す。エネルギー残量も30%を切っている。


「これ以上は無理か…。せめて桐ヶ谷君の安否だけ。」


汐川は機体を浮遊物体の群れから大きく離してソナーを起動する。ソナー時はモニターに情報が出るため戦闘中に行うと邪魔になる。そのための行動だ。


レーダー探知機に2番機の信号は映らない。

他の訓練生の機体も映っているが数は50から13機まで減っている。


大阪市内の全貌を見渡せるとこまで来てわかったことがある。浮遊物体の群れはさっきまで4機が着陸した高速道路を飲み込んでいたことに。


「進君……。いや、違う。探さなきゃ!」


ここで皆死んじゃって私だけ生き残るなんて、そんな結果認めない。


レーダーにはunknown、未登録機も映っている。

先程の御影中尉の機体だろう。

では5番機はどこへ行ったのか?


でも、探すってどこを。

またあの浮遊物体の中へ腐食弾無しに突っ込む?

無理だ。1回補給しなければいけない。

中継地点が構築できないとすると基地まで戻るしかない。人型機動兵器は飛べなくとも歩くことができる。

最悪、歩いて帰ればいいのだ。


でも、その決断は生きているかもしれない仲間を見捨てることになる。



〖エネルギー残り20%〗



「ごめん、進くん。ごめんなさいごめん…なさい。」


汐川は涙を流し懺悔する。



飯伏大佐が行ったこの作戦参加者で基地に帰ってこれたのは汐川機のみだった。大阪防衛作戦は失敗に終わったが先発の迎撃部隊と後続の訓練生部隊が稼いだ時間により救われた命の功績は多大な貢献であった。

しかし、脅威が去った訳では無い。

大阪の残党は数を分け四方に散り戦線は拡大していくことになる。






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