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ソセイソル 〜Uninvited sin〜  作者: おやさしい海月
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板金加工機




全長15.2m、黄色と黒のテープが所々に貼られている訓練機が地面を蹴る。飛び出した訓練機は場内を駆け相手の同じく訓練機に対し合金製の歯を無くしたナイフで斬り掛かる。

相手の訓練機は左腕の装甲でナイフを受け流し後退した。


場内の離れた位置にはテントが設営されており訓練生達が座っている。


「進。どちらが勝つと思う。」


「桐ヶ谷。2番機はあと3手で負けるかな。」


桐ヶ谷と呼ばれた2番機は先程ナイフで攻撃した訓練機の事を指す。


「どうして桐ヶ谷が負けると思う。1番は防戦一方だぞ、ほら今のもそうだ。」


2番機が相手の1番機のガードを崩し、懐に入った。


「人型機動兵器はパイロットの性格や癖が反映されやすい。戦闘機と違ってな…。」


2番機は1番機の頭部にめがけナイフを刺そうとした時、場内にブザーが鳴って訓練機の動きが止まった。


「双方納刀!1番機の勝利とす。交代せよ!」


教官が2番機に命じる。


2番機の敗因は胸部装甲へ側面から殴られコックピットが振動、それによってパイロットが気絶したと判定されたからだ。

1番機は2番機が防御をせず攻勢に出たのを狙ったのだ。


「流石の動きだ。格闘科首席、長瀬透。」


「浮遊物体に格闘戦なんて出来る訳ないだろ。俺は抜ける。卒業に必要な訓練は全部受けてるしな。」


「ま、待て、進っ!私と戦う約束は!」


「お前が長瀬と組めばいいだろ。」


「ま待つんだ、シーンッ!」


進と呼ばれた訓練生は演習場を去り格納庫へ向かった。

そこには3年間共にした訓練用戦闘機S-70:シュミューラが格納されている。整備士は全員S-88の格納庫に移動し、ここには誰もいなかった。

進はS-70の右翼に登ってそこに座る。


「俺はさ、お前と空に上がるのが最高に幸せだった。人型機動兵器なんてあんな物…。」


進はS-70の翼をなぞって物思いにふける。

右翼には数々の無茶によりたくさんの傷が入っている。

コックピットの風防には小さく自分の名前が刻まれていた。

彼は右翼の上で寝転がった。

装甲の冷たさを全身で感じ、進はS-70と空に飛んでいるイメージを思い浮かべていた。

想像上で空戦していた時、格納庫内に光が刺した。

人1人がギリギリ入れるくらいの隙間分、隔壁が開き外から誰かが入ってきた。


「サボりか?珍しいな。」


「能登教官、僕に人型機動兵器は合いませんよ。成績を見たでしょう?」


「確かに進訓練生の機動実習における成績はギリギリの及第点だが戦闘機による成績はトップだ。その技術は人型機動兵器にも活かせるだろう。」


「そう簡単に言われても…。」


「進訓練生。戦闘機の有用性は近年減少傾向にある。AIとレーダー攻撃が主流になった。」


「確かに人は必要ありませんし、安価な機体とミサイルで十分でした。1ヶ月前くらいまでは…。」


「やらなければいけないのだ。浮遊物体に日本を壊されたくないだろ。」


能登教官が進の足元までやってきて降りてこいと合図した。

進が地面に降りた時、放送がなった。


〖緊急招集。訓練生は1棟5階視聴覚室に速やかに集合せよ。繰り返す―――〗


「進訓練生。行くぞ。」


能登教官と進は格納庫から出て駆け足で1棟へ向かった。

視聴覚室に全ての訓練生が集まり今朝の演説をした軍人が説明を始める。


「早速だが、この映像を見てもらう。軍関係者に公開されている浮遊物体を写した映像記録だ。」


スクリーンに映像が投影され右下には大阪防衛部隊に配備されているS-88:ホワイトホーネットが記録した物だと記載されている。

映像は1時間35分23秒、出撃から帰投まで。

訓練生には浮遊物体との戦闘中の映像を視聴させる。



人型機動兵器が接敵する前にミサイルによる面制圧を行われるが水で構成された円状のシールドを作ってそれを防ぐ。


部隊は生存確認と攻撃タイミングを逐次報告しあい、初めは5km手前で狙撃したが浮遊物体は自分の体表についた未知の物質の板を動かし腐食弾を防ぐ。

浮遊物体は弾丸が自分たちの脅威だと理解しているようだ。

狙撃がダメだと判断したパイロット達は覚悟を決めて接近戦を選ぶ。

浮遊物体は横一列の2層構造で並び壁を作って人類の建造物を破壊し地面を平にしながら移動していた。

人型機動兵器が接近する度に体表の板を伸ばして防御しつつ、その板をもう1枚増やして飛ばしてくる。

板が着弾した地面は六角形に凹み、攻撃の圧力が高いことを知らせる。

人型機動兵器の装甲に当たればひとたまりもない。

パイロット達は変則的な動きを駆使して攻撃を避け、腐食弾を撃つ。

浮遊物体に有効な攻撃可能限界距離はおよそ30m。それ以上離れると板で防がれるからだ。

浮遊物体は前進しながらも個体数を減らしていき、8000から7000近くまで数が減ったとき攻撃方法を変える。

足を止め、等間隔に広がり高圧力の板を真下以外の全方向に向けて一斉に発射。

人型機動兵器の映像が乱れる。

映像が復旧したとき機体ダメージの表記が危険を示す。

左上の部隊員の生存状態を表すグラフ中、7名がロストした。


軍人はそこで映像を止めた。



「訓練生諸君、浮遊物体の特徴は理解出来ただろう。」


そして、軍人は長々と話し出した。

要約すると、浮遊物体は六角形の厚さ不明な板を用いて攻撃してくる。そのプレスのような攻撃は当たれば即死。運良く致命傷で済むかもしれない。

2つ目は全方位へのプレス攻撃を使うということ。


会議が終了し、その場を後にする訓練生たちの表情は青ざめていた。








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