ラインアロー
ごく普通の体育館。
そこへ訓練生が集められていた。
彼らはこれから戦闘機の中でも上位の存在、人型機動兵器のパイロットを目指している。
今まで必要ないと考えられてきた人型ロボットがここ最近見直されてきたのだ。
技術の発展でレーダー兵器が強化されもはや有視界戦闘は必要ないとされており、有人の戦闘機や戦車、軍艦は次々と数を減らした。
逆に宇宙で組み立て運用する宇宙船の需要が高まり人類は宇宙にまで進出した。
そんな中での浮遊物体の襲来。
その浮遊物体にはミサイルが通用しない。核攻撃も防いだのだ。弾丸が当たっても水面に撃っているのと変わらず、どんな攻撃も有効打になっていない。
新たに開発された腐食弾も雨が降ってしまえば意味が無くなる。だが、敵を足止めできる点では有効だと言える。
そして、それを運用できかつ浮遊物体に接近できた機体が人型機動兵器であった。
S-88:ホワイトホーネット。
8年前から新型の開発は中止され本機もそろそろ退役かと考えられていた。
体育館の壇上へ勲章を大量につけた軍人が登壇する。
彼は整列した訓練生に一礼し話し始める。
「諸君、君たちはパイロットの課程を終えたにも関わらず戦闘機に乗りたくない。そうだろう?」
壇上の軍人がそういうと訓練生たちは頷く。
「機動兵器の訓練期間は3週間と短かったな。だが!時代は変わったのだ。たった1ヶ月で米国が、あの超大国が国土の8割りを失った。」
その言葉に列席していた米軍関係者は失笑する。
「我々に求められているもの、それは一刻も早く。かの侵略生物の排除することだ。よって、君たちの卒業を見送ることになった。それでも戦闘機に乗りたいと考えている訓練生は後で申請書を書くといい。」
その言葉に反応するものはここにいない。
「戦闘機動隊の人員は極わずかだ。今、大阪で10名の兵士が戦っている。浮遊物体と初めて人型機動兵器で戦い戦死した米国のアルンネン少尉を知っているか?彼は接敵してから3分で命を落とした。研究者たちは放射能を浴びすぎたと言っていたが私は断じてそうでないと確信している。何故なら彼は3分間で7体の浮遊物体を倒したのだ。」
体育館のスクリーンに浮遊物体の姿が映される。
「浮遊物体を倒すことは可能だ。殺すことはできなくともな。しかし、人員が足りない…。」
軍人は拳を固く握る。
「本校には訓練機2台しかないが米国の援助で人数分のS-88が導入されている。君たちには卒業後それに搭乗し前線で戦ってもらう。引き伸ばせた日数は10日間。その10日間で人型機動兵器をものにして見せろ!」
壇上の軍人は左肩に着いたワッペンを取り別な物へ張り替える。それは5年前に解体された隊の軍隊証。
羽を広げた白鳥と三本の矢印が合わさったものだ。
その後、彼は訓練生に向かって敬礼する。
訓練生は胸につけた訓練課程終了のバッチをしまい敬礼する。