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ソセイソル 〜Uninvited sin〜  作者: おやさしい海月
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幕間 部隊の馴れ初め




俺はイライラしていた。

以前の上官に呼ばれ、部隊の再編で配属部隊が移動されて初めて移動先の部隊員が集まった。それまでは良かった。なんせかつての仲間が集められた訳だ。

しかし、気に食わないのがあの女だ。

御影那智(ミカゲナチ)。俺を犠牲にしてまで生き残ろうとした罪深い女。


奴は今、薄ら笑いを浮かべながら足を組んで俺を見ているのだ。


「衛人くん。私を殺さないのかな?」


ニヤニヤしやがってコノヤロウ。桐ヶ谷みたいに口が悪くなりそうだ。


「いつもみたいなクールなキャラが崩壊しているよ。」


くっそ、今日は歓迎会だってのに上手い酒が飲めやしねぇ。

奴はあれでシラフだって言うんだから余計に怖すぎる。御影大尉は既にジョッキ5杯は飲んでいる。俺はと言うと2杯でクラクラしている始末だ。

桐ヶ谷に関しては俺が1番強いって言いながら既に寝ている。


「なにか言ってご覧よ。うーん?何も聞こえないなぁ。」


「大尉。ほんとに酔ってないんですか……。」


「酔ってない。酔ってない。」


御影大尉のニヤニヤ度は限界突破している。


「じゃあ、立ってみてくださいよ。」


「汐川ぁ!いきま〜す!」


汐川は御影大尉をホールドアップして椅子から持ち上げて、手を離す。するとフラフラと机に寄りかかった。


「やっぱ、シラフじゃないでしょ!」


「汐川、ない〜す。」


汐川は……御影大尉より酷い状況だ。


「衛人くん…。君って人は強運の持ち主だよ。あの時は死んでしまっているだろうと本気で思っていたんだよ?」


御影大尉は暑くなったのか軍服の上着を脱いで黒いタンクトップと豊満な…。…ボディを見せる。


「あの時は桐ヶ谷に助けてもらいました。それがなかったら今頃は墓の中ですよ。」


「中身のない!」


「黙れ、汐川!酔っているにも程があるぞ。」


だめだ、今まともなのは俺だけかもしれない。


「おつまみが無くなったねぇ。なにか作ろうか?」


「大尉、俺も手伝いますよ。」


「包丁で刺す気かな。」


「いえ、上官にそんな事はしませんよ。」


俺と御影大尉は部隊宿舎のキッチンへ行く。そこには歓迎会を始める前に汐川と御影大尉が作った料理のあまりの材料が置いてある。


「肉はもういらないから、あんかけの野菜炒めでも作ろっか。」


御影大尉は酔っているのに野菜を切り始めた。


「あ、あの。俺やりま」


「いっ…。」


案の定、御影大尉は指を少し切った。俺は腰にいつも身につけているサバイバルキットから絆創膏を取り出す。


「付けているソレ。気になっていたがまさか救急キットとは流石と言うべきかな。」


「いえ、昔からの癖です。あとは良いですよ。指示だけください。」


その後は御影大尉の的確なアドバイスによって簡単に料理を作ることができた。


「やった〜。追加だァ!」


「貢献してない人にはあげないぞ。」


「進の意地悪……。」


御影大尉はソファに座るなり眠ってしまった。

汐川は俄然食っているが。






「なぁ、汐川。なんで俺たちなんだ。」


「1次の生き残りだから。」


「それだけか?」


「指揮官も死んで、統制も取れなかった戦場で生き残った。それだけでも凄いことだよ。」


「俺はおまけな気がするよ……。」


「そんな悲観しなくていい。選ばれた以上、なすべきことを為せ。ただそれだけさ。」


目を閉じながら御影大尉が発言した。

寝ていたはずでは!?


「大尉の言う通りだよ進。私だって前までは長瀬くんや、悠ちゃんの復讐で戦ってたけどそれは取り返しのつかないことでもあるしさ。災害に何言っても無駄だよ。」


「そう…だな。」


災害か。そういう風に考えたことはなかったな。向こうには殺したいっていう確固たる意思があると思っていた。

宇宙人災害、か。

人間が宇宙に進出したからこその弊害なのかもしれない。


「ご馳走様です。美味しかったよ、ありがとね。」


「全部食ったのかよ。」


汐川は洗面台の方へ行ったようだ。

途端に静かになったリビングで俺は考えた。いつになったら自由に空を飛べるのだろうかと。


「道は続く。どこまでも……それが空の先だったとしても。」


「御影大尉、寝てないですよね。」


御影大尉が翡翠のように深い緑の目を細めてこちらを見る。その目は俺の悩みを嘲笑っているかのようで、悔しくて、でも尊敬してしまいそうな感覚に陥る。


「ようこそ。Ludens(ルーデンス)へ。」








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