第2次迎撃「山城作戦」
京都福知山基地にある集結地点には160名の戦闘機、人型機動兵器パイロットが集まっていた。
S-90:ブルービー6機
S-88:ホワイトホーネット100機
S-86f:ヘルウォーカ12機
S-86c:ヘルウォーカ2機
参式:比叡30機
護式:金剛10機
「諸君、本作戦を指揮する石野部中将が激励をくださる。」
部隊ごとに肩のペイントを変えた160機が整列している。
その前列の前に格納庫の足場に乗った石野部中将が現れる。
中将はライトで照らされた。
「諸君も理解している通り大阪は飲み込まれつつある。浮遊物体を野放しにしておけば瞬く間に日本という国は無くなるだろう。被害を拡大させてはならぬ。ここで食い止め、普通という日常を取り戻す。全隊員の奮闘を期待する。全機、出撃!!」
石野部中将の号令後、部隊は滑走路へ行軍していく。
山の上に作られた基地から大阪方面へ輸送機で移動、次に浮遊物体の群れの背後に降りて掃討を開始する。
桐ヶ谷と進は背後に降下する掃討担当A中隊に配置された。
汐川は背後への注意をそらす前衛担当D中隊に配置。
作戦開始時刻23:00まであと10分を切ったとき通達が各中隊長に送られる。
「A中隊、各機に連絡。こちら中隊リーダー、松枝中佐だ。第1次迎撃作戦の詳細レポートが完成し新たな情報がわかった。最大10mと確認されていた浮遊物体の大きさが更新された。更新サイズはおよそ30m、1次の帰還兵からの報告を元にされているから厳密には不明である。」
「こちらA中隊、第2部隊1番機田代中尉だ。私の考えるには大型浮遊物体の沈黙は最後に回すべきだと、理由は単純。時間をかけていられないからです。」
「よし、田代中尉の話は聞いたな。大型は後回しだ。絶対に関わるんじゃない。」
〖こちらコマンドポスト。作戦開始時刻となりました。皆様の健闘を祈ります。オーバー。〗
「A中隊、降下開始!!」
松枝中佐の号令で輸送機から切り離された中隊40機が一斉に降下していく。他の中隊も降下し総勢160機の人型機動兵器が雲を抜け現れる。
ライフルを装備した部隊が一斉射撃を初め数体の浮遊物体を停止させ、その手前に躍り出る。
その部隊は一瞬にして潰された。
対浮遊物体戦はそう単純ではない。
照準が振動で揺れる。高度5000mからの降下だ。地表まではおよそ1分弱。その時間で降下地点を見つけ浮遊物体の背後を取らねばならない。
「第4部隊、私に続け!」
部隊リーダーの松熊大尉が我々に号令を出す。
進と桐ヶ谷を含むA中隊第4部隊は2000mで切り返し浮遊物体の背後へ移動。
「第4部隊、停止。前衛担当のD・E中隊の連絡を待つ。」
第4部隊は浮遊物体から3km離れたところへ着陸し合図を待っている。
「隊長。さっきのライフル隊ってどこの部隊なんでしょうね。」
「私語を話すな。作戦に集中しろ。」
「了解しましたぁ〜。」
その後、3分程連絡を待つが前衛からの報告はない。
「おかしい……。」
松熊大尉は顔をしかめる。
浮遊物体の気を引くくらい2分で十分だろう。
「お前たちはここで待機しろ。確認してくる。万が一、私が3分経っても帰ってこなければ順次攻撃を開始。いいな?」
松熊大尉のS-88は単独で上昇し浮遊物体の群れの真上へ向かって飛んで行った。
俺や桐ヶ谷の生存者組はわかる。
奴らと戦うのがどれだけ過酷なのかを。
たかが全長10m。我々の有効射程は30mに対して浮遊物体のプレス攻撃の射程範囲は未知数。短い時もあれば100mを超える場合もある。間合いは感覚で覚えるしかない。
また、ミサイルの牽制射がない場合における浮遊物体の通常速度は60km/h程度だと言われており最高速は270km/h。対して人型機動兵器の瞬間移動速度は150km/h。
問題は奴らの攻撃速度にある。
浮遊物体の弾速は測定できていないが人型機動兵器の瞬間移動速度よりも早いのは分かりきっている。
今作戦で何名が帰還できるのだろうか。




