水に映る村(貝人)
祖母の家の近くには大きなダムがある。
ダム建設時、当時住んでいた村人達は最後迄反対運動をしていたと言う。
ダムが出来てからは自殺の名所として地元では恐れられていた。
ダムの中に沈んだ村に誘われたんじゃないかと噂になっていた。
水質調査の仕事の為、そんな曰く付きのダムに来ていた。
「あのダムに近付くのはやめなさい。戻ってこれなくなるよ」
「おばあちゃん迷信だってば」
「菫ちゃんと聞いて。私の息子はダムに行って帰らなかったの。あの子が居なくなったのよ・・・」
祖母は強い人だ、祖母が泣いた姿を初めて見た。
「おばあちゃん泣かないで、ちゃんと帰って来るから」
私は祖母にそう言って仕事に出た。
「ここかあ、凄く綺麗。こんな場所で自殺何てバカな事を・・・・この景色を見て感動しなかったのかな? 」
「こんにちわ」
後ろから声がした。立ち入り禁止のこの場所で
「君此処は危ないから立ち入り禁止よ。帰らないとだめよ」
「帰った方が良いのは菫お姉さんだよ。」
冷たい風が頬を撫でた。
「何で私の名を・・・」
「花苗さんに宜しくね、水に引き込まれる前に帰るんだよ」
振り向くとそこには誰も居なかった。
水に映る村の中から手招きをする人が見えた気がした




