空宙ぶらんこ
宙ぶらりん 空宙ぶらんこ
腰掛けるピエロ 支える 2本のワイヤー
いったい 何処に繋がっているのかしら
宙ぶらりん 空宙ぶらんこ
精いっぱい 身体を使って 前へ前へと
でも何故かしら 前へ行く度 次は後ろへ
気持ち ウラハラ ピエロ ゆらゆら
宙ぶらりん 哀れなピエロ
遂に ぶらんこから 飛び出した
わァ キャあ オオぉ
観客達は 歓喜にも似た悲鳴をあげる
宙を舞う 哀れなピエロ
両手を 懸命に伸ばす
掴んでくれる アテは無い
観客達は 口を揃える
「馬鹿だナァ 座ってりゃ落ちるこたァないのに」
生まれたときからあったわけじゃないけど
いつの間にか座っていた ぶらんこ
皆んなより上手に座れるように頑張った
金ピカの ぶらんこ が羨ましかった
ぶらんこ を揺らせば
どんな景色が見えるのだろうと ワクワクしていた
何処まで手が届くのだろうと ドキドキしていた
でもある時 気付いてしまった
皆んな同じように 揺れていることに
風に吹かれる 芒のように
雨に打たれる 楓のように
平等だよ 空宙ぶらんこ
違うのはワイヤーの長さだけ
そして ピエロはピエロになっていた
落ちていく 堕ちていく
墜ちていく オチていく
拳を握りしめ 必死にもがいて
落ちていく 堕ちていく
墜ちていく オチていく
額に汗を 滲ませながら
奥歯をギュッと 噛み締めながら
哀れなピエロ 笑っているよ
涙を湛える その瞳には
ひどく鮮やかな景色が広がっていて
幸せそうに 笑っているよ
― グしャりッ ―
音が響く その瞬間も
夢見心地で いたんだろうネ
宙ぶらりん 空宙ぶらんこ
虚ろな目をした観客達を乗せて
まだ 揺れてるよ