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迷宮の分析者  作者: 店長
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第8話 探索者ギルド

 惟ねえが心配そうに見送るのを後ろに、転生の間を出た俺は神殿の人の案内に従い進む。転生の間から美しい石造りの廊下を歩いて行くと、石柱が並ぶ通路へとつながっていた。


 石柱も装飾がされており、ギリシャあたりの神 殿をきれいに復元し、小ぶりにしたようなつくりになっている。


 石柱の間から外を見てみると、整備された石畳の道が、先に見える大きな門へとつながっていた。

 門には、門番らしき白い鎧をきた人が二人たっている。腰には剣を携えている。門の外にも門番がいるのかもしれないが、神殿の規模からすると門番が少ないように感じる。


 ここは、王城もあり、最も上位と言われるロイヤルエリアのはずだからエリアに入ること自体が制限されているのかもしれない。


 そのまま石畳の通路の前へと進み、再度全員そろっているかを確認される。


 確認が終わると、石畳を門へと進む。石畳に出て周りを見ると、この神殿は小高い丘の上にあるようだった。


 左手にドームくらいの美しい城が見える。西洋の城のようなデザインで、きれいな白い壁と鮮やかな青い屋根に目をひかれる。前世で海外旅行に行ったことのない俺は、初めて見る建造物に少し感動していた。他の生徒も驚いているようだ。海外にもここまで美しい城はないかもしれない。


 そして、城以外には大きな壁が見える。高さ二十メートル以上ありそうな石? の壁で、ここから見える範囲ではずっと壁が続いている。ロイヤルエリアというのは、あの壁に囲まれている部分のことらしい。この世界の文明がどの程度のものか分からないが、人の手でつくれるのだろうか?


 壁を眺めながら歩いて門へとつくと、俺達に色々と説明をしてくれたクルンさんがいた。他のグループを担当した神官らしき人が三人と、転生の間で説明してくれたフレッドさんにシェシルさんもいる。

「皆様、どうかお気をつけて。これからの活躍を期待しております。」フレッドさんが、そう言うと、全員でこちらに頭を下げてくる。


 地球からの転生者からだからか、転生者皆にそうなのか分からないが、本当に親切に対応してもらったと思う。世界の事情や迷宮神とやらの神託があったからとは言え、新しい生活が始めることができるのは彼らのおかげだろう。いつかお礼くらいは言いにこれるといいが、ここは普通に来れるような場所ではないようだ。そんなことを考えながら俺は彼らに頭を下げ返し、門をくぐる。


 門をでると七、八メートルくらいありそうな大きな土の道が穏やかな傾斜で続いている。道はきれいにならされており、両側には三、四メールの木が並んでいる。前世の森林公園のような感じだ。


 体感で二十分程その道を進むと、四つの道が交わる交差点のような所にでる。その内の一つをさらに二十分程進んでいくと、神殿から見えた大きな壁へとついた。道がひらけ広いスペースがあり、壁には高さ・幅ともに四メートルくらいありそうな門が四つ並んでいる。扉には、転生の間にあったものに似た幾何学的な模様が描かれている。各門には神殿にいた門番と同じ格好をした人が同じようにそれぞれ二人ずつ立っている。


 その内の一つの門の前で少し待たされる。神殿を出て、最初の内は色々と話していたグループの面々も少し歩き疲れたのか立って待っている。


 先導してくれた神殿の人が門番と話すと、門が開かれる。門は石造りに見えるが、扉は見た目に反して軽いらしく門番が軽々とあけている。


 門の中を覗くと、白い空間になっている。霧や靄ではなく、転生するときにいたような白い空間だ。


 俺達は案内されるままにその門へと進んでいく。少し緊張しながら門へ入ると白い光につつまれた。


 光が消えると、目の前には門をくぐる前とは全く違う光景が広がっていた。


 神殿から歩いたような道だが、その両側には土の壁でつくられたような大小様々な大きさの店と思われる建物が並んでおり、多数の人が歩いている。木綿のような布でできたゆったりとしたシンプルなつくりの服を着ている者、ローブのようなものを纏っている者、何かの皮でできたような鎧をつけている者と様々な服装の人が歩いている。槍や剣といった武器を持っている人も多い。本当にゲームやファンタジーの世界の中に迷い込んだような光景だ。


「ようこそ、転生者の皆様。」

 目の前の光景に驚いていると、突然声をかけられた。


 声のした方を見ると、緑の長い髪を片方の肩に流すようににまとめた二十代後半くらいの女性が笑顔で立っていた。白いブラウスの様な上着に紺色の長めのスカートを着ていて、かなりの美人だ。


「私、探索者ギルド村エリア西支部のナビルナと申します。ここからは私が皆様の案内をさせていただきます。まずはギルドに向かいますので、ついてきてください。」と言って、隣にいたここまで案内してくれた神殿の人に一礼すると、彼女は歩きだす。


 促されるままに俺達はついていく。通りを歩いている人からは俺達の格好が珍しいのか、かなり見られている。制服のような格好をした人は他にいないので目立つようだ。


 通りを歩く人の格好や店の前に並べている何かの肉や野菜、武器屋のような看板を出している店など、周囲からの視線以上に気になるものも多いが、遅れないようについていく。


 通りを進むと、道のつきあたりに体育館くらいの大きさの建物についた。通りに並ぶ他の店とは違い、白い壁でできた建物には頑丈そうな木でできた扉があり、開け放たれている。


 その中に入ると、剣や弓をもち、皮でできた鎧をつけた、いかにも戦闘職といった人が数名いて、こちらを見ている。


「ナビーちゃん、そいつらが例の連中かい? 」

 その中の一人が、ここまで案内してくれたナビルナさんへと声をかける。

「そうですけど、勧誘はまだですよ、キーダさん。」

「分かってるよ、こっちだってどんな職業か分からない奴に声なんかかけねぇよ。それよりも営業さ。ビギナーの諸君、一人、大銅貨二枚で俺達のパーティーが迷宮につきそうぜ。稼ぎは均等でいい。早い者勝ちだぜ。」

 片手にこぶりな丸い盾をつけ、腰に剣を携えたキーダとよばれた男は俺達に向かってそう、声をかけてきた。


 どうやら有料で迷宮の案内をしてくれるらしい。


「そういうのもまだです。それに明日、『赤い鷹』の皆さんが案内をすることになってます。」

 ナビルナさんはそう返す。


「ちっ、あいつらよりも俺達の方が稼がせてやるのによ。まあいい、迷宮のいろはを知りたい奴は声をかけてきな。」

 そう言って、隣の食堂のような場所に歩いていった。


「すいません、皆さんの案内や勧誘をしたい人達がけっこういるんです。でも全員がいい人とは限らないので、気をつけてくださいね。」

 迷宮のことを全く知らない俺達を迷宮に案内することで金を稼ぐか、使えそうな職業がいれば勧誘する、まぁまったくの素人の俺達にとっても悪い話しというわけではないだろう。


「皆さんには明日、赤い鷹というパーティーに案内してもらって、迷宮の基本を勉強をしてもらうことになってます。費用はギルドもちなので気にしないでください。」

「あっ、それとここが村エリア西、通称西村の探索者ギルドです。探索者ギルドというのは、迷宮攻略に挑む探索者の助けをするところで、迷宮の情報を提供、パーティーの斡旋、仕事の仲介をしたりするところです。他にも……」


 ナビルナさんの説明によると、探索者ギルドは国営で、探索者の支援をするところらしい。迷宮に挑む者は、まずここで探索者登録をしてからでないと迷宮には入れないらしい。登録した探索者には、上からS、A、B、C、D、E、F、Gというランクがあり、ランクによって入れる迷宮が決まっているらしい。これは、無謀な挑戦をし、探索者が命を落とすことを防ぐためで、Eランクより上になるには試験もあるらしい。


 一通り説明を終えると、

「これから皆さんには探索者登録をしてもらい、その後、皆さんがこれから一ヶ月住むところに案内しますね。」


 俺達はナビルナさんに案内され建物の奥のカウンターらしきところへ向かう。

 カウンターは三つあり、それぞれに別れて登録をする。


 登録に必要なのは、名前、性別、年齢のみ。

 迷宮なしでは生活できないこの世界では、迷宮に入るための資格というのは、誰でも持てるようになっているらしい。


 最後に職業を決めるときに使った石板を持ち運びできるようにしたような小さな石板に手をふれるように指示される。


「はい、登録終了です。ステータスを確認してみてください。」とカウンターで登録を手伝ってくれたダニエルさんという、六十前くらいの白髪まじりの男性に言われ、ステータスを見てみると、



 ソウ   17   男   村エリア   G


【職業】   分析士

   装備可能武器    ーー


【スキル】   分析Lv1   睡眠耐性Lv8


【称号】   転生者



 今まで空欄だったところに、居住エリアと探索者ランクが表示されていた。


「居住地と探索者ランクはステータスカードでの表示を求められることもありますので。」


 居住地が分かれば、ある程度資産の推測ができるし、ランクで探索者としての実力も分かるということだろう。


 ダニエルさんにお礼を言い、ナビルナさんの元へと戻る。

「皆さん、登録を終えられたようですね。これから皆さんを家まで案内するのですが、その前に少し早いですが、夕食はいかがですか? 今日は、ギルドよりサービスさせていただきますので。」


 そう言われると、空腹を感じる。今まで、新しい世界ということで緊張していたのか感じなかったが、この世界に来てからけっこう時間がたっていると思う。その間、飲み食いしていない。


 反対する者もなく、テーブルや椅子が沢山ならぶ食堂のようなところに案内される。五十名くらい利用できそうだ。


 ギルドの中は、入り口正面にカウンター、左手に食堂、右手に掲示板や本棚のあるスペースがある。二階にはギルド職員や、パーティーで利用する会議室のようなものがあるらしい。


 食堂は、夜には酒場にもなるらしく、もう少ししたら迷宮から帰った探索者達で混んでくるらしい。


 メニューは、パンに肉が多めの野菜炒めに、スープだった。何の肉か分からないが、タレでよく味つけされていてうまい。スープも野菜とベーコンのようなものが入っており、少しあっさりとした味つけだが、空腹もあってすぐに飲み干した。

 この世界でも食事は楽しめそうだ。


 他の生徒は、思い思いに話しながら食べている。俺は、絡んできた奴がいたりと、何となくこのグループでういている。食事を終えて、少し時間もあるようだったので、掲示板と本棚の方を見に行ってみた。


 掲示板には、依頼のようなものがはってあるのだが、その多くは畑仕事の手伝いや、店の手伝いなどの依頼が多々ある。中には採集などの依頼もあるが、数は少ない。


「気になることがありましたか? 」

 意外に思って、掲示板を眺めていると、ナビルナさんに声をかけられた。

「あっ、いえ、思ったより迷宮に関する依頼って少ないんですね? 」

「ああ」とナビルナさんは少し苦笑いをして、説明してくれる。


「これは、村エリアならではなんです。ここにいる探索者は探索者になりたての人や、経験の少ない人が多くて、迷宮探索だけでは食べていけないことがあるんです。そういう人にあわせて、こういう依頼があるんです。逆に農家の人で、忙しいとき以外は迷宮に潜るなんて人たちもいます。」


「そうなんですね。農家ってことは、迷宮産以外にも食べ物ってあるんですね? 」

 考えてみると、迷宮に野菜というのも違和感がある。


「はい、村エリアの外側は農地になっています。」

 ということは、国の一番外側は農地か。


「国の外ってどうなっているんですか? 」

 気になっていたことを聞いてみる。この世界に国は一つ。その外はどうなっているだろうか?


「国の外には、多数の小さな部族が存在し、彼らの多くは、決まった迷宮のそばで生活しています。その迷宮から採れるものを使って交易したり、生活したりしています。そして、彼らが暮らす場所より外側は確認されていません。」


「確認されていない? 誰も試しに行かなかったんですか? 」


「いえ、何人もの人が試そうとしましたがダメでした。どうやら空間がおかしくなっているらしく、途中から進めなくなるようなんです。」


 この世界の果てはそういうものらしい。


「迷宮や世界のことが分かる本とかってありますか? 」本棚を指差しながら聞いてみる。


「世界のこととなると、村エリアにはありません。あそこに並んでいるのは、魔物についてや、武器のカタログなどです。上位のエリアに行けばあると思うのですが。」


「西村にある迷宮についてのっているものは、ありますか?」


「各迷宮の特徴と出現モンスターがのっている簡単なものなら、カウンターで大銅貨二枚で買えますよ。詳細な地図になると銀貨二枚以上になってしまいます。」


 この世界の通貨は、


(銅貨十枚=大銅貨一枚)

 銅貨百枚=銀貨一枚

 銀貨百枚=金貨一枚

 金貨百枚=白金貨一枚


 となっている。

 一食、銅貨五枚くらいで食べられることから迷宮の詳細な情報はやはり高いらしい。


 俺は、カウンターで大銅貨二枚払い、各迷宮の特徴などが載ったものを買う。

 銀貨二枚が全財産の俺にとっては大きいが、情報は手に入れておくべきだろう。


 買い終えると、全員の食事も終えたようで、家へと向かうことになった。


 ギルドを出て、通りを十五分程進み、細い道に入ってさらに十五分歩くと、土の壁でできた長屋のような一階建ての建物がいくつも並ぶ場所に案内された。


 建物には、五つの扉がついている。一棟、五部屋のようだ。


 正直、個室なのは助かった。

 このグループで一ヶ月住むと言われたらどうしようかと思っていた。


 一人一人部屋に案内される。俺は、端の部屋だ。

 中にはいると、六畳ちょっとの木製の床の部屋に簡単な洗面所にトイレつきだった。部屋の隅には小さめのベッドが置いてある。天井にはランプのようなものがある。水は外の井戸の水を使うらしく、水質は飲料水として問題ないとのことだった。快適な部屋とは言えないが、家賃なしで一ヶ月すごせることを考えれば十分だろう。


 部屋を確認すると、一度外に出る。

 全員がそろうと、ナビルナさんから鍵を渡される。


「あの、お風呂ってないですよね? 」

 鍵を受け取っている途中に女子生徒がナビルナさんに聞いた。


「あぁ、大丈夫ですよ。有料ですが、大浴場があります。明日の予定を説明したら、案内しましょうか? 」

「はい、是非お願いします。」

 女性にとっては大きな問題だったらしい。もちろん俺も入りたい。


「それでは、皆さん明日は八刻にギルドに集合してください。少し説明をした後、赤い鷹の人たちと迷宮へと向かってもらいます。」

 この世界でも一日は二十四時間、一時間は六十分で、こくで表すらしい。この辺は転生者の影響だろうか?


 時計というのは高級品で村の何ヵ所かにたっているのみで、基本は鐘の音の回数で判断するらしい。


 その後、ナビルナさんに大浴場まで案内してもらった。


 大浴場は、銅貨二枚で入ることができ、タオルのような布が貸してもらえる。体を洗うスペースと、風呂があり、一度に三十人くらいは入れそうだ。もちろん男女別である。


 入浴を済ませると、部屋に戻る。村の中を見てまわりたいが、暗くなるなか全く知らない土地を歩いてまわる気にはならない。


 部屋に戻ると、すぐに眠れると思っていた。なんせ今日は本当に色々なことがあった。


 そう思ってベッドに横になっていたが、全く眠くならない。明日の迷宮のことで、緊張しているのだろうか?


 眠くなるまで、ギルドで買った迷宮の本に目を通すことにした。


































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