表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
迷宮の分析者  作者: 店長
7/19

第6話 選択できませんでした

 俺達は転生の間を出て、四グループに分けられていた。


 職業を決めるときに使う部屋が四部屋あるそうで、それぞれで職業の選択が行われていた。教室くらいの広さの石造りの部屋の奥に扉がある。その扉の先が職業を決める部屋らしい。


 職業の選択は、一人で行うようになっていて、一人が入っている間、他の人は待っていなければならない。職業について分からないことがあれば、一度選択部屋を出て、俺達と一緒に待機部屋にいる神官? の人に相談することができる。



 俺はグループ分けのときに、惟ねえたちとちょうど前後のグループで別れてしまい、一人だった。このグループに知りあいはおらず、話し相手もいないので、扉の方を見ながら職業について考えていた。


 すると、さっき入ったばかりの1年らしき生徒がすぐに出てきた。


 これからこの世界で生きていくうえで、かなり重要であろう職業だ。一人が決めるまでに相当時間がかかると思っていたのだが。

 ……俺は絶対に悩む自身がある。


 先程の生徒に話しを聞きにいこうか迷っていると、神官? の人が「どうかされましたか? 」とこちらに近づいてきた。


「やけに早かったのが気になったもので。職業って大切なんですよね? 」


「ああ、なるほど。」そう言って、頬の肉を揺らしながら答えてくれる。


「普通、最初に選べる職業は、二つか三つしかないんですよ。先程の方は、戦闘向きの職業とそうでない職業といった二択だったのではないでしょうか?」


「最初? 職業って途中で変えれるんですか? 」


「はい。職業Lvが20をこえると、転職することができます。あっ、申し遅れました、私、神官のクルンと申します。」


 重要な情報の後に、タイミングのズレた自己紹介を挟んでくれたこの恰幅のいい男性、クルンさんにあわせて、俺も名のる。


「ソウといいます。職業って、Lvがあるんですか? 」


「はい。職業のLvが上がることによって、スキルを覚えることができ、力や体力などが成長します。Lvが上がるにつれ、この成長度が大きくなるのですが、転職をするとLvが1に戻ってしまいます。ですが、転職の際には、選べる職業が増えていることが多いのです。その人の適性にそれまでの経験が加わった結果と考えられています。」


 本当にゲームのような世界だ。


 俺はもう一つ気になっていたことを聞いてみる。

「転生者って、けっこう多いんですか?」クルンさんは以前にも転生者にあったことがあるようだ。


「頻繁にというわけではありませんが、皆様の前だと三年程前に、転生者の方が来られています。その前は八年前だったかと。おおよそそれくらいの間隔で来られています。ただ、皆様の世界、地球でしたか? から転生されて来られる方は非常に珍しいです。」


「過去にもいたのはいたのですね? 」


「ええ。そもそもこの国を最初に起こしたのも地球からの転生者の方々と言われています。それから千年近い間、数人の方が転生されたのみです。それと、この先の部屋を[可能性の間]というのですが、そこには職業を決めるための特殊な石板があります。その石板も迷宮神様の力をかりた最初の転生者の方々が、創ったとされています。なので、地球からの転生者の方を担当させて頂くのは、とても光栄なことなのです。」


 この神殿の人間が、俺達にここまで親切なのもそのおかげなのだろう。




 それからしばらくクルンさんと話していると、「すいませーん、ちょっと聞きたいんですけど」と、クルンさんが可能性の間から出てきた女子生徒によばれた。


 クルンさんは、「すいません」とこちらに軽く頭を下げて、そちらに向かう。しばらく女子生徒と話してから女子生徒が再び可能性の間に入り、出てくるのを見届けると、クルンさんはまたこちらに戻ってきた。


「なかなか熱心に職業のことを聞いていらっしやいました。ソウさんもですが、さすがは、地球からの転生者ですね。」


 これからの生き方に関わるのたまから当然だと思うが、地球からの転生者というだけで、評価が高いのか、クルンさんは感心していた。


「さっきこの国は僕たちと同じ転生者がつくったと言ってましたよね? それ以前はバラバラだったのですか? 」

 とにかく分からないことだらけなので、できればこの世界の歴史についても知っておきたい。


「はい。この国ができる以前は、迷宮の数自体は今よりも少なかったものの、皆バラバラに迷宮を攻略しており、スタンピードもかなり起こっており、多くの被害が出ていたそうです。」


「スタンピード? そもそも迷宮ってどういう場所何ですか?」


「迷宮は、この世界の様々な所にあり、現在は二百以上存在すると言われています。迷宮では素材や薬草、鉱石などを採取でき、それらを利用して我々は生活しています。取れる素材や環境は迷宮によってそれぞれ異なりますが、一つだけほぼ全ての迷宮に共通するのが、魔物が出現することです。迷宮に入らずこの魔物を放置すると、増えた魔物はいずれあふれ、スタンピードがおこります。そうならないよう、迷宮に挑む者を支援するとともに、迷宮の攻略のバランスをとれるような仕組みの基盤をつくったのが地球からの転生者様だったのです。」


 この世界、というより迷宮というのはかなり物騒な場所らしい。


 そこまで話すと、「そろそろソウさんの番ですかな? 」とクルトンさんは部屋の中を見渡す。


 部屋の中はすでに職業を決めた者が、何の職業に就いたかや、どんな選択肢があったかで盛り上がっている。


 俺と今、部屋に入っている生徒以外は、職業を決めたらしい。


「そうですね。色々教えてくれて、ありがとうございました。」と、クルンさんに一礼すると、俺は扉の付近で待つ。


 それから、しばらくして前の生徒が出てくる。

 その後、俺は少し緊張しながら部屋に入った。





 部屋の中は、以外に狭く六畳程度で、入って正面の壁に横60センチ、縦30センチ程度の石板があり、石板の下部に拳くらいの白く光る石がついている。


 その石に触れると、職業が選択できるらしい。


 俺が石に触れると、石の光が石板全体へと広がる。そして、文字が浮かび上がってくる。

 日本語ではないが、なぜか読むことができる。


 そこに表れたのは、





 分析士





 のみだった……
























評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ