第18話 初パーティー
「俺が二人を雇う? 」
レジーナさんの言葉に思わず聞き返す。
「そうよ。聞いた限りだと、君は探索者でまだ誰かとパーティーを組んだことないんでしょ? 今回のお礼に1日無料にするから二人とパーティーを組んでみたら? 」
「いや、ティアさんは怪我を治したばかりだし、フィアちゃんはそもそも迷宮につれていくのが… 」
「私なら大丈夫です! 」
俺の言葉を遮るようにティアさんが声をあげた。
「獣人は傷の治りが速いんです。治療してもらったので、もう大丈夫です。」
傷のあった左腕を上下にふってこちらに見せてくる。
確かに大丈夫そうだが、その隣でフィアちゃんがファイティングポーズしてシャドーをしているのは何だ?
「……えぇと、フィアちゃんも戦えると? 」
フィアちゃんを見ながら聞いてみると、無言で両拳が加速された。
「もうっ、フィア! ちゃんと答えなさい! すいません、フィアも少しですが迷宮に入ったことがありますし、魔物との戦闘も経験しています。低い階層なら大丈夫です。」
フィアちゃんに代わってティアさんが答える。
「いや、でも…」
「一日限定なんだ深く考えることもねぇだろ。パーティーでの探索を経験できると思ってやってみりゃいいじゃねぇか? 」
「そうよ。君なら二人に無茶をさせることもないでしょ? それに今回は私からのお礼って形で無料だけど、ティアとフィアにはきちんと仕事をしたという形をとるから二人の奴隷解放が少し早くなるのよ? 」
レジーナさんによると、村エリアでは仕事を受けていって解放される場合がほとんどで買いとられるということは滅多にないらしい。
貴族や有力な商人、探索者でもない限り奴隷を買うということはなく、そんな連中が村エリアにいることはないのだと。
「……分かりました。じゃあ、二人を雇わせてもらいます。」
ホーマーさんとレジーナさんに半ばおしきられたが、確かに俺にとって悪い話ではない。二人に無理をさせるつもりもないし、いい機会だろう。
「じゃあ、明日の八刻にここに来ますので。」
その後、レジーナさんから契約内容の細かな説明を受けてからホーマーさんとともに店を出た。
ホーマーさんは解体屋の仕事が入っていると自分の店に戻り、俺はギルドに向かった。既に昼となっていたので残っている仕事も少なかったが昼からの農家の手伝いが残っていたので、それを受けることにした。
夜は明日に備えていつもより長めの睡眠をとり、早朝コクモノ平原にいき、テートさんのところにボアの肉を卸してからレジーナさんの店に向かった。
レジーナさんの店につくと、八刻前ではあったが既に二人は用意を終え店頭で待っていた。二人に挨拶をし、レジーナさんを交えて正式に今日の契約をする。
「それで今日はどこの迷宮に行くの? 」
「イタル草原に行ってみようと思ってます。」
迷宮を探索する場合にはどこの迷宮に行くのかを契約するときに確認される。