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機霊戦記 ――黄金の女神・暗黒の女神――  作者: 深海
一の巻 黄金の女神
17/60

15話 PPD‐AG (テル)

端末(フォン)のメール着信音が鳴り響く。


『じゃかじゃんじゃかじゃん、あ~♪ わたっし~のあ~いはぁ~♪』


 黒いビルの夜空に響く、微妙に音が外れた歌声。 


「ちょ、スミ・スミレ? あんたそんなのが好きなんですの?」


 赤毛のロッテさんが、くわりと片眉をあげる。


「この子、へたっぴじゃないの。ボカロのムジカちゃん聴きなさいな。マシンボイスの最高峰」

「生身の声ってのがいーんだよ。ってロッテさん、下界の地下アイドルよく知ってんな」

「下界に出入りするようになって、まず覚えたのは芸能関係よ。マシンも生身も、いい歌が多いですわね」

『……オンチで悪かった』

「は? ミッくん、だれもあんたを責めてなんてないですわ! あんたの子守り歌がオンチすぎたなんて、ひとっことも!」

『揺りかごの中で目を輝かせて、私の歌を聴いていた君は……あんなにかわいかったのに……どうして、こんな女装をして、くどい下界音楽を聴く変態になったのだ……』

「それはあんたのせいでしょっ?!」


 長い赤毛が揺れる肩先に、銀鎧の金髪イケメン騎士が顕現してる。

 青白い機霊光を放つミッくんこと、ミケル・ラ・アンジェロだ。アホウドリ型機霊は、ただいま出力全開。ロッテさんは俺を抱えて、黒ビルジャングルの上を飛行中だ。


「テル、メールだれから来たの?」


 俺に抱っこされてるハゲ猫プジが、きょろんと青い目を上向かせてくる。


「じっちゃんだ。『弁当持ったか?』だって」

「リュックに入れてるわよ? 水筒もちゃんと入ってる」

「おう。しかしあれが、タイガギルドの蒸気船? でっかー」


 黒ビルの上に悠然と浮かんでいる船を見すえ、俺はひゅうと口ぶえをふいた。

 でかい。実にでかい。メイ姉さんと海洋調査したときに遭遇した、巨大海竜ぐらいあるんじゃないか? ぶしゅうぶしゅうと真っ白い蒸気が、丸みを帯びた腹の部分から大量に出てる。


「あそこのボスが、アムルを狙ってるって話よね?」

「うん。じっちゃんが、ドラゴギルドから奪えって命令してる通信を拾ってくれた」


 アムルがさらわれて、丸一日経とうとしてる。

 じっちゃんと俺は工房の盗聴装置であらゆる通信を傍受しまくった。

 その合間に俺は、ミッくんをいじってた。

 ロッテさんの依頼である機霊の性格変更は、実に強固なプロテクトがかかってて、いじれずじまい。仕方ないので性能面を、ざっくりてきとうにアップさせた。

 おかげでミッくんは、今はとっても楽そうに俺たちを運んでくれてる。


「アムルの円盤、PPD-AGだったんだなぁ…」  

「PPD? ああそれって、機霊を扱う関係者なら、誰もが知ってる公開コードよね」


 ロッテさんが目の前にせまる蒸気船を睨む。侵入口をさがしてるんだが、蒸気の煙が邪魔して胴体部がよく見えない。


島都市連合(P)永久保存指定(P)及び星域遺産指定物(D)……アルゲントラウム(AG)……天界下界へだてなく、全世界のだれもが知ってる、史上初の融合型機霊ですわよね。まさかあの銀髪少女が、PPDの円盤持ちだったなんて。そういえば玉座にいた人形皇帝、たしかにあんなふうな顔だったわ」

「本人は女の子じゃないっていうんだよなぁ」

「自覚ないのね」

「いや、ほんとについてるよ」

「えっ? ついてるって……ええっ?!」

「アルゲントラウムは融合型のプロトタイプだからかなって、今ちょっと思った。もしかしたら、男でもOKなんじゃないかな」

「ちょっと、じゃあなに? 高祖マレイスニール帝は、男だったとか?!」

「うーん」


 ギルドが情報を出してる裏板によると。ちょうど俺とプジがアムルを拾った直後ぐらいに、エルドラシア帝国軍が降下部隊に極秘命令を出したらしい。

 傍受したじっちゃん曰く――


『PPD-AGが、不慮の事故により帝都から大陸(ユミル)に墜落したそうじゃ。大陸拠点詰めの帝国の天使たちに、発見・回収命令が出とるぞ』

 

 墜落地点で拾ったときからもしかしてって予感はあったけど、アムルはやっぱりただの天使じゃなかった。

 エルドラシア帝国の、五十体目の人形皇帝。つまりマレイスニール帝の複製(クローン)体だ。


「男にしろ女にしろ。少なくともあいつは、俺たちのような(・・・・・・・)人間じゃないってことは確かだ。一千年前の人類の塩基を持ってる、すげえ貴重な……」

「古代種のクローン……高祖マレイスニールが作った人形は、一説によると千体以上? とにかくできるかぎりつくらせて、冷凍カプセルに入れて、王宮の地下に並べたって話ですわよ」

「現時点の人形の寿命が尽きる直前に、次代のカプセルをひとつ解凍する……」

「そう。そして先代から取り出した皇帝機アルゲントラウムを移植するってわけ。マレイスニールは、〈自分〉が永遠に支配者たることを望んでそうしたわけだけど。まぁそんな遺志なんて、だれも尊重しないわよねぇ……」

「だよなぁ。ずうっとおなじ顔の奴が王様って、やだよな。ふつう二、三代で飽きるぜ」


 顔が問題なんじゃなくてと、ロッテさんは肩をすくめた。


「エルドラシアが人形を本当に施政者としたのは、まあ、三代目ぐらいまでね。あとは元老院が実権を握ってやりたい放題。代理騎士が帝政を牛耳った時代もあったみたいですわよ。

 自分が永遠にアルゲントラウムと在るように……っていうマレイスニールの願いだけは叶ったけれど。それだって、アルゲントラウムがPPDに指定されたから、都合よくそうしたってだけのことなのよ」

「島都市連合からPPD指定を受けたから、高祖帝の複製体(クローン)を皇帝機の保存のために利用することにした……」

「ええ、そうよ。元老院はマレイスニールのクローンに対して、都合のいい処分方法を思いついたってわけ。それにしても、PPD保存指定って、絶対のはずよ。黄金円盤を生かし続けることは、帝国に課せられた義務。それをはめたまんまの人形皇帝が大陸に落ちたなんて……」


 アムルは今、ギルドのやつらの格好の獲物になっている。

 天界の機密通信をかすめとったギルドの連中は、帝国にアムルを売って金儲けしようとしてる状況だ。


「不慮の事故で墜落って、ほんとに事故だったのかしら?」


 腕の中でプジが複雑なうなり声を出す。

 島都市連合のPPD指定って、帝国が勝手にどうこうできるもんじゃない。

 永久保存指定ってのはそのとおり、国際条約で保存することを義務づけられたもののこと。そうするための費用の大部分が、連合から出されてる。つまり、もし損なったり失いでもしたら、帝国にとっては大失態の一大事だ。


 そんな事態を防止するため、AG保存用の人形皇帝は、帝都フライアの王宮の奥深くで、厳重に保護されてる……

 ってのが、下界の学校でも教えられて、テストにも出される「常識」なんだけど。

 そんなアムルが、俺たちの住む下界に墜落したって……どういうことだよ?

 帝国にとっては、不祥事以外のなにものでもないはずなのに、なんかおかしい。

 だだ漏れ上等で機密通信を軍内に飛ばしてることといい、アムルの背中の怪我の状態といい……


「単なる事故とは、とうてい思えねえな」


 あの傷、故意に機霊を狙われた感じだった。

 つまりアムルは襲われて、わざと落とされたのか? 真っ赤に汚れた大地に。

 いったい今、天の帝国で何が起きてるんだ?!

 

『じゃかじゃんじゃかじゃん、あ~♪ わたっし~のあ~いはぁ~♪』


「あ、じっちゃんからまたメールだ」

 

 蒸気船の真下、腹の部分にミッくんが昇りついたとき。じっちゃんから不穏な内容の情報が流れてきた。

   

『PPD‐AGの回収命令を出した御仁の肩書きが判明した。

 第五十一代神聖エルドラシア皇帝陛下じゃ。

 本日、帝都フライアでその皇帝陛下が、エルドラシア軍に対して公に勅命を出しとる』


「第五十一代? 神聖エルドラシア? 皇帝? 陛下?」


 今アルゲントラウムを体内保存しているアムルは、五十体目の人形皇帝だ。

 五十一代目って、ようするに五十一体目の人形のことだよな。つまりアムルの次に用意されてた奴ってことだけど。


「はぁ? 神聖エルドラシアって何ですの?」


 ロッテさんが首をかしげる。


「国名が微妙に変わってるってどういうわけ? 五十一体目の人形が、帝国軍に直接(みことのり)を出してるってどういうこと? なぜいつものように元老院が出さないの? 人形皇帝には、他の国の皇帝や王みたいな権限は、まったくないはずですわ」

「あ、ロッテさん、前方十一時、三十ナノメートル! 船の腹部が開いたわっ」


 プジがきゅるきゅる青い目を動かす。蒸気を透過して見てるので、瞳の稼動音がはんぱない。


「了解! プジちゃんありがとっ」


 ロッテさんが蒸気の中につっこむ。と、目前に、船腹の一部ががっぱりと開いている光景があらわれた。ぶんぶん羽がうなる乗り物が数機、そこから飛び出していく。

 蜂みたいな機体を吐き出したそのタラップに、アホウドリサイズの機霊と俺たちは、音もなくすべりこんだ。

 船内は飛翔機(ブンブン)でいっぱいだ。二階建て低層ハイツほどのだだっ広い船倉に、何十という機体がずらりと並んでる。 

 少なからず人がいるから、プジが一瞬、人工毛を逆だてた。 


「ねえ、あたしたちみつからない? 大丈夫?」

「大丈夫よ、プジちゃん。遮蔽結界(ステルスバリエーラ)を張ってるから、目には見えませんわ。でも音は聞こえるから気をつけて」


 ロッテさんがひそひそ声で口に人差し指をたてる。

 アムルはこれから十中八九、ここの連中にさらわれる。だからあらかじめ蒸気船に潜んでおいて、ブンブンが獲物をここにもってきたときに、華麗に奪還するって寸法だ。

 侵入らくらく、しかも気づかれずにいられるって、ほんと機霊ってすごいよな。

 開いていたタラップ床が、ぶっしゅんぶっしゅん蒸気を吐き出しながらゆっくり閉じてく。

 それがぴったり床にはまったとき――


 

『じゃかじゃんじゃかじゃん、あ~♪ わたっし~のあ~いはぁ~♪』



「ひっ!」


 スミ・スミレちゃんのかわいらしい歌声が、声高らかに鳴り響いた。

 音響効果抜群の船倉の中に。 





 

「ごめん! ほんっとうにごめんー!」

 

 えっと……現在、船倉は混沌のるつぼです。俺のせいです。

 飛びかうレーザービーム。破裂して壁にとりつく、粘着性の黒いねばねば。

 

『あ~いは~♪ あ~いは~♪ とどか、なぁ~い~♪』


 歌い続けるスミレちゃん……。


「んもぉおおお! しんじらんない! ほんとしんじらんない! テルのばかぁ!」

「ごめん! ほんとごめんんっ!」


 プジがあわてて、俺の端末(フォン)に肉球を押しつけて音をとめた。

 はずだったんだけど。

 ぷにぷにの肉球は、俺の板にはでかすぎた。そんでもって、板は感度が良好すぎた。

 おかげで歌のボリューム、いきなりマックス。


『げっつげっつ~♪ あいをげっつ~♪』


「どこ押してんだぁプジー!」

「きゃああ、ごめんなさいごめんなさいー!」


 急いでマナーモードにしたけど遅かった。中にいるギルドの連中が反応するより先に、船倉に設置されてるセキュリティ・システムが火を噴いた。これ、機霊の遮蔽に対応機能ある、音源感知装置搭載の自動迎撃システムってやつだと思う。

 登録した声紋以外の音が発生したところを、正確に浄化する高性能なもんだ。

 結果、それがミッくんの青白い結界にぶちあたったもんだから……。


『遮蔽がとけた』

「ご、ごめんミッくん!」

『愚か者が!』  

「ほんとすみませんっ! ひいっ、にらまないでっ」

「テル・シング! 侵入する前にマナーモードにしときなさい! あああ、戦闘に関してはど素人な子を連れてきたあたしがバカだったわ……」

「ひいい! ロッテさんごめんなさいいいっ!」


 赤毛の機貴人が、俺とプジを抱えてその場から舞い上がる。直後、俺たちがいたところにレーザービームの雨が降った。

 音源感知装置すげえ。精度高いっ。それに壁にはりついてるあの黒いねばねばってなんだ? 初めて見たぞ。アメーバタイプでぞわぞわ壁を走ってる。自走機能つき? いやいや、どこかで操作してる?

 動きがおもしろいんで見入りそうになったけど、プジにほっぺたをぐりっとされた。

 おそいくる肉球の弾力が、なにげにたまらない。


「テル、あたしたちも展開(ディストリクト)した方が!」


 うう、プジの正体をばらすのはいやだけど……やむをえないか。

 プジがロッテさんの腕から離れて背中にひっついてくる。仕方なく接合コマンドを唱えようとした、そのとき。


しろがねの(シルヴァー)息吹(エイテム)ー!』


 ロッテさんの銀鎧イケメン騎士が、雄たけびをあげた。

 青銅級(ブロンゾ)なのに白銀とはなんぞや? ってのはさておいて、まばゆい霊光が俺たちを包む。

 

しろがねの(シルヴァー)シュヴェールトー!』


 うずまく霊光から、光の筋が一本飛び出した。

 ロッテさんが目をまん丸くしながら、その光の棒を剣のごとくに持って構える。


「ミッくん? なんかいつもより、剣がおっきいですわよ?!」

「おお! 俺の改造、めっちゃ効果出てる?」

「きゃあ、まぶしいっ」


 ロッテさんが両腕で剣を持ったんで、俺たちはその場に落とされたものの。壁についてるはしごに無事にとりついた。

 まばゆい光の剣が、そこかしこから飛んでくるレーザーをぶいんぶいんとはじき返す。

 うわぁ、かっこいい。なんかのふっるい幻像でみたぞ、こんな戦闘シーン。

 銀鎧のミッくんが、迫り来る黒いねばねばに向かって片手を突き出した。

 

しろがねの(シルヴァー)、』


 だからどうして白銀なんだと、突っ込む間などなく。


(プファイル)ー!』

 

 無数の白光玉がミッくんの手から放たれて――

 じりじりぶじゅうと、アメーバ型兵器が焼け溶けた。


「すげえ! これ楽勝すぎ! 強え! ミッくん強えー!」

「テル・シング! 一体どれだけ、性能つけ足したんですの?!」


 輝く剣を振り回すロッテさんが、目をむいて半ばうろたえてる。

 ど、どんだけって。核の部分に、逐電石を突っ込めるだけ突っ込んで、あと、てきとうに部品つけたりとったりしたんだけど。

 

『ふははは! 軽い! 体が軽いぞ!』


 ミッくんが余裕の笑みをかましてる。

 ロッテさんが応戦してくれてるすきに、俺とプジは逃げ道を探した。床へすとんと着地した目の前に、閉じた扉らしきものがある。その脇についてる丸いハンドルを必死に回すと、どこからともなくふしゅんという蒸気音がするとともに、扉が左右に開いた。


「通路だっ」

「狭そう。逃げ込むにはうってつけ?」


 とりあえず飛び込んでみるか!


しろがねの(シルヴァー)(プファイル)ー!』


 無数の光の矢を飛ばしながら、ロッテさんとミッくんが俺たちがすべりこんだところに退避してきた。幅が狭いので、とたんに翼が半分にたたまれる。ミッくんがどえらく渋顔だ。


『狭すぎる……』

「ミッくんがでかすぎるんですの!」

『でも狭すぎる……』


 アホウドリサイズの機霊が全展開できる室内って、なかなか無いかも。

 翼が半分だと出力も半分になっちまうけど、今のミッくんならきっと大丈夫だ。

 迎撃機械の反応から遅れること数分、ようやく人間さんたちがわたわた動き始めてる。

 開いたものは閉めないとってことで、俺は追っ手が扉に到達する前に、ハンドルをまた必死でまわして扉を閉じた。とたん、ロッテさんが俺とプジを抱え、ぎゅんと滑るように飛ぶ。

 

「うわぁやっぱり、すごいスピード!」

「ちょっと速すぎー!」


 翼から噴出するジェット機光のおかげで、あっというまに通路のつきあたり。

 すげえ! セキュリティセンサーが反応する前に、通り抜けてる!

 ロッテさんは左右に分かれてる通路を、いそいで右に曲がった。とにかく矢のように通り抜けて、船の警備体制にひっかからないようにする作戦らしい。


「いったん、外に出たいですわ」


 超高速で飛びながら、出口らしきものをきょろきょろ探してる。

 プジの目も、援護するためにしゅんしゅんせわしなく鳴りだした。

 そのときぶるるんと、俺の胸元で振動がした。さっきあわててマナーモードにした端末だ。

 うううじっちゃん、ありがたいんだけど、ゲットほやほや情報をコマ切れに伝えてこないでくれよぉ……

 頭抱えそうになりながらも、気になるのでサッと画面を見てみれば。

 そこにはどきっとするような内容のじっちゃんからのメールと、じっちゃんからじゃない人のメールが並んで表示されていた。


『メールが届いています:

「じっちゃん」さんから:

 本日神聖エルドラシア帝国第五十一代皇帝陛下が、PPD‐AGを冷凍保存措置に移行することを発表。PPD指定を取り消す申請が、島都市連合で受諾されたそうじゃ』

 

『メールが届いています:

「ハル兄」さんから:

 少女Aとデート中だ。地下遺跡BB24に来い』

 

 少女A? A……あー……まさかアムル?!


「ロッテさん! 今すぐこっから退避して! ハル兄がアムルを助けてくれたっ!」

「そうできればいいんだけど?!」

  

 ハル兄さすがと、心躍ったのもつかの間。

 

「テル・シング! 歯ぁくいしばって!」


 いきなり目の前から、すさまじい衝撃がやってきた。


「ひいいいい!」


 ばりばり鳴り響く雷鳴音。

 

「ちょ……なにこれ!」

『む……巨大、だ』


 ロッテさんの肩先にうかぶミッくんが、顔をひきつらせる。

 目の前にたちはだかるなにかに、俺たちは勢いよく衝突したらしい。

 展開している青白い結界(バリエーラ)のまん前に、赤銅色の塊がそびえたってる。

 壁一面にはまっているようなそれには、ぎざぎざの鋭利な牙のようなものが全身についてる。

 プジの尻尾がぼわんとふくらんだ。


「じっ、蒸気人形よ!」

 

『侵入者。排除。シマス』


 巨大な障害物はぶしゅうと、凄まじい蒸気を吐き出した。

 顔じゃないかと思われる、四角四面の物体から。 

 

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