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ぱいすらトらいん  作者: ろちるきり
3/4

一目惚れなんかじゃない

神崎君視点です。

 最初はただ単純に、一体何を見てるのかと思っていた。


 3人の姉達による顔の整っている男の子はこうであれという教育により、勉強は出来て当たり前、年寄り子供に女の子にたとえ相手が男子でも敵に回すよりは味方の方がいいからと、誰にでも優しく人当たりの良いように接するようにと躾けられたせいか、気がついたら女の子の理想を具現化したかのような人物扱いになっていた。


 男子達に言わせたら、学校の王子様(笑)とかアイドル(笑)だそうだ。女子に囲まれたりする時もあるけれど基本男子と一緒に行動を取る事の方が多いので、男子に僻まれる時もあるけれど、もてるからと邪険にされたりとかは有り難い事にまだ経験した事はない。


 そんな状況だから普段から誰かしらの視線に晒される事には慣れていた。でもある日、ある女子生徒と目が合ったと思った。普段そういった時に目が合えば、慌てて視線を逸らしたり、恥ずかしがって挙動な動きをしたりと、僕を見ていたというのが判る行動を取る事の方が多いのに、彼女は何でもないように初めから僕を見てなかったように視線が僕から自然とずれた。だから気のせいかと思った。

 でも何度かそういった視線とぶつかり、彼女は僕を見ているけれど僕の顔を見ているわけではない事に気がついた。


 だったら僕の何処を見ているのか、同じクラスメイトの舟越由梨(ふなこしゆり)はそういった意味では興味を惹く対象であった。


 舟越さんは別のクラスの橘美佳(たちばなみか)と仲が良いのか、休み時間等一緒に居るところを良く見る。担任の先生に用事を頼まれると文句を言いながらもきちんと仕上げるせいか、やたらと先生に頼まれごとをされている。僕も先生に用事を任される方だけれど、同じ位かもしかしたら舟越さんの方が多いかもしれない。


 それに今はブレザーを着てるせいか他の男子は誰も気がついていない、むしろブレザー越しでも判るほどの持ち主の永瀬さんが居るからか、そういった話題になると大体は永瀬さんの名前があがる。

 男子がそういった時にあげる話題と言えば『おっぱい』の事だ。嫌いだという男子はいないだろう、僕ももちろん大好きだ。でもそういった事は口にはしない。

 男子から大きいのが好きか? とか誰のがいい? とか話題を振られたら、あの女優くらいの大きさになると流石に迫力に驚くよねとか言って誤魔化して逃げる。迂闊に好みの話などをしたら、それを聞いた男子の口から女子に漏れてそういった女子に囲まれるからだ。そうならないようにと姉達に盛大にクギを挿されている。

 そのせいかそういった好みは徹底的に隠すようになった。だから姉達も一緒に暮らしているから僕の食べ物とかの好みは知っていても、僕の性癖とかまでは知らない。家にはそういった本とかを一切置いてないからだ。あと置いていて見つかった時に姉達のからかいのネタにされるのも嫌だからだ。


 でも脳内で思うのは自由なので思う存分、クラスの女子の胸の大きさを比較したりして、誰が一番理想名パイスラの持ち主か考えたりする。

 とある人が斜め掛け鞄の強調されてる胸の状態を表現する言葉が欲しいと発案した言葉で、おっぱいを=π、斜め掛け鞄のたすきになっている部分を/(スラッシュ)でぱいにスラッシュをしてる状態でパイスラだそうだ。

 的確に表しすぎてて、その状態の胸が大好きな僕としては速攻でその言葉に飛びついた。


 あとスマホの画像に収めている画像をなんでもパイスラにしてくれるアプリがあって、それで落とした画像を手当たり次第パイスラにした時は楽しかった。そして姉達に見つかると大変な事になるからと、アプリも画像も全部速攻で消したときは悲しかったなー。


 そんな事を思考しながら、そういえば舟越さんは身長に対して胸が大きいから、パイスラ状態にするとその胸の大きさが強調されて、ぱっと見は其処までなさそうなのに実はというギャップでグッと来てしまいそうだとか考えながら、本を読んでるふりをしながら見回す。

 そしたら丁度舟越さんが教室に入ってくるところが見えた。僕の姿を見てから何処かガッカリしながら舟越さんは自分の席へと移動していく。観察してて判った事は舟越さんは僕を見て、喜んだりガッカリしたりとしている事までは判ったけれど、僕の何を見てそんな反応をしてるのかまでは読めなくて其処が気になって仕方ない。


 そういえばそろそろ衣替えも始まるから、ブラウス越しに見える下着がどうたらって話題で男子達がまた盛り上がるのかと思いながら視線を手元の本に戻した。


 だから衣替えが始まって直ぐに、舟越さんが何時ものリュックとは違う斜め掛け鞄で現れたときは本当に驚いた。

 見た瞬間脳内の自分は鼻血が出るってこういう時に使う言葉か! って本気で思ってしまった。

 言葉にしたら想像通りのことなのに、直接視覚からあたえられた衝撃は凄くて、いや本当に身長に対してと予想以上に胸が強調されてしまってるのと、それがまたブラウス越しなのもあってこれ以上見たらヤバイと思って周りから見ても不自然ではないように、ゆっくりとなんでもないように視線を外した。


 脳内で『なんだよあれ、やばいやばすぎるよ! 良くぞ反応しなかった我慢できたなエライヨーエライヨー』って言いながらゴロゴロ転がりまわっているとお巡りさんが現れて、『きみきみーちょっとやばいよ其処まで来てもらおうか』『ちょっと待ってください僕は無実です! 弁護士誰か弁護士を呼んでくださいー!』『はいはい言い訳は警察署で聞くからね』『だれかー!』ってやっている間に朝のホームルームが終わっていた。


 1時間目が入ると同時に真面目に考える事にした。あの姿を誰かに晒すのは嫌だと感じたからだ。でもどうしたらいいのか思いつかなくて、鞄を元に戻してくれって言うのもどうかと思うし、だからと言ってその鞄似合ってないよ? って言った所で『だから何?』な話になるだけだ。

 どうすればあの姿を他の人に見られないように出来るか考えてる間に昼休みになっていた。今日の授業の内容は全然覚えていないのにノートだけはしっかり取っていた。だからこの事が片付いたら復習をきちんとしようと思いながら、購買部へお昼を買いに席を立ち移動をしていると、先生に頼まれたのか荷物を持って移動する舟越さんの姿が目に入った。


 周りに居る女子に先生に頼まれごとされてるから、先に職員室に行く事を告げてついでのように荷物を持ってる舟越さんに声を掛ける。

 職員室に行く用事があるから手伝うよと言いながらこっそりと、放課後屋上に来て欲しい事を伝えると舟越さんは何の用だろうという顔をしながらも、遠慮なく僕に荷物の半分を渡して職員室へと歩いていった。


 そして僕は舟越さんに声を掛けたはいいけれど、見かけて咄嗟に取った行動なので、一体どう話を持っていくかとか全然考えてもいなかったので、放課後まで結局悩み続けた。

 それでもどうすればいいのか判らないまま放課後を迎えて、先に屋上へと向かった。暑くなり始めたからか、最近は屋上に出入りする人の数も減ったから人目を気にせずに話せると思ったけれど、ブレザーを着たままだと思ったより暑いからどうしようと思いながら、舟越さんにどう声を掛けるか考える前に舟越さんが屋上に現れた。


 用件が済んだらそのまま帰るつもりなのか、鞄をそのまま斜めに掛けて現れたその姿はやっぱり理想で、その胸につい目を奪われてしまった。


「その突然こんな所に呼び出してごめんね、あの、そのさ……」


 何時もなら何も考えてなくてもスラスラと言葉が出てくるのに、今日一日考えても考えがまとまらないままの思考で、どうすればいいのかと必死になりながら言葉を口を出す。

 思考がぐるぐるする感覚に少しグラつきそうになりながらも、どうしてそこまで舟越さんに拘るのだろうと、舟越さんのその姿を誰にも見せたくない事の理由に行き着いた。

 誰にも見せたくないとか、独占したいとかそれはすなわち、好きって事じゃないかと。


 その事に気がついて、今この時に? とそして好きなに自覚した途端に顔が熱くなり恥ずかしさから顔を隠したい衝動に駆られそうになる。

 今まで僕に告白してた女の子達はみんなこんな思いで告白してたの? と思うと凄い勇気の持ち主だと思いながらも、今は舟越さんにどういえばいいのかとまとまらないまま言葉が出た。


「……その、一目惚れなんだ」


 いや確かに舟越さんのパイスラには一目惚れしたけれど、好きになった理由はそれじゃないだろ! と自分で自分に突っ込みを入れる。

 そして舟越さんは僕の言葉を聞いて、何言ってるのこの人、頭大丈夫? って顔をしながら僕を見ながら全力で否定された。全力否定は流石に傷ついた。

 


「本当なんだ今日初めて知って、余りにも理想的で他の人に見られたり気づかれたりされたくないから、だからこんな事を言うのは凄く失礼だと判っているけれど……」


 いや確かに舟越さんのパイスラ見たのも今日初めてだし、常々そう思っていたけれどどうして考えてた事がそのまま言葉になってるのか、誰か止めてくれ!


「舟越さんのパイスラに一目惚れしました!そのパイスラを独占する為に僕とお付き合いください!」


 間違いなく告白だ、色々な意味で間違ってる告白だ。僕は好きだと告白してるのか、それともセクハラをしたいと告白してるのか、どっちも混じってるとか、もう色々とアウトだろと自分の言葉にダメージを食いながら、全力でへたり込みそうになりそうな時に


「神崎君、ごめんだけどその『パイスラ』って何?」


 と舟越さんに聞かれた。

 その時にパイスラという素晴らしい言葉は世間一般では浸透してない事を知った。あまりそういったフェチな話はしないから、周りも知ってるものだと勝手に思っていた。

 もうここまできたらいいかと開き直って僕は舟越さんにパイスラの説明を始める。


「パイスラというのは、肩掛けカバンをたすき掛けにして強調された胸の事を表す単語で、そのパイスラ状態の舟越さんの胸はまさに僕の理想そのもので……」


 丁度そのと指でさそうとした時に、舟越さんは一目散で逃げていった。やっぱりそうなるよね。

 幾ら好きだと気がついてパニックになったとはいえ、あの告白の仕方はない絶対にない、嫌われても仕方ない。それに僕はパニックになるとあそこまで残念な思考になるのかと、もう明日からどうしようと落ち込みながら家に帰った。


 だから次の日、舟越さんから声を掛けられたときは何が起きたか判らなかった。お陰でノートは取れているのに授業の内容は入ってない2日目を迎えた。

 舟越さんに指定された放課後、昨日と同じように屋上に向かうと舟越さんが昨日僕がいた場所に居て僕を見ていた。


「遅れてごめん」


 遅れてきたことを告げて、話す機会があるならとりあえず昨日のあの告白内容はきちんと謝って、と思って口を開こうとしたら舟越さんが手で静止したので一度開きかけた口を閉じる。


「神崎君が何か言う前に、私の方が先に言いたいことがあるの、昨日の告白は『嘘とかドッキリ』じゃない?」


 不安げに舟越さんは僕を見ながら昨日の告白の真偽を聞いてくる。いや内容は取り消したいけれど、好きだという気持ちは嘘ではないので、思わず頷いてしまう。


「私も一目惚れだったの、同じクラスになって初めての体育の時間の時に、神崎君が汗を服のにタオルがなかったからって体操服で拭うときに、少し見えた腰のラインにクギ付けだったの!」


 そう舟越さんが思い切ったように言葉にした後に顔を伏せた。


「神崎君がパイスラフェチだというなら、私は腰のラインフェチなの、スケート選手とか水泳選手とかの背中から腰のラインを見て、ああ、なんて魅力的なラインって楽しむ派なの、そして神崎君のその腰のラインを視姦させてください! むしろ触らせてくださいどんな感触なのか確かめさせ貰えるなら、むしろこちらからお付き合いさせてください!」


 顔を伏せているけれど、髪の毛の隙間から見える耳が赤く染まってて、あ、可愛いと思い、今まで僕を見ていた理由が出てきて色々と腑に落ちた。

 そして僕の告白に話題を合わせて返事をしてくるその考えに、笑が込み上げてくる。

 無理だと思ってた不安とか、それでも受け入れてもらえた嬉しさとか、全部笑いに変わってしまって自分でも止める事が出来なくなる。


「……ごめん、ちょっと……笑いが、とまらなくて、…………まって、もらって……いい?」

「あ、うん」


 やっと笑が収まってからずっと思ってた事を口にする。


「舟越さんがやたら僕を見てる理由が判って納得したよ」

「え?私そんなに見てた?!」

「うん、まあ見られるのには慣れてるから、気にはしてなかったけど、他の女子とは視線が違うから何でだろうとは思ってた」

「私としてはチラ見してるつもりだったのに、ガン見だったのか」


 流石にあれをチラ見というには無理があると思う。


「返事ありがとう、断られると思ってたから、正直言うと嬉しい」

「え?あ、うん」

「でも舟越さんの告白の内容が、僕への返事なのか趣味の暴露なのか意表を付かれてしまって……」


 そこでまた笑いそうになる。でもそれをなんとか堪える


「……えーとお付き合いの条件は視姦と触ってみたいだったよね?なんだったら今すぐ触ってみる?」


 あれだけ僕の腰を見てたのだから、どんな反応をするのだろうと一歩前に出てみたら


「いや、それはまたの機会で!」


 と一歩逃げられてしまった。それがちょっと残念に感じ気がついたら


「そうじゃあ僕も思う存分、これからは舟越さんの胸を見させてもらうね、あとその鞄は今後使用禁止」


 本音と意地悪な言葉、そして最初に思っていた、パイスラを周りに見せない為の方法を言葉にしていた。

神崎君視点の小話集みたいなのを週末にUPします。それで完結です。

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