コンビニ18X
「いらっしゃいませ」
ピッ……ピッ……
「4点で1570円です、温めますか?」
「温めで」
「畏まりました。少々お待ちください」
ガチャッ ブーーーーーッ
「1600円で30円のおつりとなっております。レシートのご利用は?」
「いらないです」
「畏まりました」
ピーッ ピーッ
「お待たせしました。容器がお熱いのでご注意ください。ありがとうございました」
「どーも」
これはある一日の、夜の出来事である。
◇ ◇
「松代さん、僕は新しい萌えに気づいたんです」
「なんだと?」
話はその日の夜中のことである。
瀬戸博はコンビニから会社へと帰ってきていた。先輩である松代にコーヒーの差出と、たまたま目にしたエロ本をコンビニで買い、読みながらのこと。
「蔑まれる視線。サイテーとか、変態とか、そーいう語呂じゃなくて。純粋に、気持ち悪い!って思われる目、実際に目の当たりにして、快感を覚えました」
「そうか。瀬戸は会社内じゃ、変態呼ばわりだもんな」
「知り合いから変態と思われるのは慣れるんですよ!でも、身も知らない人が純粋に気持ち悪いって、思う表情にとってもトキメキました!本能から溢れ出た表情があっての気持ち悪いって、可愛いかったです。ドン引きさせる表情の奥に見せる、赤みな頬……」
「そりゃ迷惑な話だ」
一般常識的な話で、ここまで済んでいた。双方共に馬鹿である。
「そこのコンビニの店員、高校生ぐらいの女性で、僕にひきつった顔を見せたのが凄く印象的でしたよ」
「それを先に言え。俺はおばちゃんとか思っていたぞ!俺も行ってくる」
仕事を放り出し、そのコンビニに向かおうかと着替えを始める松代。コーヒーも一気飲みして、目を光らせる。一方で、瀬戸は昔を思い返していた。
「子供の頃は女子に嫌われると泣きたくて、悔しくて、惨めしか湧かなかったですけど。今となれば、それは女性が僕のことを男だと見ている状況なんですよね。気付けなかったあの頃の、幸せ……」
ストーカーみたいなポジティブ精神。精神崩壊している構造だ。
一方で松代はもう着替え終えて、そのコンビニに向かって行った。
◇ ◇
「いらっしゃいませー」
ここが瀬戸の言っていたコンビニか。
松代は入店と同時に店員を確認した。今、様々なコンビニが各地に展開しているわけだが、それぞれのユニフォームはとても可愛らしい。女性限定のコンビニが誕生したら嬉しいものだ。
松代の好みはローソンのユニフォームである。ハッキリ言うと、サンクスとセブンイレブンは色使いが似ていて、印象が薄い。全然違うんだが、重要な部分である。ユニフォームとか全然違うんだけど、入店して、あっ、サンクスだった。あっ、セブンイレブンだったという気持ち。分からないだろうか?店のロゴの色が悪いよな。
ファミリーマートは、個性を出して欲しい。独特なカラーがあればって思う。黒はいかんだろう。
その中でなぜローソンを挙げるか。青色のユニフォームって、コンビニにとっては珍しく感じる。白い色の光に包まれた店内で、青ってのは青空を見ている感じで気分が良いのだ。緑は次点、緑豊かな自然なところを歩いている感じだ。シンプルな色が重要で、次に色を活かしたデザインだろう。
「ローソンのユニフォームは縦じまの白が入っているのが良いんだよ、あそこに白のラインにシミができてると、パンツを連想できるからだ(可愛くて若い女性店員限定)。分かってくれるかな?」
「入店して早々、何言ってるんだろ。このお客様……」
松代、ついうっかり。自分の妄想をぼやいてしまう。
しかしそんなこと、瀬戸の言う女性店員を見れば、忘れるし記憶しない。
「ほぅ」
確かに瀬戸の言うように、女子高生といったところか。顔つきが非常に若い。ユニフォームのせいでちょっと胸とお尻が控え目に見えるが、こーいう客商売では顔と服がポイントだ。
シワもなく、綺麗なユニフォームだ。ギャルっぽい、着崩した女だとしたら残念だと思ったが、やはり純情派乙女店員にエロ本のタグを読み込ませるのが、通なやり口だろう。
『男って不潔なのね///』
そう心の中で思って頂いて、頑張って顔を隠しながら、仕事する子。やべっ、想像すると萌えるわ!
松代。その表情を妄想するだけでかなりグッと来る。エロ本を1冊、2冊、3冊、4冊、5冊。それぞれ種類の違うエロ本をカゴに入れまくる。
しかし、この時。松代はミスを犯していた。
「店長、レジを代わってくれませんか?あのお客様、怖い」
「そうか。分かったよ」
エロ本を入れまくる松代に、警戒して、まさかの店長とレジ交代。そうとも知らず、レジの方へと向かった松代。愕然!
「!!」
バ、バ、バカな!?男、おっさん店長!?
ふざけんなっ!エロ本買っても、『お客さん、今夜は元気なんですね』みたいなムフフな表情を、俺に見せても腹立つだけだ!男がエロ本持ってもトキメカねぇよ!なにニコニコのスマイルでこっち見てんだコラッ!?客のこと考えたら、お前は引っ込め!!
クソ、どこだ!?女性店員は
この時、女性店員が店の奥に引っ込むところを目撃!!
そんな!空気読めよ!エロ本だけでもレジしてくれよ!
12冊もカゴに入れてるんだ!君が12回も、俺を蔑む気持ちになれるんだ!それが俺の求めたコンビニの在り方なんだ。
「うがああぁぁっ」
カゴに入れたエロ本を見ながら、松代。葛藤!
「!いらしゃいませ」
しかし、その後、思わぬ形が……
◇ ◇
「あ、遅かったですね」
「おう、瀬戸」
松代は1時間ほどコンビニに行っていたようだ。なにしてんだが、
「コンビニの子、可愛かったな」
「そうでしょ。お客様に退いてくれて」
ふっ、レジはおっさん店長だったけどな。すげぇ怒った顔していた。
「だが、俺はまた新たな事を思えたよ」
「は?」
カゴ一杯に入ったエロ本を見る、飲み会帰りのOL達の視線がとっても気持ちよかったぜ。