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死神と天使  作者: GARAM
2/3

『もう春を感じられる暖かい季節になってきましたね』

『そうだな…』

昼下がりの東京上空に二人の見た目丁度二十歳程の女性がいる

一人は漆黒ローブに身を包み同じ漆黒の翼を背中に有した死神、もう一人は純白のワンピースに同じ純白の翼を背中に有した天使だ

『古来から人が人に恋する気持ちを抱く季節とされている季節ですね』

ダルクは嬉しそうな笑みを浮かべた

『ふん、失恋をして自殺を考える季節、だろ?』

死神は顔色一つ変えずにあんまりな事をいう

『…相変わらず人間が嫌いですか?…』

『このやり取りもそろそろ飽きたぞ?好きになれる訳がないだろ?あんな自分の事しか考えてない下等動物』

『惨め、と感じた事はありませんか?』

馬鹿馬鹿しい。と今にも言い出しそうな死神を横目にダルクは思いもしない予想外の事をいった

なっ…と言葉を詰まらせる死神を置いてダルクは更に続ける

『貴女は自分以外のモノを愛せないのでしょう?それはとても悲しくはありませんか?人は自分以外のモノを愛して絆を創る事が出来ます。失恋もまた立派な恋です。醜くなどありません』

っ…

死神は言葉に詰まった

ダルクの言ったことはあながち嘘ではない。つまり図星なのだ


!?


そんな死神を助けるように波動を感じる二人

しかしそれは死神とって助け、とは言えない波動だった

『っち…厄介だな…』

ごく希に死神にも天使にも波動を感じられずに死ぬ者がいる

その者の大半は自殺だ

それも人知れぬ場所で死ぬ者達ばかり…

人の魂は天使の選別を受けずにこの世に永く留まりすぎると悪霊になる

そして今、死神とダルクが感じた波動は死を間際にした者の波動ではなく死した者の波動だった

『面倒な霊魂じゃなかったらいいんだけどな…』




何故私は…死を選んだのだろう…

何故私は…あの時もう一歩、もう少し踏ん張らなかったのだろう…

せめてお前に逢いたい…

謝りたい…

リサ…

すまん…




『ふん、醜くいな…後悔するのならば死ななければいいものを…ったく…厄介だな…』『悲しいですね…自害した者達の霊魂が伝える思念はいつも決まって後悔の念です…』

この世の魂は天使の選別なしでは天国にも地獄にも逝く事が出来ない

そしてこの世に未練を遺し死んだ魂は死神がその未練を果たす必要がある

が、全ての自殺者の残留思念はいつも決まって《生きていればよかった…死ななければよかった…》なのだ

死神とは死を司る神。魂の平穏をもたらす神なのだ

死者の魂を甦らす事が出来るのは天国にいる大天使しか出来ない

『どうするんですか?』

死神は溜め息を吐くと自殺者の魂を見下した

『ふん、コイツは死んで時が経ちすぎている…永きに渡り生に執着し過ぎたな…霊体の半分は生きている人間への嫉妬心、もう半分は自己嫌悪の念か…ようはもう手遅れだな。悪霊になるのも時間の問題。そうなりゃ終わりだ』

死神はそう言うと鎌を取り出した

『ふん、やはり人間は醜いな。お前の言う絆なんてモノはどうせ夢、幻でしかない』

相変わらず死神が人間の文句を言っている時、ダルクは何かの微弱な波動をキャッチした

『あ、おい!ダルク!どこ行くんだよ!コイツはもうあと2日もすりゃ確実に悪霊になるんだぞ!?』

『いいえ!諦めません!助かります!助けてみせます!』

ダルクはそう言うときびすを返しどこかに飛び去った

『ったく!助からないってのに…待てよ!』

そして死神もダルクの後を追い飛び去った




あの男の霊魂があった位置から数キロ離れた場所でダルクは精神を統一していた

『ったく…何を考えてるんだお前は!』

ガミガミと五月蝿い死神を尻目にダルクは先程感じた微弱な波動を探った




…マサ…さん…

…サ…ユキ…さん…

…マサユキ…さん…

マサユキさん

あの時…私がもっと強ければよかった…

帰って来て…

私と逝きましょう?…




感じます…愛する人の名を呼び続ける霊魂の叫びが!…

ダルクは尚も文句を垂れ続ける死神を置いて波動を感じる場所へと飛んだ

『ったく、大体お前って奴…えっ?あっおい!無視かよ!?』




『貴女ですね…愛しき人の名を呼ぶ者は』

ダルク遂に険しい山中で一人の女性の霊魂を発見した

『貴女は?私の名前はリサです…この辺りにいるはずなんです!あの人が…』

『おい…ダルク、コイツは一体…』

遅れて来た死神は不思議そうな瞳でその女性を視た

死神が驚くのも無理はなかった

前にも言ったが霊魂が天使の選別を受けずに永き時が経つと悪霊になる

この女の霊魂があの男の言うリサ、という女性だとしたらこの女性も悪霊になりかけている筈だ

だがリサと名乗る女性は悪霊は愚か自分が死んだ事にすら気付いていない

感じる感情もマサユキ、と言う男性への純粋な愛情だけだ

こんな険しい山中、考えられる死因は転落死か或いは落石死ぐらいしかない

この女…まさか死ぬその瞬間までも頭の中にあったのはマサユキと言う男だけだと言うのか?…

今まで幾千幾万の魂を視てきて死神だがこんな体験は初めてだった

『貴女が大切に想う人はすぐ近くにいます。ですが…彼は心のどこかで貴女に逢える事を諦めてしまっています。ですが貴女は諦めていない。声が枯れようが、涙が枯れようが、肉体が滅びようが貴女は叫び続けた。愛しき人に問い掛けてあげて下さい。貴女の言葉で私は此処にいる、と』

ダルクは優しく手を差し伸べるとリサの魂のどよめきを落ち着かせた

『今の貴女ならきっと出来るはずです。愛する人を助ける事が』

リサは頷くとダルクの手を取り立ち上がった

『マサユキさん…私はここで貴方をずっと待っていました。貴方は…どこで私を待ってくれているのですか?…』




『リサ?…リサなのか!?』




『マサユキさん…待っています…私はこれからも貴方が此処に来るのを永遠に待ち続けます』




『リサ…今行く!』




『なっ!?マジかよ…』

死神が感じていた悪霊の波動は全く感じられなくなりただの霊魂の波動になった

そしてその霊魂の波動は確実に此方に向かって来ている

『絆とは美しいモノでしょう?幾千の時が流れても消えることがない…人はよく忘れてしまっていますが…絆とは深く、強く、美しく、そして何処にでも在るものなんです』

絆、か…

『リサ!』

遂にあの男性の霊魂が姿を現した

『マサユキさん!』

幾千の時を経ても揺るぐ事のない二人の絆が起こした奇跡…

死神とダルクは淡い光に包まれ天国へと召される二人の魂をただただ見つめていた

次の話でエンドになったのは秘密………

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