誘惑!?
「ん…」
小鳥の囀りで目が覚めた。
何故だ?もうここには生物など―
ああ、そうか「転生」したのか。
しかし、美しい景色だな…何時ぶりだろうか。景色を楽しんだのは。
「で、ここは何処だ?」
何も聞こえない。まぁ、元より返答等期待していないが…。
まず、自分の今の状況を把握しようか。
この森林は意外と広いらしい。小2時間(時計を持っていないので恐らくだが)程歩いてみたが、景色は変わらなかった。
民家も見当たらなかった。
如何にも辺鄙な場所然としたここはまだ未開拓の土地なのだろうか?
途中に湖があったので水には困らないだろう。
食料は…木の実を幾つか調達してきた。
恐らく平気だろう。これで死んだらそれこそ諦めるしかない。
というか神も、そんなことで死ぬのは本意ではないだろうから何か策は用意してくれているのではないだろうか?…甘え、かもしれないが。
そして、自分のこと。
俺は…息子を消失していた。
生まれた時からずっと一緒にいた息子が、嗚呼…。
詰まるところ、その、なんというか…お、女になっていたのである。
それも飛び切りの美少女。
年の頃は12.3歳辺だろうか。
銀の髪と蒼の目、目鼻立ちの整った顔。
あの野郎、隠していやがったな…
ここで重要な問題が発生した。
小便が漏れそうなのである。
恥ずかしいが、湖でするしかないか…誰か見ているわけではあるまいし。
なんだろう…何かを失った様な気分だよ、ハハ…
「ん?」何かが空から降ってきた…手紙?
俺は封をとくと、早速中を読み始めた。
神からの手紙だった。
この世界の常識、俺に何が出来るか、など。
纏めると、こんな感じである。
・この世界の名はイース。イメージとしては、普通のVRMMOゲームの様なもの。
・俺の「この世界での」名はフィーア・ロマネストということになったらしい。
・この森は昔不吉な事があったとのことで、禁忌の森とされ誰も近寄らない。
・「ステータス」と念じると自分のステータスが見える。
・俺の種族名は白銀狼。
・やっぱり神うぜぇ!
うん、教えてくれたことには感謝している…が。一々茶化をいれたり、文末に絵文字を入れたりするのは辞めてほしい。
しかし、VRMMOときた。
俺も男である、そういった物に憧れていた時期もあるし、実際子供の頃はゲームが大好きだった。
魔法とかあるのかな?
凄く楽しみだ。
と、まぁ取り敢えずステータスでも見てみようか。
ステータス!と念じると目の前に白い窓のようなモノが出てきた。ふむふむ…
フィーア・ロマネスト 白銀楼・13歳・女
ステータス筋力:2 魔力:7583 防御:20 体力:5
スキル 遊戯神の加護 雷撃 誘惑
……………は?
いやまぁステータスは仕方ない、と思う。
前世の俺も研究ばかりしていたから体力は殆どなかったしな。
その分、魔力とやらが恐ろしく高くなっているし。一般的なステータスを見ないとまだなんとも言えないのだが…。
だがな。
誘惑とはなんだよ!
俺、男だよ!男誘惑するとか嫌だぜ!?
ピロリン♪という音をたてて、ステータスウィンドウにメッセージが出る。
「遊戯神からのメッセージを受信しました。」
ほほぅ、そんな機能もあるのか…。
『誘惑を極めて目指せ逆ハー!』
………………………
「ふざけるなぁぁぁ!」
幼い少女の声が森林の中に鳴り響いた。