哀れな科学者
死は誰にでも訪れる。
どんな素晴らしい功績を残した人だろうが、大罪を犯した世紀の大泥棒だろうが、はたまた平々凡々とした「只のヒト」であろうが。
平等に。無慈悲に。
ある男がいた。彼は、荒廃して行くこの世界を救いたかった。彼は仲間と共に決起した。
この世界を救うために。
まず食料の問題。これは、体に害の全くない人口食料を作ることで解決した。
土地。これは、他の星に移転させる事で解決させた。その地を開拓するために作られた機械は、彼にしか扱えず、また彼にしか作れないと言われていた。
彼らは多くの人に尊敬された。当然だろう、世界を救う救世主なのだから。同時に畏怖された。当然だろう、理解出来ないモノを人は恐れる。彼等の周りには次第に、己の欲求ばかりを追い求める下賤な輩しか居なくなってしまった…。
彼等は決して金を欲しがらなかった。
すると、下賤な者共は言った。
「我々が代わりに管理致しましょう。
先生達は、研究に没頭して下されば…」
無論、奴らは金を己が財としようとしていた。彼らはそれを知っていたが、面倒だったのでそのままにした。
40年がたった。世界は便利で、何一つ不自由なモノがない「素晴らしい」世界になった…。人々の争い、というものを除いては。
彼らの作った機械が生み出した財によって、それは引き起こされた。あるものが言った。
あんなものさえなければ。また、あるものは言った。あれを作ったのは誰だ。
―彼らだろう。ーあぁそうだ、彼らが悪い。
彼らは、次第にその人数を減らしていった。
処刑と称され、焼かれ、刺され、切られ…。
いつしか「彼ら」は1人だけになっていた。
あの男である。
「彼」はいった。
世界を思ってしたこと、だ…。
あぁ、ヒトとは何故ここ迄に愚かなのであろうか…。
…あぁ、そうか。根本が違っていたのだ。
ならば…作り直さなくては。今の「これら」を粛清しなくては。
かくして、世界は第三次の大戦へと誘われた。
「彼」対世界という、なんともおかしい戦争である。
彼は、彼らが生み出した兵器で世界を「粛清」した。だが、ヒトは生きることに関しては狡猾である。ヒトは、勝利した。
そして勝利したヒトは、彼を…
彼の兵器によって葬りさった。
彼は、思った。
俺も、只の「ヒト」であったのだな、と。
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