表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
79/112

運命の娘

「ウンロクさん、用意はできたっすか?」

 アードに尋ねられ、ウンロクはうなずく。

「ああ、姐さんから頼まれていた分はな。俺は借金以外の期日は守る主義なんだぜ」

「それも怪しいもんですけどねぇ」

 そう言いつつアードも組み立てていた機械の点検をする。

「所長はグノムスを使うと言ってましたけど、グノムスはいま池の底に沈んだままじゃないんです?」

「それについては妖精のジジイたちがやってくれるそうだぜ。男爵から回収した肩当てを持ってどっか引っ込んじまったけどな」

 ウンロクも自らが担当した部分の設計図を再確認した。

 エルマの記した設計図の中心に描かれたのは《グノムス》だ。

 マークルフ復活のために、この鉄機兵を利用した装置を作るのが彼らの計画なのだ。



 ダロムとプリムは城の空き部屋を借りていた。

 即席で用意された小さな作業場の真ん中に《アルゴ=アバス》の肩当てが置かれ、二人は作業している。

「プリム、もう少しだけ右に傾けておくれ」

 ダロムは肩当て内部の分解作業に入っていた。プリムはその指示に従い、両手で押しながら部品の位置をずらしていく。

「ねえ、じいじ?」

「いま取り込み中なんじゃ。手短に言ってくれ」

「姫さまを襲ったあのブタさんみたいな魔物、どうなるの?」

 ダロムが顔を上げ、怪訝な表情を浮かべた。

「なんじゃ? やぶからぼうにヘンな事を言うもんじゃないぞい」

「だって、あれ、すっごい『キチョウ』な魔物さんらしいんだよ」

「あんなもんはプリムが興味を持つようなもんじゃない! なんでそんな魔物の情報を知ってるかは知らんが忘れなさい! どのみち邪魔だから埋められて骨になるだけじゃろ」

 プリムが何かを考えるように視線を宙に向けていたが、やがてダロムの作業に注意を戻す。

「でもさ? その肩当て、バラバラにしていいの? 男しゃくさんが使うんじゃないの?」

「その肝心の勇士が動けん以上、これは用済みじゃ。ならば、グーの字の救出に利用させてもらうぞい」

「グーちゃんを助けてくれるの!?」

 プリムの目が輝く。

「ああ。いまから、あいつの出番になるじゃろうしな」

 もともと自分が改造したものだけに、ダロムは手慣れた動きで内部装置の分解を進めていく。

 やがてダロムは両手で小さな装置を慎重に取り出した。

「それ、なーに?」

 紅い光を内包する装置を見ながらプリムが興味深げに尋ねる。

「小さいが、これこそが《アルゴ=アバス》の心臓というべき動力機関じゃよ。こう見えて、古代兵器の中でも最高性能の出力を誇っておる」

 古代文明時に製造された《アルゴ=アバス》は三つの魔力ジェネレータを搭載している。それぞれが小型ながら高出力を誇り、さらにこの三つが精密な制御で連動することで〈アトロポス=チャージ〉を始めとする莫大な破壊力を生み出す動力源となっているのだ。

「これをグーの字の所まで運ばねばならん。プリム、手伝ってくれるな?」

「もちろん! グーちゃんを助けるためなら何だってするよ!」

 プリムが気合いを入れるように両手に握り拳を作った。

「グーちゃん、ずっと水の中においてけぼりでゴメンね! もうすぐプリムが助けてあげるから、まっててね!」

「……いや、ワシなんじゃがなあ」



 リーナはリファと一緒にルフィンの部屋に居た。

 リファのいた部屋が損壊したため、リファはそこに運ばれ、リーナが付き添っていたのだ。

 リーナは部屋の隅にある椅子に座り、寝台に眠るリファを見守る。

 リファは毛布に包まり、リーナに背を向けるようにうずくまっていた。

 失意のリファがここに運ばれてから、二人はずっとこのままだった。

「……目が覚めた?」

 リーナは口を開いた。

 リファがすでに目覚めていたことには気づいていた。だが、リファがこちらに気を向ける素振りがあるまで、じっと待っていたのだ。

「……男爵さんは?」

 消え入りそうな声でリファが尋ねた。

「お目覚めになったそうよ。大丈夫、命に別状はないわ」

「……お姉ちゃん、そばに居なくていいの?」

「向こうはエルマさんたちが居てくれるからね」

 リーナがそう答えると、リファはまた黙ってしまった。

 リーナは椅子を少しずつ動かし、リファに近づく。だが自分から声はかけない。ただ、向こうから話しかけるのを待つ。

「……早く、あたしを何とかした方がいいよ」

 リファが言った。

「早くしないと“機竜”がここに来ちゃうんでしょう?」

「そうね。リファちゃんはどうして欲しいの?」

 リーナは優しく尋ねる。

「……あたしを殺せば“機竜”は来ないんじゃないの?」

「そうかもしれない。でも、それでも“機竜”はここに来るかもしれない。分かるのは“機竜”は間違いなく墜ちてくることだけよ」

「でも、あたしがいたら、間違いなく“機竜”はここに来るんでしょう?」

「そうなるでしょうね」

 リーナは努めて落ちついた口調で答える。

 部屋が沈黙に包まれた。それがしばらく続いたが、沈黙を破ったのはリファだった。

「……王子様はどうするの?」

「ルフィン君のこと? もう、お兄ちゃんじゃないってこと?」

 あれだけ兄思いのリファが兄と言えずにいる。それだけでリファがどれだけ苦しんでいるか、リーナにも伝わってくる。

「……ルフィン君はここに留まるつもりよ。この都市の全ての人々を避難させる時間はないの。自分だけ逃げるわけにはいかないのでしょうね」

 リファの肩が震えた。

「だったら、本当にあたしを殺して……せめて、ここに墜ちないようにして――」

 リファの声も震えていた。

「それがあなたの願いなのね。だったら、その前にわたしの願いも一つ、聞いてちょうだい。それが交換条件よ」

「お姉ちゃんの?」

 毛布越しにリファの肩がわずかにこちらに傾く。

「そう。わたしの願いはマークルフ様のお身体の治療を手伝ってほしいことよ」

 リーナは言った。

「マークルフ様の治療にはたくさんの魔力が必要なの。その魔力があなたの中に秘められている。あなたが協力してくれればマークルフ様は復活できるらしいの。墜ちてくる“機竜”とだって戦うことができる……力を貸してくれないかしら?」

 リファはしばらく答えなかったが、やがて膝を抱えるようにして、さらにうずくまる。

「……やだ」

 リファが答えた。

「男爵さんが勝てるとは限らない……それに結局、あたしは男爵さんを復活させる道具だったんだ……だから、男爵さんはあたしを守ってくれてたんだ」

 淡々と、しかし頑なにリファは拒絶の意志を見せた。

 しかし、リーナもそれに動揺することなく、その眼差しを背中を向けるリファに向け続ける。

「わたしがいまそんなこと言った? もしかしてマークルフ様が言ったの? だったら前言撤回するわ。そんな酷いこと言う人を治す必要はないわね」

 リーナはため息をついて見せる。

「バカにしてるの!?」

 リファが毛布を放り捨てて起き上がった。

 その頬には濡れた跡が残り、今までに見せたことのない憤りの目をリーナに向けた。

 それでも、リーナはその憤りを正面から受け止めるように目を逸らさない。

「いいえ。マークルフ様が何とか助けたいと願ってるあなたを、わたしはバカにするつもりなんて少しもない」

 自分の怒りを前にしても毅然としたままのリーナを見て、リファが再び背を向けて臥せようとしたが、その前にリーナの右手が少女の左手を掴んだ。

「あの人はあなたの事が本当に心配なのよ。あなたの素性を知ったのはエルマさんが来た時だけど、その前からあなたとルフィン君のことを守ってくれていたはずよ。それまで嘘とは言わないわよね?」

 リファがうつむく。

「……でも、いまは違う」

「違わないわ。マークルフ様がそう言ったの?」

「言わないだけ……かもしれないじゃん」

 リファが声を絞り出すように言った。

 リーナは左手もリファの右手に添える。

「そっか。マークルフ様はちょっといい加減なところがあるしね。そう思っても仕方ないか」

 リーナは言った。

「……お姉ちゃんはいったい何なの?」

 リファが切り出す。

「さっきから、あたしに同情してくれてるみたいだけど、どうして? 自分と同じ“人間”じゃないから? だったら全然、違うんだからね!」

 リファは手を掴まれたまま、身体だけリーナから背ける。

「リファちゃん、確かにわたしも普通の人間じゃない。その点では境遇は似ていると思っているわ。何が全然、違うの?」

「お姉ちゃん……かっこいいじゃん」

 リファが呟く。

「かっこいい? わたしが?」

「お姉ちゃんは戦乙女なんでしょう!? 神女様と同じように神様の娘なんでしょう!?」

 リファが背中を向けたまま叫んだ。

「あたしは作り物の人形! 変態の玩具にされるような、そんな使い捨ての道具でしかないんだよ! どこが一緒なんだよ!」

 リファが顔を隠したまま、背中を震わせた。また涙が止まらなくなったのだろう。

 リーナは答える代わりに握る手に力を込める。

 そして、自分もリファに背中を合わせるように寝台の縁に座り直した。

「……似ているとは言ったわ。でも一緒とは言ってない。他人が誰かの役を代わりにできるものじゃない。あなたの役はあなたしかできないものよ。それに、もし神女様がここにいたら、きっとあなたのことが“かっこいい”と思うかもしれないわ」

「……あたしのどこがかっこいいの?」

「神女様は戦乱が続いたこの地を救おうと剣を執って戦っていたそうね。でも、神様の娘でも戦いは止められなかった。後の〈白き楯の騎士団〉となる戦士たちが集って、彼女と共に歩んでくれたおかげで戦乱をようやく止められた。そして神女様は消えた……でも、これはリファちゃんの方が詳しいわね」

 リーナは苦笑した。

「でも、リファちゃんより分かるんじゃないかって事が一つだけあるの。神女様が戦士たちに後を託して消えたのは、きっと自分が人々にとって“神女”でしかなく、人と共に生きることができないと考えたから――本当は一人の娘として人々と生きたかったけど、できなかったんじゃないかな」

「……どうして分かるの?」

「同じ戦乙女だからかな。戦乙女の役目は選んだ勇士の武具となって護ること。わたしは神様のことなんてよく分からないし、戦乙女の自覚もないけど、自分で選んだ勇士と一緒に戦えることは誇りに思ってる。でも、神女様は自らの勇士を求めず、“神女”として人々の道標となって消える道を選んだ……戦乱に苦しむ人々のために戦った神女様が人々と運命を共にできなかったのは、きっと悲しいことだったと思うわ」

 リーナはリファの方に振り向く。

「ねえ、リファちゃん? たとえ“人”であることを否定されても、それでも、あなたには運命を共にしてくれる人がいるはずよ」

 リファがリーナと視線を合わせるが、すぐに目を逸らす。

「……“人形”が人と運命を共にできるわけないじゃん」

「どうして、そう思うの?」

「あたしは生まれてきたらいけなかったんだよ! そうすれば、この国だってこんな落ちぶれることなかったし、兄ちゃんだって辛い思いせずに済んだんだよ! いまだって、あたしがいたら兄ちゃんの為にならないんだよ! 戦乙女は人々に望まれたけど、あたしは違うんだ!」

 リファがそう言って顔を伏せる。その頬に涙が伝っていた。

「なら一つ、聞いてもいい?」

 リーナは静かに言った。

「――“人形”がなぜ、王子様の心配なんてするの?」

 リファが顔を上げた。

 その表情はリーナにも何と表現していいのか分からない。

 怒り、悲哀、動揺――その全てがない交ぜとなったものだった。

 リーナは表情を変えることなく、リファと向かい合う。

「いま、あなたがどう思ったかは分からないわ。でも、それがリファちゃんが否定しようとしても消えない、あなた自身の本心のはずよ」

 リーナは微笑む。

「前に館が火事になった時にも言ってたわね。足手まといになるぐらいなら死んだ方がマシだって――その思いはいまも変わらないのでしょう?」

 リーナはリファの濡れた頬に手を添える。

「あなたはリファちゃんよ。あなたがどう生まれてきたとしても、それは変わらないわ」

 リファが何か言おうとした。だが、それが言葉にならないのか、ただ唇を震わせていた。

「……怖いのよね」

 リーナはそっとリファを抱きしめる。

「過去は変えられない。でも未来は変えられる――だけど変わってしまうから怖いのよね? 人ではない事実だけは変えられないのに、いつの日か、自分の居場所だけが変わってしまうかもしれない。これからそんな思いを抱えて生きていかなければならないのに、怖くないわけないわよね」

 リーナの腕の中でリファは動かなかった。

 “人”ではないと分かって一番に怖いのは、いままでの過去を否定されたことじゃない。いつの日か、自分の存在を認めてくれていた人たちの心が変わってしまうのではと考えるのが怖ろしいのだ。

 人ではないという事実を突きつけられて揺らいだ心では、そのような不安や絶望に堪えられるものではない。

「……わたしもね、怖いことがあるのよ」

 リーナはリファの耳元にだけ聞こえるような、か細い声で呟く。

「いつの日か全てが終わったら、わたしもマークルフ様の前から消えていく気がするの」

「なん……で?」

 リファがリーナの肩越しに口を開く。

「あの人はね、“機神”と戦う“狼犬”の宿命を自分の代で終わらせたいと思ってる。わたしも、それを願ってる。でもね、“戦乙女の狼犬”が必要なくなれば戦乙女だってもう必要ない。“狼犬”の念願が叶う時がわたしの消える時――あの人と一緒にいる時間が長くなる度にそんな予感が強くなるのよ」

 リーナは誰にも話したことのなかった予感を初めて口にしていた。

「わたしも“人”じゃない。だから、きっと最後まで人々と運命を共にすることは許されないと思ってる。でも、あの人が“リーナ”を必要としてくれるから、わたしは“リーナ”でいられる。それまではわたしも“狼犬”の傍にいたいの」

 リーナの声も震えていた。

 自分の気持ちを伝え、リファの励みにするつもりだったが、今まで胸のうちに秘めていたものを口にしたせいか、昂ぶる感情がつい堰を切りそうになる。

「……ダメだよ!」

 リファがリーナの腕から離れた。

「お姉ちゃんがいなくなったら男爵さん、寂し過ぎて死んじゃうよ!」

 今度はリファがリーナの両腕を掴んでいた。

「それだったら一生、“狼犬”のままでいいって男爵さんなら言ってくれるよ!」

 リファもリーナの姿を自分に重ねたのだろうか。相手の寂しさに自分も悲しみ、励まして支えようとする姿はまぎれもなく、いつものリファだった。

 リーナは微笑む。

「ありがとう。でもね、わたしはそれでもマークルフ様には“狼犬”の使命を全うして欲しいと願ってる。あの人がいるから、わたしは戦乙女を演じ続けているの。あの人が“狼犬”の運命を背負い続ける姿を見たから、わたしも“戦乙女”の運命を背負えるのよ」

 リファはリーナの姿をじっと見つめていた。

 リーナは黙ってその視線を受け止め続ける。

「やっぱりさ、お姉ちゃんと男爵さんて通じ合ってるんだね」

 リファが少しだけ笑みをこぼしたように見えた。

「男爵さんも同じようなこと言ってたよ。覚悟を決めた者を支えられるのは、同じように覚悟を決めてついて来てくれる人だって――きっとお姉ちゃんのことを言ってたんだよ」

「あの人がそう言ってたんだ。そっか、お互いにあの槍に誓ったからね」

 リーナは笑みをこぼす。

「槍? 男爵さんの家宝っていう黄金の槍のこと?」

「そうよ。いまは手元にないけど、あの槍に誓って約束したことは破らないのがユールヴィング家の家訓なのよ」

 古の戦乙女が姿を変えたと伝えられる、決して損なわれる事のない不朽の斧槍。マークルフもリーナもこの槍を手にし、お互いを護ると誓っていた。

 リファの両手がリーナの右手を包みこむ。しばらくそのままでいたが、やがて両手がしっかりと握られる。

「……お姉ちゃんが戦乙女なら、こうして約束したらいい?」

 リファがリーナの顔を見上げた。

「お姉ちゃん……あたし、もう少しだけ生きていても良いよね? まだ“リファ”でいても良いよね? もし、あたしが兄ちゃんを助けるのにくじけそうになったら、その時はあたしを怒ったり励ましたりしてくれる?」

 リーナは自分の左手をリファの両手に添える。

「“リファ”でいるという誓い、確かに聞かせてもらったわ。わたしもその誓いを守らせる戦乙女になると誓うわ。だから、リファちゃん、その戦乙女が信じる“狼犬”のことも信じてあげてちょうだい」

 リファがリーナと見つめ合うが、やがて、ゆっくりとうなずくのだった。



 リーナがリファを連れて部屋を出ると、ルフィンが通路の脇に座っていた。

 この城の主となったはずの少年はどこからか持ってきた木の椅子に座り、護衛も下がらせ、ずっと出てくるのを待っていたようだ。

 ルフィンが二人の姿に気づくと、立ち上がってその前にやって来る。

 リファが口を開くが、言うべき言葉が見つからないのか、その唇が微かに震えるだけだ。

「……恩返し、まだ間に合うよな?」

 ルフィンが言った。

「前に言ったよな。いまさらだけど俺も手伝わせてくれよ。ここで何かやらないと、俺は一生、妹に頭の上がらないダメ兄貴になっちまうからな」

 ルフィンが微笑む。

「……兄ちゃん」

 リファが泣き顔のまま、ルフィンに抱きついた。

 彼女が一番、愛してやまない居場所は、彼女が何者であっても変わってはいないのだ。



(――“狼犬”の復活は予想よりも早いと見るべきか)

 リファの聴覚を通して話を聞いていたオレフは同調を切ると、目の前の光景を眺める。

 彼はトリスを一望できる丘の上に、黄金の槍を抱えたまま座っていた。

 夜も更けたが街にはいまだ灯りが絶えることはない。

(神の娘も、作られた娘も、ともに“人”として生きることを望むか……人を捨てた俺がそれを盗み聞きしているのだから、まったく滑稽な話だ)

 自嘲めいた表情を浮かべるオレフだが、背後に気配を感じて振り向く。

「――何か面白い話が拾えたの? 随分と興味深そうな顔をしていたわ」

 背後に立っていたのは女剣士の姿をしたリーデだった。

「君か。リーデ……いや、アデルと言うべきか」

「どちらでもいいわ。いまのわたしは仮面の女剣士。それで十分よ」

 仮面を手にしたリーデが答えた。

 オレフは肩に立てかけた《戦乙女の槍》を手に立ち上がる。

「……君の中に宿る神女は、いまのブランダルクの姿をどう思っているのだろうな?」

「あら? 貴方から感傷的な台詞が出てくるなんて珍しいわね」

 リーデが肩をすくめる。

「神女様を宿すことでわたしは戦う術を手に入れた。でも、声は聞けないからその御心はわたしにも分からないわ。知りたいなら、いつか貴方自身が聞いてみたらどう?」

「……そうだな。時が来ればそうしよう」

 オレフは槍を握りしめる。

「神女が声を伝えてくれたらの話だがな」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ