団長の娘
地中を二人の妖精が潜行していた。
二人がやって来たのは、この街の水源の一つとなる巨大な池のさらに地下だ。
地中を透視して池の底を進んでいたダロムとプリムは、やがて底に沈む鉄巨人たちを発見した。
『グーちゃん!!』
《グノムス》の姿を見つけたプリムが慌てて先行し、ダロムもそれを追いかける。
《グノムス》は二体の鉄巨人に両腕を組まれる形で池の底に横たわっていた。
『グーちゃん? どうしたの? プリムたちが来たのがわからないの?』
プリムがすぐ真下から懸命に呼びかけるが《グノムス》の反応はない。地中の言葉が伝わるわけではないが、《グノムス》なら妖精たちの存在に気づけるはずなのだ。
『じいじ、グーちゃん、どうしたの? こわれちゃったの? なんとかして、おねがい!』
プリムに懇願され、ダロムは《グノムス》の姿を観察する。
『壊れてはおらんな。ただ自ら休止状態になっておる』
『きゅうし?』
『要するに寝とるんじゃよ』
『ねむっちゃったの? どうして?』
『グーの字は地中に潜って大地の霊力を補給し続けないといけないんじゃ。あの鉄巨人たちにしがみつかれては地中に潜れんので、休止状態にして力の消耗を抑えているんじゃろう』
鉄巨人たちもすでに停止しているが、《グノムス》の両腕にしがみついたままなのは予定通りなのだろう。巨人たちを動かした相手も《グノムス》の能力をかなり分析していたようだ。
『じゃあ、どうするの? グーちゃん、このままなの?』
ダロムはじっと考えていた。
『ともかく姐さんのところに戻るのが先じゃ。グーの字、待っておれ。おぬしも何とかしてやるからの』
「本当に久しぶりだね。あたしもあれからいろいろあったけど、何とかやってるよ」
道案内で先導するマリアが言った。
「あなたもいろいろあったんだろうね。理由はどうあれ、こうしてまた会えるのは嬉しいよ」
「……マリアさんはいま、どうされているのですか?」
ログは訊ねた。
「あなただから言うけど反政府組織の手伝いをしててね。この街でもいろいろやってるのさ」
マリアはやがて街外れのうらぶれた裏道を進み、ログも後をついていく。
そして道の先にある小さな建物へと入っていった。
「ここはこう見えて、反政府組織の隠れ家の一つなんだよ。いまは誰も使ってないけど、あたしが留守を預かってるんだ。あなたもワケありだろうけど、ここなら邪魔をされずにすむよ」
マリアは奥の扉を開け、そこから続く地下への階段を降りていく。
ログも続いた。
中は外からの印象よりは広いようだ。階段の下は広めの石造りの部屋になっていた。
「もし泊まるアテがないなら、ここを使うかい? 快適とはいえないけど落ちついて休むぐらいはできるよ」
休憩用の寝台と会議用の机がある殺風景な部屋だが、窓もないため外部からの侵入者に気を配ることはないだろう。
「積もる話もあるけど、少し休むといいよ。水でよければ用意してあげるよ」
「……マリアさん」
部屋を出て行こうとしたマリアをログは呼び止めた。
「仮面の女剣士のことをご存じですね?」
ログの言葉にマリアの肩が微かに震える。
「わたしを閉じ込めて足止めするつもりなら無駄です」
部屋の出入り口には鋲で補強された扉がついている。これを閉めて鍵をかければ部屋から出られないと考えたのだろう。
「その気になれば扉は破れます。無駄なことはお止めください」
ログがそう言うと、マリアは観念したように肩を落とした。
「やっぱり分かっちゃたかい。亭主ならあたしの言うことにはコロッと騙されていたのにねえ」
「バルトさんはいい人でした。あの壊滅の時も、若輩だったわたしを逃がすために自ら足止め役になってくれました」
「バカだねえ……剣の腕ならもうあなたに追い抜かれたって苦笑いしてたのに、何を最期まで格好つけてるんだろうねえ」
マリアは背中越しに肩を震わせながら言った。
「貴女はわたしが来ることを知っていた。ならばわたしがここに来た理由もご存じのはずだ……教えてください。仮面の女剣士はどこに?」
マリアは振り向いた。
目に浮かぶ涙を手で拭いながら、長身のログを見上げる。
「あの人に会ってどうするんだい?」
「止めます。神女の封印を解き、それを利用して何かをするつもりなら阻止せねばなりません」
「それは〈白き楯の騎士〉の役目だ。でも、あなたはそれを捨てたんだろ?」
「騎士団は滅びました。ですが、その遺志だけは生かされたわたしが守らねばなりません。神女の力は騎士団の総意なく利用してはならない。それは騎士の妻だったマリアさんもよくご存じのはずです」
マリアはそれでも引き下がらない。
「最後に残ったあなたが騎士団の総意なんだろ? あなたが手を引いてくれれば──」
「それはできません」
すがるマリアの願いを払うように、ログは告げた。
「仮面の女剣士は何かを画策しています。そのために神女の力を使うのならば、どのような理由であろうと看過できません。ここに立つのがわたしではなく、バルトさんだったとしても同じように考えられるはずだ」
マリアはその場にくずおれた。
「……あなたはとても実直な騎士だと亭主も褒めていた……実直すぎて残酷だよ……この国をどうにかしたくて……神女の力しか頼るものがなかったのに……間違っているから使うな、なんて……ほんとに残酷だよ」
マリアは床に両手をついた。
「あたしも〈白き楯の騎士〉の妻だった。だから、あなたが国を出てその名を捨てたとしても仕方ないと思うし、責める気もないよ……でもね、国を出て行ったあなたが国を救おうとしているあの人の邪魔だけはしないでおくれ!」
マリアは床に頭を押しつける。
「後生だよ! 戦うなんてことだけは止めておくれ! そんなことになれば亡き亭主にも団長様にも申し訳が立たないんだよ!」
身体を震わせるマリアの姿を、ログはただ見つめるしかなかった。
「貴女にそこまでさせる人が仮面の女剣士の正体……やはり、お嬢様なのですね」
マリアはただひたすら頭を下げ、答えない。
「──マリアさん。もう、いいのよ。貴女がそこまでする必要なんてないわ」
ログは振り返った。
階段の前に立っていたのは司祭服を纏った若い女性だ。
ログの表情が微かに揺れた。
娘が頭を覆う頭巾を下ろすと、切りそろえられた髪が肩にかかる。
「お久しぶりですね──アウレウス様」
女司祭──いや、リーデンアーズ団長の娘アデルがかつての呼び方でログに言うのだった。
『団長、おめでとうございます!』
部下である騎士たちの陽気な声が館の中に響き渡る。
今日は団長リーデンアーズの生誕日であり、非番の騎士たちが彼の屋敷に集まっていた。
最年少であるアウレウスも初めて、この場に呼ばれていた。
『そう、騒いでくれるな。この歳で誕生日を祝われてもな』
テーブルの上座に立つリーデンアースが苦笑いをする。
『遠慮しないでください。騒ぎたいから来てるんですから』
『やっぱりな。最初から儂をだしにしておったな』
部下に言われ、団長と他の騎士たちが愉快に笑う。
控え目に隅に立つアウレウスもつられて笑みを浮かべた。
『あんた! 笑っている暇があるなら手伝っておくれ!』
台所の奥から女性が顔を出して威勢の良い声をあげた。
『バルトさん、おかみさんが呼んでますぜ』
『おいおい、ここで声を張り上げるな。家じゃねえんだぞ』
団長の隣にいたバルトが頭をかいた。
恰幅の良い中年の男性で、いかにも気のよさそうな風貌をしているバルトは、騎士団の古株として皆の信頼の厚い人物だ。アウレウスも新入りの頃からいろいろと教えてもらっていた。
『バルトさん。やっぱり、おかみさんには頭が上がらないですね』
『やれやれ。団長のお屋敷でまで、あいつにどやされるとは思わなかったよ』
バルトが肩をすくめると、騎士たちはまたも笑った。
(あれがバルトさんの奥方マリアさんか)
アウレウスも苦笑する。バルトは恐妻家であり、そして愛妻家として知られていたが噂通りのようだ。
普段は領地で主人の留守を守るはずのマリアが団長の屋敷に来ているのには訳があった。
国王ガルフィルスの政策により、騎士団の出動回数が激増しており、領地を持つ騎士たちも中々そこに帰還することができないでいたのだ。
マリアが領地を離れたのも遠征が続く夫を支えるためであり、今日の賑わいも連戦の疲労を癒す意味もあった。
『どうした? 遠慮することはないぞ。どんどんやってくれ』
リーデンアーズが自らアウレウスの前に立つと酒の入った杯を差し出す。
『ありがとうございます』
やがて、台所から使用人たちが料理を運んでくるが、その中に身なりのよい若い少女の姿があった。
『おまえに紹介しておこう』
団長が呼ぶと、少女がこちらへとやって来る。
『アウレウス、儂の娘だ』
『アデルと申します』
団長の隣に立った少女が恭しく挨拶をする。
『父からいつも伺っております。将来の騎士団を担える逸材だといつも嬉しそうに話すので、ぜひお会いしたいと思っていました』
控えめながら屈託のない笑みにアウレウスは恐縮する。
『これは聞き捨てなりませんぜ、団長』
『もう次期団長をお決めになったのですか?』
周りにいた騎士たちが話題のタネを見つけたとばかりにからかう。
『何を言うか。儂はいつも皆に期待しておるぞ』
『そう言って、俺らの時には率先してお嬢様を紹介してくれなかったじゃないですか』
『期待と信用は別だからな』
『ああ、ひでぇや、団長』
その場が笑いに包まれる。
『さあ、どうぞ、次期団長様』
『将来の娘婿殿に乾杯だな』
アデルの横に立たされ、先輩たちに次々と酒を向けられるアウレウス。
困り果てる彼と困惑するアデルの表情に、周囲は笑っていた。
『いけませんな、団長。いまからこいつを甘やかしては──』
進み出たのは少し酒が入ってほろ酔い気分のバルトだ。
『調子に乗らせるのは本人のためにもよくない。どれ、久しぶりに俺が稽古をつけてやろう』
『おや、バルトさんがやる気みたいっすよ?』
『アデルお嬢さんは小さい頃から知っておる。俺にとっても娘みたいなもんだ。まだまだ頼りないこいつに渡すわけにはいかんからな』
『バルトおじさん!?』
困った様子のアデルを尻目に、周りの騎士たちが手を叩いて囃したてる。
アウレウスも困って団長の顔を窺う。
『付き合ってやれ。稽古用の剣なら用意してやる』
団長も面白そうに笑いながら言った。
『同じ条件ならバルトの方がまだ上手だろう。アウレウス、手加減はいらんぞ。バルトに稽古をつけてもらえ』
『同じ条件ならって何のことです?』
バルトが団長に訊ねる。
『同じ剣一振りでの勝負という意味ならな。こいつには二刀流の戦い方を仕込んでおると言ったろ。二刀流なら儂も手こずるほどの腕になってきておるぞ』
騎士団の伝説の祖たる神女は二刀流だった。だが騎士団でもその二刀流の技を継承するのは至難の業であり、現在ではリーデンアーズを筆頭に数えるほどしかいない。
二刀流の才能は双子の生まれと並んでブランダルクの祝福と言われており、団長は早くからアウレウスにその才能があることを認めそれを引き出そうとしていた。
『それはいいや。アウレウスの二刀流がどこまで完成したか見せてくださいよ、団長』
『そうだな。よし、手加減されたと思われてはバルトも不本意だろう。儂が許可する。全力でやってやれ。なに、バルトなら死にはしないさ』
バルトの顔に焦りの色が浮かんだ。
『バルトさん、やめるならいまのうちですよ?』
『誰がやめるか! ここまできて引き下がれるか』
『頼みますよ。逆に調子に乗らせては困りますからね』
『や、やかましい!』
騎士たちが即席の舞台である中庭にアウレウスとバルトの背を押していく。
『あの、マリアさん、よろしいのですか?』
アデルがマリアに言うが、マリアは快活に笑った。
『いいんですよ。亭主にはもっと腹を引っ込めてもらわないとね。アウレウスさんや、遠慮はいらないから、おもいっきりやっておくれ!』
あの日の面影と変わらぬ声。
それを目の当たりにし、ログの脳裏にかつての光景がまざまざと甦っていた。
「素顔で会うのは久しぶりですね。昔を思い出しますわ」
アデルが言った。
ログは何も答えず、ただ相手に即応できるように身構える。
「わたしだと気づいていたようですね」
「……そうとしか考えられませんでした」
アデルはゆっくりとログに歩み寄る。
「いまはわたしも昔の名を捨て、リーデと名乗っています。ですが、いまだけアデルに戻りお訊ねします──貴方はこのブランダルクに戻ってきたのですか?」
「──いえ」
ログは答える。
「いまのわたしは傭兵部隊〈オニキス=ブラッド〉副長ログです。この地に来たのは閣下を捜しに来たからに他なりません」
「なら、いまになってなぜ“最後の騎士”を名乗るのです?」
「閣下を捜し、この事態を打開する策としました──こちらもお訊ねします。閣下の居場所を教えてください」
アデルが軽く息を吐くと、鋭い視線を向けた。だがログの返事は予想していたのか動揺の様子はない。
「残念ながら一足違いよ。ユールヴィング男爵はこの都にはいない。司祭長ウルシュガルの部隊が秘密裏に連行していったわ」
アデルは仮面の女剣士の口調となって告げた。
ログもその視線を険しくする。
「それをなぜ、貴女は知っている?」
アデルは口の端を吊り上げた。
「教えてくれた人がいたの。司祭長の行き先はガルフィルスのいる王城らしいけど、その人は男爵が王の手に渡るのを好ましく思っていないみたい。だから、この情報は確かと思ってもらっていいわ」
ログの神経が張り詰める。急いで男爵を追わなければならないのだ。
「この期に及んでも、わたしとの勝負より男爵なのね」
アデルが冷ややかな声で言う。
「もっとも、そうすると思って教えてあげたのよ。追うといいわ」
アデルが右腕を振り上げると同時に、ログは首を傾ける。
短剣がログの耳元を掠め、壁へと刺さった。
アデルが裾から隠し持っていた短剣を取り出し投げつけたのだ。少しでも気づくのが遅れれば短剣はログの顔を捉えていただろう。
「……別に貴方を見逃すわけじゃない。こちらにもやる事ができただけ。決着はつけるわ。そのつもりでいるのでしょう? 待っているわ」
アデルが腕を下ろす。
ログの知るアデルは騎士団長の娘だが、武芸はまったく修めていなかった。
あれから年月が過ぎているが、それでも説明できないほど剣技を極めている。
「それが神女の力なのですね。どうやって、それを──」
ログは訊ねた。
アデルは後ろに下がると、振り返って出口へと向かう。
「それを知りたければ必ず戻って来ることね。その時に教えてあげるわ」
アデルが去っていく。マリアもログのことを横目にその後を追っていった。
アデルはログの言葉を否定しなかった。彼女が神女の力を身に宿しているのは間違いない。
謎はまだ残るが、はっきりしたのは戦いが少しだけ伸びたことだ。
(変わられてしまった──な)
かつての面影と、その思い出にはなかった憎しみと決意の眼差し。
彼女には普通の娘としての生き方をして欲しかった。団長もそれを願っただろう。
だが、それを嘆くのはログには許されない。
ガルフィルスに刃を振るいブランダルクに背を向けた時点で、残された人たちを見捨てたことに違いはないのだ。
ログもその場を立ち去る。
男爵を追わなければならなかった。
男爵を助け、ルーヴェンや亡き騎士たちとの約束を果たす。
そして、最後にアデルを止めることで自分の因縁の清算とするつもりだった。
「ただいま!」
空き屋に身を隠すエルマたちの足許から声がする。
床を通り抜けてプリムが姿を現した。
「おかえりなさい。ダロムさんは?」
「外にいるよ。すぐに戻るからまってね」
やがて、ダロムも同じようにして姿を現した。
「姐さんや、遅くなってすまんぞい」
「男爵たちには会えたの?」
「ああ。勇士たちからの伝言がある」
「男爵は何と?」
「よく分からんが、司祭長という奴は“機竜”をこのトリスに墜とそうとしているらしい。戦乙女からはグーの字を先に解放して、リファ王女をどこか人のいない所に逃がしてくれと頼まれておる」
「そう……時間の猶予もなさそうね」
「姐さんは二人の言う意味を分かっておるのか?」
エルマは頷く。
「ならば間違いないのじゃな。急がねばなるまい。おい、そこの変態ども、外に目印をつけたから、そこの地面を掘ってくれ」
「僕たちがですか?」
アードたちが自分を指さす。
「他に誰がおる? 姐さんにやらせる気か?」
ダロムにせっつかれ、アードたちは外に出る。やがて戻って来ると、アードがエルマに掘ってきた物を見せた。
鉄の鍵だった。
「ワシが錬金術で作った合い鍵じゃ。これで戦乙女の部屋は開けられるぞい」
ダロムが言った。
この老妖精が持つ錬金術は土の組成を組み換えて貴金属などを作り出す力だ。ただし土の中でしか使えないため、大きな物は誰かに堀り出してもらう必要があるのだ。
「これでリファちゃんに頼めば姫さまを助け出せるよ」
プリムの言葉にエルマは眉を潜めた。
「リファちゃんが手伝っているの?」
「うん。近い部屋だから手伝ってくれてるの」
エルマは渋面を浮かべる。
「ダメよ。リファちゃんに頼むのは危険だわ」
「それは承知しておるが、他にあの城で動ける者がおらんしのぉ」
ダロムが言うが、エルマは首を横に振った。
「そう言う意味じゃないの。このトリスを“竜墜ち”の場所に選んだとしたら、おそらく一番に動向を監視されているのはあの娘だわ。あなたたちを手伝ってことも或いは気づかれているかもしれない」
「でも誰もいなかったよ。ね、じいじ?」
「残っているうちらをおびき寄せ、一網打尽を狙っているのかもしれない。リーナ姫と近い場所に監禁しているということは、二人とも利用する可能性はあるわ。ともかく、リファちゃんに頼むのは危険よ」
「でも……リファちゃん、きっと待ってるよ。すごいはりきってたもん」
プリムが困った顔を浮かべる。
「うかつなことをしなければいいけど……ともかく、まずはグノムスを助けるのが先よ」
「どうやってグーちゃんを助けるの?」
「手は考えてる。だけどまだ時間が必要なのよ。もう少し辛抱してちょうだい」
エルマが横目で見たのは計器と一緒においてある《アルゴ=アバス》の肩当てだ。
「姐さんや。いったいあの娘に何があるんじゃ? いや、そもそも姐さんや勇士たちは何を知っておるんじゃ? 手伝う以上はワシらも知っておきたいんじゃがな」
ダロムが訊ねた。
エルマは目を閉じる。
「……そうね。ここまでしてもらう以上、いざという時に各自で判断する材料は必要ね。教えるわ。そして、もし危険だと思ったら遠慮なく逃げなさい。“竜墜ち”がいつ起こるかわからないから──」
エルマはそう前置きすると、その場にいる者たちにリファの正体と“機竜”の関係を話すのだった。




