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迫られた決断

 大神殿の一室――

 司祭長は窓の外を眺めていた。

 彼は普段、精力的に各地に赴き、神の教えと諸侯の仲介役の二つの役目を果たしていたが、現在はここを動かずにいた。

 表向きは“竜墜ち”による世間の不安を憂いてのことだ。

 現在も大神殿には災厄が無事に過ぎるように祈る人々が増え続けている。

 “機竜”がこちら側に移動しており、この地に墜ちる危険が噂され始めていたからだ。

「……入りたまえ」

 気配に気づき、司祭長は告げた。

 扉が開き、一人の若者が入ってくる。

「来たか、オレフ――」

 司祭長が振り向くと、若きフィルディングの科学者が恭しく頭を下げた。

「到着が遅れました。申し訳ありません」

「気にするな。急かしたのはこちらだ」

 司祭長は近づき、すれ違い様にオレフの肩に手を置いた。

「ラングトンは消え、“機竜”もこちらが掌握している。“黄金の鎧の勇士”との戦いだけが不安定要因だったが、そなたの予想通りに“機竜”は生き残った。結果的には思惑通りに進みつつある。ラングトンの監視役、ご苦労だったな」

「いえ。結局のところ、特にわたしが動く必要はありせんでした」

「良い結果を導けばそれで十分だ。下手に動いて自滅する奴らを見ていると、つくづくそう思う」

 司祭長は自分の椅子に腰掛ける。

「だが、“機竜”に地上を攻撃させたのはどういうつもりだ?」

 オレフが向き直った。

「それも重ねて謝罪しなければなりません」

「理由は何かね?」

 司祭長は尋ねた。特に責めることも訝しむ様子も見せない。

「ここに来る途中、ユールヴィング男爵が用いる黄金の槍を回収しました。この槍は“勇士”の最大攻撃時に要となる武器。是が非でも手に入れるため“機竜”を動かしました。他に捜索していた者がいたため、猊下の許可を待たずに独断で動かしたことについては申し開きするつもりはありません」

 オレフがその場にひざまずいた。

「やむを得なかったか。後始末に問題は?」

「ございません」

「ならば、よい」

 司祭長は事もなげに答えた。

「これでユールヴィングも我が計画を邪魔しにくくなるだろう。それに地上を攻撃したこともかえって利用できる。民の“機竜”に対する恐怖も増し、国全体が浮き足立てば、こちらは動き易くなるというものだ。世間が不安な時こそ、宗教は動くものだからな。ガルフィルス王がうるさいだろうが、それはわたしが言って聞かせよう」

「畏れ入ります」

「謙遜するな。全て織り込み済みでやったことなのだろう?」

 オレフは答えなかったが、司祭長は口の端に笑みを浮かべる。

「計画に必要であり、後でわたしが執り成せる範囲ならやるがいい。そなたの手腕には期待している」

「ご期待にそえるよう努めます」

「頼むぞ。現在、あれらを捕らえるよう手の者を動かしている。これからが正念場になる」

 司祭長は椅子を回して外を眺める。

 背中を向けた司祭長の前でオレフがゆっくりと顔を上げた。

 その目に若干、険しさを帯びながら――



 斜面となっている森の中、ある集団がヘイムス村を目指していた。

 巡礼の“神”の信徒であった。

 元々ブランダルクは神女の伝説が根づく国だ。さらに世間の不安に応えるように“神”に仕える信徒たちの姿が目につくようになっており、珍しい光景ではない。

 だが、足場の悪いなかでも統制のとれた動きで進み続ける姿はその限りではなかった。

 その彼らの行く手に何者かが立つ。

 集団は足を止め、相手の異様な姿に警戒を示す。

「……何かご用ですか?」

 先頭の信徒風の男が尋ねた。柔らかな言葉だったが、目の前に立つ仮面の女剣士は肩をすくめた。

「逆に訊くわ。貴方たちこそ何をしているの?」

 沈黙が支配したが、すぐに集団の中から飛来した短剣がそれを破る。

 仮面の女は素早く剣を抜き、短剣を弾き返す。

 同時に集団も外套を捨て、剣を抜き放った。

「仮面の女剣士だ! 油断するな!」

 集団は仮面の女を取り囲むように陣取る。

「やはり、貴方たちだけじゃないわね。ここでわたしを足止めして、他の班に行動をさせるつもりかしら? なら、まずは貴方たちを潰させてもらうわ」

 仮面の女剣士が集団の一人に躍り掛かった。その動きに相手はついていけず、為す術なく斬り伏せられる。

 それを合図に集団は一斉に襲いかかった。



「男爵さんの“心臓”って便利よね。身体を治してくれるんだからさ」

 マークルフの傷を見ていたリファが不思議そうに言った。

「そうだな……早く身体がまともに動けばいいんだが――」

 日は過ぎ、その間に傷は目に見える形で癒えている。ただし、傷口の再生が早いだけで身体機能の回復は遅れていた。

 会話はできるがやはりしんどく、身体も思うようにできない。

 再生が先で機能の回復が後回しになっているのだろう。想像以上に状態が酷いのだろう。

 不意に扉が乱暴に開かれる音がした。

「マリアさんたち! すぐに逃げる準備をするんだ!」

 よほど急いでいたのか、息を切らせながら村人の男が駆け込んで来た。

「どういうことだい!?」

 食事の用意をしていたマリアが慌てて台所から飛び出てくる。

「神馬が現れたんだ! 周囲に鳴いて知らせ回っている! おそらく、ここに何か来るんだ!」

「神馬!? 仮面の女剣士が現れたのか!?」

 マリアの手伝いをしていたルフィンも姿を現す。

「そうらしい。あの馬の動きは危険が近いのを知らせ回っている合図だ。ここにいたら不味いかも知れない。早く逃げた方がいい」

「リーデ様がまだ戻られてない時に――」

 マリアは一瞬、悩んだ様子を見せたがすぐに双子たちに言った。

「とにかく、ここを離れるよ! あんたたち、男爵様を運ぶ準備をしておくれ」

「分かった!」

 ルフィンが急いで担架の用意を始める。

「ルフィン……ここにも仮面の女剣士が出るのか?」

 マークルフは尋ねる。

「男爵、知ってるのか?」

「お前たちの言う奴と同じかは知らんが、部下が何度か遭遇している……凄腕の女剣士と聞いた」

 リファもルフィンの手伝いに出てくる。

「そうだよ、男爵さん。すごく強くて政府の兵士たちと何度か戦っているの。最近、姿を見せなかったけど戻って来てくれたんだよ」

「……神馬というのは、この地の伝説に出てくる神女の従馬のことか?」

「本当の神馬かは知らないけどさ。すっごく足が速いらしいよ。みんな、神馬って呼んでるんだよ」

「なるほど……な。“最後の騎士”のお株を奪うようだな」

「男爵様は“最後の騎士”のこともご存じなのですか?」

 荷物の用意をしているマリアが言った。

「王の無謀な采配で全滅した〈白き楯の騎士団〉の中で唯一生き残り……神殿に殴り込んで王に傷を負わせた奴のことだろ」

「本当に詳しいんだな、この国のこと――」

 双子たちが床に担架を置く。

「あの時、ぶった斬ってくれたら良かったのにね」

 リファが残念そうに言った。

「愚痴ってもしょうがないだろ。あの時は、王がいないと国自体が形も保たなかったらしいからな。きっとその騎士だって、本当は仲間の仇を討ちたかっただろうさ」

 ルフィンが無念そうに言う。

 国を出て年月も過ぎたが、ログのことを理解する者はいてくれたようだ。

「その騎士は姿を消したけど、何年も経ってからあの仮面の剣士が現れるようになったんだ。最近じゃ、あの仮面の女剣士は神女の生まれ変わりじゃないかって噂にもなってる」

 ルフィンとリファの二人でマークルフを支え、担架の上に寝かせる。

「神女の生まれ変わりか……“最後の騎士”もきっと驚いているだろうな」

「男爵さんはそう思うの? 噂だと“最後の騎士”が神女の生まれ変わりを捜し出したとか言ってるよ」

「……噂なんてあてにならんさ。それに本当にそうなら……“最後の騎士”も戻って来てるはずだって思うがな」

「みんなが希望にしてるのに厳しいね」

「噂は流すもんだ。聞くもんじゃないね」

 マークルフはリファに向けて苦笑する。

「マリアさんたち、準備はできたかい? 後片づけはこっちでする。早く男爵様と一緒にここを離れろ」

 村人の男が急かすように言った。

「……あんたは大丈夫なのか?」

 マークルフが心配して尋ねるが、村人はうなずく。

「なあに、なるようになりますよ」

「村人のあんたがなぜ、ここまで危険な橋を渡るんだ?」

 マークルフはいままで疑問に思っていた。

 兵士たちから身を隠す事情持ちをなぜ、この村の人間たちは一丸になって匿っているのかと――

「実を言うとこの近辺は昔、マリアさんのご亭主だった騎士様の直轄地でしてね。あの方には村の危機を救ってもらったことがあるんですよ」

 男は男爵に倣うようにニヤリと笑う。

「明日がどうなるか分からないご時世ですからね。せめて、あの方を見殺しにした国王連中の思い通りになんて、そうそうさせたくないだけですよ」

 男は寂しそうにそう言うと外の様子を確かめ、警戒しながら裏口の扉を開ける。

「マリアさん、あんたたちがどこに逃げるかはあえて聞かない。ただ、気をつけて行ってくれ」

「すまないね。亭主とリーデ様に代わって礼を言うよ。あんたたちも無事でいておくれ」

 マリアも男の両手を握って頭を下げる。

 そしてルフィンとマリア、リファでそれぞれ担架の端を持ち、マークルフを運びながら村を脱出していく。

 マークルフは何もできない自分に苛立ちと嘆きを覚えていた。

(何が起こっているのか分からんが、でかい何かが動いているのは間違いなさそうだ――もう猶予はないのかもしれんな)



 マークルフたちは村から離れた丘の麓に避難した。

 そこには木々に隠された小さな岩穴があり、彼らはそこに身を隠す。

「どう? 兄ちゃん?」

 岩穴の奥に寝かされたマークルフの横で、リファが尋ねる。

 ルフィンは外に出て眼下の光景を睨んでいた。そこから村の様子を一望できるようだ。

「――やはりどこかの部隊が来たみたいだ。村人たちを集めて家捜しをしてる」

「村の人たちは大丈夫なの?」

「殺されたりはしてないようだけど――あいつら徹底的に捜してる。何人かは外に出たようだ。ここまで来るかもしれない」

 ルフィンも焦りを隠せないように言った。

「どうしよう……」

 リファも困ったように言った。

 マークルフはその表情を横から見ていた。

 土地勘は彼らの方がある。このまま逃げるのは難しいのだろう。少なくとも動けない自分は足手まといでしかない。

「……頼みがある」

 マークルフは言った。

「なに?」

 リファが尋ねる。ルフィンもその横に立った。

「二つ、持って行って欲しいものがあるんだ」

「これ?」

 リファが布に包まれた《アルゴ=アバス》の肩当てを持ち上げた。

「そう……一つはそれだ」

「もう一つは何だ?」

 マークルフは尋ねる少年の顔を見た。

「……俺の左胸に埋め込んである“心臓”だ」

 ルフィンが呆気にとられるが、すぐに驚愕の表情を浮かべる。

「え、どういうことなの、兄ちゃん? “心臓”取っちゃって大丈夫なの?」

 まだ事情が飲み込めないリファが尋ねるが、ルフィンは大声で答える。

「そんなわけないだろ! “心臓”を取ったら死ぬしかないんだぞ!」

「ええェええッ!? な、なんで、男爵さん!?」

 ようやく言っている意味を理解したリファが、これでもかと大慌てで叫ぶ。

「身動きできない俺と一緒だと……おまえたちまで捕まる。捕まるわけにはいかないんだろ? どんな奴らで目的も分からんが、まず味方ではなさそうだ。そいつらに……この“心臓”を渡すわけにはいかねえ……俺の代わりにそれだけは持って行ってくれ」

 双子たちが戸惑いながら顔を見合わす。

「だ、大丈夫だよ! 治ったら男爵さんに力になってもらう約束だもん! それまではあたしたちが頑張るからさ! ねえ、兄ちゃん!」

「ああ。それに男爵には“機竜”と戦う役目があるんだろ! 捨てていく訳にはいかないよ!」

 マークルフはかろうじて動く首で頭を振った。

「先日、“機竜”の姿を見たときに確信した……このままでは“機竜”が墜ちるまでに回復が……間に合いそうにない」

「諦めるのは早いだろ! 怪我だってもう治り始めてるんだぜ!」

 ルフィンが叫ぶ。冷静になろうとしているようだが、その声は動揺に震えていた。

「身体は動かせるようになるかもしれん……だが、左腕の怪我が予想以上に深刻らしくてな……万全ではない身体と片腕だけで戦うはめになる」

「でも、それで負けるとは限らないでしょう!? ダメだよ。せっかく助かったのに、自分でムダにしたら!」

 リファがルフィンを押し退けるようにして詰め寄る。

「“機竜”の強さは……戦った俺が一番分かっている。ただでさえ、勝つための切り札をなくしていてな……向こうの損傷を考えたとしても……せめて、まともに戦えなくては勝てん。それに命を捨てる覚悟は……奴と戦う前にできている」

「でも!? 他に何か方法が――」

「……なさそうでな。それに“竜墜ち”の要因は破壊できなかった俺にある。次の戦いは絶対、負けは許されねえんだ……だから、頼む」

 諭されるように言われ、双子たちは押し黙ってしまった。マークルフの決意を彼らなりに受け止めようとしているのだろう。

「……男爵様、それでいいのですか?」

 後ろでやりとりを見守っていたマリアが口を開く。騎士の妻だっただけに、彼の覚悟を双子たちよりは理解して受け止めてくれているようだ。

「ああ、すまない……せっかく旦那の形見まで手放してしまったのにな」

 マリアが後ろから双子たちを抱きしめる。

「いいえ。この子たちに戦う者の覚悟を見せてあげられたんです……十分過ぎですよ」

 マリアも無念に声を詰まらせつつも答える。

 マークルフはルフィンに決意を促すようにその目を見据えた。

「本当ならこの身体を燃やして取り出すのが早いが……火葬の暇もない。直接、“心臓”を取り出す方法を教える。おまえがやるんだ」

 ルフィンがマリアの腕の中から離れる。

 マークルフはうなずいて岩穴の天井を仰ぎ見た。

「いいか……“心臓”は球形の装置だ。俺の肉体と融合していて周囲の組織も硬化している。そのままではまともに取り出せん……まずはその腰に下げた短剣で俺の喉を突け。そして手首を切れ」

「俺が……」

 ルフィンの腰には護身用の短剣が下げられている。だが、その短剣は持ち主の動揺を示すように小刻みに震えた。

「だ、男爵様!? この子にそんなことを――」

 思わずマリアが言うが、マークルフは決意を促すように視線を鋭くする。

「酷なのは承知だ。だが、この身体では自分でとどめも刺せなくてな……それに、これは試金石だ。今後、おまえが……この国のために戦っていけるかどうかのな」

「男爵、もしかして俺たちのこと――」

「いや、ただのはったりさ」

 マークルフは不敵に笑った。

「言ったろ……この国に詳しい奴が仲間にいるって。だから、もしかしたらと予想していたが、いまの態度で確信した。ルフィン……おまえも妹と同じように考えが顔に出やすいな。人の上に立つ気なら……それは直しておけよ」

 ルフィンは黙っていたが、やがて覚悟を決めたように短剣を抜いた。

「そうだ、それでいい……いいか? できるだけ急いで俺の身体から血を抜き出せ……限界以上の失血をすれば“心臓”もすぐに生体維持を諦めて機能を停止する……そうすれば周囲の組織も弛緩して、“心臓”が取り出せるはずだ……取り出したら、一度火の中に投じて付着した不純物を焼いて取り除け。それで次の移植もやり易くなる」

「そんな……他人事みたいに言わないでよ! そんなの兄ちゃんにできるわけないよ!」

 リファが涙目で言うが、マークルフはルフィンに向かって笑みを浮かべた。

「よく知ってるだろ? 俺も昔、理由があって祖父様の遺体から“心臓”を取り出したんだ」

「英雄ルーヴェン=ユールヴィングの――」

「そうだ。俺に全てを教えてくれた……最も尊敬していた人だ。俺はその人の亡骸も利用して、その“心臓”を手に入れた……きっとこれは因果応報というやつだろう。おまえには付き合わせて済まないと思っているが、気にすることはねえ……取り出した“心臓”はログという俺の副官に渡してくれ。いま、急いでここに向かっているはずだ……奴なら俺の代わりにおまえたちの力になってくれる」

 ルフィンは顔を伏せて黙って聞いていた。短剣を握る手は明らかに震えていたが、やがてそれを握る手に力が入る。

「リファ、マリアおばさん……先に逃げてくれ。リーデ様と前にいた所だ。分かるよな、リファ?」

 ルフィンが顔を伏せて葛藤を隠すようにしながら言った。

「兄ちゃん、やだよ! 男爵さんには大事な人がいるんだよ! そんなことしたら、あたしたち、その人に何て謝ればいいんだよ!」

「うるさいッ!! これはそんな問題じゃないんだ!!」

「大問題だよ! 男爵さんだってその人に会いたくないの!?」

「……あいつも覚悟はできてるさ。それに俺が生きていることは伝わってないはずだ……見つけた時にはもう死んでいたと伝えてくれ。“心臓”は、火葬をしたら燃えずに残っていたとごまかせ……後はログが辻褄をあわせてくれるさ」

「できないよ、そんな大嘘!」

「リファ……兄ちゃんの力になりたいなら、それぐらいはできるようにしておけ。覚悟が必要な人間を支えてくれるのは……同じように覚悟を決めて傍にいてくれる人だ」

 リファも黙ってその場にうなだれてしまったが、やがて涙に濡れた顔を上げた。

「……だったら、あたしもここにいるよ。ここで……見てる」

 マークルフはゆっくりと目を閉じた。

「柄にもないこと言ってしまったな……時間が惜しい。やってくれ」

 ルフィンは両手で短剣を逆手に握った。その狙いは喉だ。

「……大事な人の名前は? その人に伝えておきたいことはないのか?」

 ルフィンは声を震わせながらも尋ねる。

「落ち着け……とっくに死んでいた奴が遺言を言ったらおかしいだろ?」

「何も伝えずに――死ぬつもりなのか?」

「そういうのも“機竜”と戦う前に済んでいる。心配するな」

 ルフィンは短剣を構えるが、その切っ先は迷いに大きく震えた。

「……男爵――」

「怖じ気づくんじゃねえ!」

 マークルフは一喝した。

「“機竜”との戦いに間に合わなかったら、どれだけの犠牲者が出るか分からねえんだ! ルフィン! お前がためらう分だけ、その災厄は現実に近づく! 自分がいま、どれだけの人の命運を担っているか、それだけを考えろ! やれッ、ルフィン!!」

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