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槍の行方

 マリエルに銃口を向けられても、その男は表情を変えることなく、立っている。

 かつて“竜”が墜ちた街ラクルの学院で共に科学を学び、別の道を言った者たちが、来るべき“竜墜ち”の前に再び相まみえようとしていた。


 前日──


「……ふう、疲れましたね」

「いや~、あの中から探し出すなんて、無茶だぜ」

 巨漢だが気弱さのにじみ出た男。小太りで胡散臭さを醸す小柄の男。共に上着を脱いだ二人は木陰で地面に腰を下ろしていた。

「いまは男爵を捜し出す方が先じゃないですかね、ウンロクさん」

「そうだよなぁ。槍を見つめたとしても、持ち主がいないんじゃ意味がないわな。早く姐さんたちと合流した方が──」

「つべこべ言わずに探せ!」

 二人の後頭部を蹴りが炸裂する。

 一蹴りで高低差のある二人の頭を蹴る正確さだ。相手に気づいた二人は慌てて立ち上がり、直列不動で並ぶ。

「しょ、所長代理!?」

「も、もうお戻りだったんで!?」

 二人の前に立つのは怒りの視線で二人を見つめるマリエルだった。

「案の定、さぼってたわね。愚痴を言いたいのは分かるけど、男爵はリーナ姫と姉さんがきっと見つけてくれるわ。だから、うちらはあの槍を見つけ出すのよ」

 マリエルは別行動をしていた部下の二人とも合流し、先を進んでいたのだが、その途中である情報を手に入れた。

 それは危険動物討伐のために山間を歩いていた猟師たちがある日、空から落ちてきた槍を目撃したというものだった。

 登山路を進んでいた彼らの前でその槍は何もない空から落ちてきたという。槍は山肌に跳ね返って遥か眼下の川が流れる森へと消えていったというのだ。

 槍は黄金の斧槍だったという。

 突拍子もない話であったが、噂としてそれは近辺に広がっていた。探しに行った者もいるらしいが、まだ見つかってはいない。

 その近くの村で足を休めていたマリエルはその噂を聞き、それが“機竜”との戦いで落ちてきた《戦乙女の槍》だと確信した。

「あの槍がなければ〈アトロポス・システム〉が使えない。男爵が生きていたとしても、“機竜”が墜ちてくるまでに万全な状態に戻せるか難しいでしょうし、せめてあの切り札が使えるかどうかが次の戦いの勝敗を大きく左右するわ」

「……分かっていますけど、この樹海の中からしらみつぶしに槍を捜すのは非効率的過ぎますよ~~」

「いや~~、こっちは頭脳労働専門なんですし、もっと上手い方法を考えてからでも──」

 部下たちは恐る恐る反論を試みる。

 普段なら怠けるなと一蹴するところだが、今回ばかりはそうも言い切れない。

 槍が落ちたという森は湿地になっていた。探索もやりにくく、最悪の場合、槍が沼に沈んでいる可能性もある。

 《戦乙女の槍》は不変の存在である。槍自体は特別な力を放たず、他の力の影響を受けることもない。それゆえに普通の武器では莫大な“力“の付与に耐えられない〈アトロポス・チャージ〉を使用できるのだが、何の反応もしない以上、その位置を特定する手段がないのだ。

「確かにね。だから、いま親分さんの部隊に連絡を試みてるわ。置いてきたグノムスと妖精さんたちにここに来てもらうの。地中を移動する彼らの透視能力なら、槍が沼に沈んでいたとしても探し出せるかもしれない」

「おお、確かに頼もしい助っ人がいるじゃないですか!」

「それならグーの字たちが来るまで待ってもいいんじゃないですかい? この先も長いんですし体力は温存しておかないと──」

「ただし! 槍は沼に沈んでなくてどこかに転がっているかもしれない。それに姫様や姉さんたちもグノムスの力が必要としているかもしれない。だから、その前にできるだけ捜索はしておくのよ」

 部下たちの顔があからさまにゲンナリとするが、マリエルの有無を言わせぬ無言の視線に二人はもう反論を諦めていた。



 その日の夜──

 マリエルは拠点とする村の宿にいた。酒場でもある広間の片隅で一人、テーブルの上に地図を広げてると、傭兵ギルドの情報網で集まった“機竜”の新たな目撃例を紙に記入し、飛行経路を図にしていく。

 “機竜”の移動を予測できれば、それだけ時間を効率的に使うことができるのだ。

 “機竜”は円を描くように広がって移動しているが、その軌道は予想よりも大きく歪んでいる。やはり、何かの影響を受けているのだ。そして、それはブランダルクに近づくにつれて顕著に表れている。

(いったい何が──)

 問題の山積みに、さすがのマリエルも頬杖をついてうつむく。

「──懐かしいな。学院時代を思い出すよ」

 どこからか伸びた手が紙を掴み取り、一人の男がそれを見つめながら言った。

 慌てて顔を上げたマリエルはその男が誰かに気づくと、さらに驚きに目を見開く。

「貴方は……オレフさん!?」

「久しぶりだな、マリエル君」

 オレフは紙を見つめながら懐かしそうに言う。

「“竜墜ち”についての授業を思い出すよ。だが、これを見る限り前回とは軌道が違っているな。何かの影響を受けているようだが、前回と同じという前提も場合によっては見直さなくてはならないかもな」

 一目で読み取ったオレフは紙をマリエルの前に戻した。

「オレフさん、何故ここに──」

「“竜墜ち”が再び起ころうとしている。それをどうしても自分の目で確かめたくてな」

 オレフはマリエルの前の空席に腰掛けた。

「君こそ何故、ここに居る? エルマに代わってユールヴィング男爵の下で働いていると聞いていたが?」

 マリエルは言葉を濁す。

「……そうだな、止めておこう。俺もフィルディング一族の庇護下にいる身だ。うかつにお互いの内情は言うべきではないな」

 オレフは故郷であるラクルの学院時代の先輩であり、姉のエルマと共に学友の間柄だ。

 特に姉エルマとは同期であり、二人は学院でも抜きんでた才能の持ち主として知られていた。その評価はいまでも変わっていないだろう。

 マリエルは二人の後輩として学んでいたが、その二人に届いたとはまったく思っていない。

「エルマは相変わらずか?」

「はい」

「そうか。それであいつの方は“機神”を破壊する方法を見つけたのか?」

 オレフが訊ねた。

「……おそらく、まだかと──」

「君にしては曖昧な言い方だな」

「姉さんの考えはうちには分かりませんから──」

 学院には、いや古代文明の研究者には未だに答えがでない議題がある。

 “機神”──古代エンシアの遺した魔導技術の集大成たる《アルター=ロフ》を完全に破壊する方法だ。

 《アルター=ロフ》は極限まで高めた魔導機関が暴走し、“闇”の特異点と化した存在だ。それは生み出した古代エンシアでも破壊することができず、逆にエンシア自体が滅ぼされた。

 現在も災いとして“聖域”の中心に君臨する“機神”の破壊方法は、魔導技術を研究する学院でも多くの討論が繰り返されてきた。

 エルマとオレフもその一人であり、誰よりもこの件については熱心だった。いつも二人で議論してきたのをマリエルは見ている。

 後にエルマは大公バルネスに認められ、古代鎧の管理と“機神”の破壊を目的とする研究所へ招聘された。

 一方のオレフはフィルディング一族の研究機関へ招かれていった。

 対立する陣営に分かれたため、それからのことは互いに噂でしか聞いていない。

「オレフさんの方は何か分かったのですか?」

「いや、俺の方もまださ」

 オレフは苦笑すると、近くにいた給仕の娘に二人分の酒とつまみを注文する。

「俺がおごろう。明日にはまた出て行かねばならん。今日ぐらいは昔話をしながら食事でもしようじゃないか。安心しろ。明日に支障が出るほど飲めとは言わない」

「珍しいですね。オレフさんから誘ってくれるなんて」

「久しぶりだからな」

 オレフはその才覚と気難しい性格で近寄りがたい印象があった。彼と平気で話ができたのは(話がかみ合っていたかは別として)姉のエルマぐらいだろう。そんな彼も懐かしい話がしたいのだろうか。

 マリエルも科学者としての彼のことは高く評価していたし、断る理由はなかった。



「大変ですぜ、所長代理!? 起きてくだせえ!」

 マリエルが泊まる部屋の扉がけたたましく鳴り響く。

 マリエルはぼんやりとした頭でそれに気づく。どうやら、昨夜に飲んだ酒がまだ残っているらしい。たいした量ではないはずだが、疲れで酔いが回りやすくなっていたのか。

 マリエルは上着を羽織ると、扉を開けた。

「所長代理!? やっと起きてくれましたか!?」

「大変なことになってますぜ!」

 やはり立っていたのはアードとウンロクの二人だ。

「……何があったの?」

「悠長なこと言ってる場合じゃないですぜ!」

「あの地響きに気づかなかったんですか? とにかく、外を見てください!」

 アードに手を引っ張られ、マリエルは窓から外を眺める。

 その光景を目にした途端、マリエルの酔いは一変に吹き飛んでいた。

 この宿から湿地の森を見ることができるのだが、森を囲う丘の一つが姿を消していたのだ。目視する限り、自然な崩れ方ではない。

「どういうことなの?」

「さっき、凄まじい地響きがして、見たらこうなってたんですよ」

「それで気になることが──」

「何なの?」

「先ほど、この上空を“機竜”が飛んでいたんです。僕たちは確認できなかったんですが、そこから丘の方に光弾が落ちてきたっていう目撃談があるんです」

「どういうことなの……?」

 墜ちてくる“機竜”が魔力を無駄に消費してまで丘を攻撃する理由が分からない。しかし、丘を吹き飛ばす破壊力は“機竜”以外に持ち得ないのも確かだ。

「所長代理が起きてこないので待っていたんですけど、下手したら僕たちも巻き込まれていたかもしれませんね」

 アードが肩をすくめるように言った。

 確かに槍の捜索に向かっていたら、巻き込まれた可能性は否定できない。

 一度に飛び込んでくる信じがたい情報にマリエルの頭も混乱しそうになるが、すぐに自分の頬を叩いて気合いを入れた。

「準備して」

「行くんですかい!?」

「“機竜”が丘を攻撃した理由を確かめないと。それに巻き込まれた人がいるかもしれないわ」



 マリエルは部下と護衛の傭兵たちを引き連れ、湿地を通って丘があった方へ向かった。

 やがて辿り着いたが、やはり丘の輪郭は完全に崩れ、土砂と岩だらけの一帯となっていた。

 そこでは現地の人々が作業をしていた。どうやら誰かの捜索らしい。

「おい! そこの姉さんたち! あんたらも来たのか!」

 一人の男がこちらに駆け寄ってくる。森の案内を一度、お願いした現地の住人だ。

「お邪魔してすみません! 巻き込まれた人がいるなら手を貸します」

 マリエルが前に立つ。

「助かる! 仲間が巻き込まれたらしくてな。他に何人かいるかもしれないんだ」

「それにしても、ここで何かあったのですか!?」

 マリエルは訊ねた。ここにいたのなら、“機竜”が攻撃する理由となった何かを知っているかもしれないと思ったからだ。

「いや、特にここには何もなかった。なんでこうなったか、まったく分からんよ」

 男の顔には疲労が浮き出ていた。

「しかし、あの森を通るのは大丈夫だったか? 地面も大きく揺れたからな。どこがぬかるんでるか分からんからな」

「それは大丈夫でした。でも気をつけます」

「まあ、数がいるなら大丈夫だろう。だが、あんた、他に仲間の学者がいるんじゃないかい?」

 マリエルはすぐに、それがオレフだと気づいた。宿を出る前に一度、彼を探したがすでに出かけた後だった。

「彼がどうかしたのですか?」

「いや、仲間が応援に来てくれた時に、森を一人でうろつく学者風の男を見たそうなんだ。一人で歩くのは危ないっていったんだが、話を聞かずに言ってしまったらしい。仲間なら連れ戻したほうがいいぜ。一人で沼にはまったら終わりだ」

「そんな命知らず、誰か知り合いにいましたっけ?」

「いるわけねえだろ。どうせ、どこかの素人学者だろ」

 部下の二人が顔を見合わせる。

「……オレフさんよ」

 マリエルが言うと二人は心底、驚く表情を見せた。

「オレフさんって、あの姐さんの同期の!?」

「あいつが何でここに来てるんですかい!?」

 マリエルは答えることなく、しばらく考えていたが、やがて男に向かって言った。

「すみません。やはり彼が気になるので、うちらは戻ります。他の傭兵さんたちは置いてくので使ってください。本当はうちらも手伝えればいいんですが──」

「いや、それだけでもありがたい……正直なところ、助かっている見込みはなさそうなんでな」

 男も肩を落とす。

 マリエルは部下と護衛の何人かを連れて戻り始めた。

「所長代理、本当にオレフの野郎を探しにいくんですかい?」

 ウンロクが露骨に面倒くさそうに言った。

「あいつはフィルディング一族についた奴ですぜ。一人で行ったそいつをこちらが探しに行く理由なんてありゃしませんぜ」

「……確かに、もうどこかの沼に沈んでいる可能性もあるかも──」

 アードも言うが、マリエルは足を止めた。

「貴方たち、あの人がそんな馬鹿な真似をする人だと本当に思う?」

「いや〜〜、でも目撃した人がいるんですぜ」

 ウンロクは答えるが、彼自身も半信半疑のようだ。学院時代からエルマの子分だった二人も、オレフの実力だけは認めていたからだ。

「だからこそ、気になるのよ。どうしても確かめなければならないことがあるの」

 マリエルは気がはやるのを抑えられないように、早足で歩きだした。

「おそらく村に一度、戻って来るはず。手分けして捜して。見つけたら引き止めて。でも、もし危険があったらすぐに逃げるのよ」

 マリエルのただならぬ表情に、アードとウンロクもさすがにただならぬ状況を察したようだ。

「何があったんですか?」

「うちの予想が当たっていたら、おそらく──」



「どこで気がついた?」

 オレフが言った。

 村から外れた森の入り口。手分けして彼を捜していたマリエルは、長い得物を手に騒ぎの中ひっそりと村を出ていく彼の姿を見つけた。その手にあるのが槍と確信したマリエルは追いかけると、躊躇うことなく護身用の銃を向けたのだった。

「あの丘の崩壊です」

 マリエルは銃を突きつけたまま答えた。

「なぜ、あの丘が破壊されたのか──ずっと考えていました。そして思い当たったのが、あの地形の変化です。あの丘が破壊されれば、そこは“聖域”を模した地形に近づきます。“大地”の霊力も森に集中するように流れが変わってきているはずです。人の感覚では分からなくとも、計器で測定すればいまも強い反応が出ているでしょう」

 オレフは何も反論せず、先を促すように黙って耳を傾けている。

「その槍自身は何かに反応することはありません。ですが、観測できないものも周囲の環境が激変すれば、その変化を計算することで観測できるようになる。貴方に以前、教わったことです」

「俺の言葉ではない。科学を学ぶ者なら覚えておくべきことだ。君はそれを忘れなかっただけだ」

「……霊力が一気に流れ込むことで、どこかにある槍の場所を起点に流れに乱れが生じる。水流に石を置くことで水の流れが変わるように──各地点の気の流れを計測し、計算し、乱れの起点である槍のある地点を導きだすこともできるようになる」

「俺がそれをしたと?」

「精密な計測器と、結果を正確に読み取れる人物がいれば不可能ではありません。貴方が森にいたのは計測以外に理由はつきません。そして、複雑で微細な気脈の流れをそこまで読むことができる科学者は何人もいないでしょう。うちが知るなかではエルマ姉さんか──貴方しかいません」

 オレフは観念したように自嘲する。

「その通りだ。君にこうも早く気づかれることは読めなかったがな。君を巻き込まないように細工をしたつもりだったが、らしくないことはするものではないな」

 やはり酒に何かを仕込み、マリエルは遠ざけようとしたのだ。

「そのお気遣いは感謝しません。それより、なぜこんなことを──」

「……この槍を渡すわけにはいかなくてな。君たちには地中を潜行できる鉄機兵がいる。それを呼ばれる前に先手を打たせてもらった」

「あの丘の破壊も貴方の差し金なのですか! ぜひとも答えていただきます! 犠牲者も出ているんです!」

「それは答えられない。だが、いずれ分かるだろう。それまでは手出しはしないでもらいたい」

「できる訳がありません……槍をゆっくり地面に置いてください」

 何を考えているかは分からない。だが、慎重にならなければ隙を突いてくるだろう相手だ。

 マリエルは冷静に努め続けた。

 オレフは黙っていたが、やがて手にしていた槍を静かに地面に置く。

「下がってください」

 オレフがその場から下がるのを待ち、マリエルは槍へと近づく。

 そして槍を回収しようとした時、金属の破片が一緒に置いてあるのを見つけた。

 マリエルがそれが何かに気づくのと同時に、破片が膨らみ瞬く間に骸骨の姿となる。

 マリエルが咄嗟に銃を放つが、〈竜牙兵〉はそれで動きを止めず、マリエルに掴みかかった。

 地面に押し倒されたマリエルは身動きがとれず、もがくしかできなかった。

 だが、〈竜牙兵〉もそれ以上は何かをするつもりはないようだ。

「そこまでだ」

 オレフが傍に近づくと、マリエルが落とした銃を手にして彼女へと向ける。

 同時に〈竜牙兵〉は破片へと戻り、彼女の胸元へと落ちた。

「……貴方はいったい……本当に何を──」

 オレフが〈竜牙兵〉の破片を置いたのは間違いない。そして〈竜牙兵〉の動きを彼は完全に制御しているように見えた。

 破片を持っていたとしても魔力がなけらば再生はできず、そして、制御することも普通の手段ではできない。

 そして、彼のために“機竜”は丘を破壊している。

 マリエルは科学者として、オレフにとてつもない危険な何かを感じていた。

「科学者の使命は何だ?」

 唐突にオレフが問う。

「……それは文明に寄与すること。文明の中に生きる全ての人の為に尽くすこと──」

 マリエルは学院で最初に教えられる訓戒を言った。銃を向けられてもそう答えたのは彼女の科学者としての矜持があったからだ。

 オレフはそれを聞くと、ゆっくりと銃を下ろす。

「ならば来るといい。君が本当にそれを胸に刻んでいるというのならな」

「……貴方を手伝えと言うのですか」

 マリエルは逃げる隙を探りつつ、答える。

「いや、必要ない。だが、どのような試みも後に検証する者が必要だ。いまは教えられないが、いずれ分かるのは本当だ。その時に君自身の目で検証するがいい」

「──うちが戻らなければ、仲間が姉さんたちに伝えることになってるわ」

「構わない。エルマも──いや、彼女こそ使命を果たさねばならない。我ら科学者には全ての人々の未来のため、やらなければならないことがあるのだ」

 オレフが自らに言いきかせるように告げた。

 奇しくも、その手に破ることのない誓いの証《戦乙女の槍》を握りしめながら──

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