ペンシル
ああ……、駄目だ。このままでは堕ちてしまう。落ちてしまえば、もう戻っては来られまい。
ぐっと唇をかみしめて、なんとかその衝動に打ち勝とうとする。その試みの第一歩として、手の中に握りしめていたシャープペンシルを解放した。
軽い音を立てて机に打ち付けられた芯が、折れて飛んだ。宙を舞う芯の欠片を目で追いながら、呼吸を再開する。いつの間にか、息をすることさえやめていたらしい。
時たま、負けそうになる。自分の中の燃え上がるような衝動に。手のひらでもいい、眼球でも構わない。ペンを、ハサミを、突き立てたくなる。
とにかく、見たくて見たくてたまらなくなるのだ。――その時、あの人たちがどんな反応をするのかを。
悲鳴を上げるだろうか。それとも逃げ出すか? 「やめろ」なんて無様な声を上げて、私の手を掴むかもしれない。あるいは……いつも通り笑うだろうか。
気が触れたように己の手に、瞳にペンを突き立てるのだ。これ以上に滑稽なこともない。
私はきっと笑うだろう。
それでも、これこそが私の思う最善なのだ。




